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お披露目

 

 帝国。王城の大広間にて、異界から来た『勇者』のお披露目会が行われていた。


「この国の救いとなり、必ずしも魔神族を滅ぼす事を。我ら『勇者』()()()名は誓います」


 その言葉を皮切りに、パーティは始まった。


 煌びやかな装飾や、豪華な食事。各国の重鎮達が集まるこの場所。食事を楽しむクラスメイトもいれば、国の代表として、王様と共に行動する人もいる。


 中には、このパーティに似つかない程暗い表情をした一部の者もいた。

 

「オイオイ、そんなしけた面すんなって。せっかくパーティ何だから、楽しもうぜ?」


 と、俯き続けるクラスメイトの一人に騎士団の人間が肩を組んで、話しかける。その顔は火照っており、酒を飲んでいて酔っていることが予想出来る。


「おい!やめろって!このお方達は魔物との戦闘で疲弊しているのだぞ。失礼だから」


 それを見かねた同じ騎士団の人間が、間に入り止める。


「いえ……別に問題、ありません」


 間に入った人に向かって、大丈夫だと言う。しかしその顔は依然青白く、今にも死にそうな表情であった。


 会場には、誰かの笑い声や、よくわからない音楽。それらが絶え間なく、耳に入って来る。

 面倒だと思ったその時、ガラスを蹴破る音が、会場に鳴り響いた。





 全員が上を見上げる。先程の笑い声も音楽も、全てが嘘のように一瞬で静かになる。




 会場にいる全ての人からの、視線を受けて現れたのは、年齢は『勇者』達とそう変わらない。赤い髪の少女を抱えて、頭の上に()()が生えている青年と共に、割れたガラスの上に降り立ってーー






 着地に失敗した。


 それはもう、盛大にこけた。


 途中までは良かったが、着地の時に踏んづけたガラスで足を滑らせ、抱えていた少女が宙を舞った。







「ーー痛ったあ!?」


「あ、わり」


 猫耳の青年の方は、なんとか受け身をとれたが、赤髪の少女は顔面から地面に落ちた。


「ちょっと!何失敗してんのよ!?」


「ごめんて」


「アンタが、『カッコよく着地してやるから、任せとけって』って言ったからやったのに、なんで私が顔面から着地しないといけないのよ!!」


「はい……本当にすいません」










 ーー私たちは何を見せられてるのだろう。


 その場で一部始終を見ていた人達が、冷静になって思ったことである。

 どこからともなく、文字通り雰囲気をぶち壊して、堂々と侵入してきた二人組。


 人族は基本、皆んな黒髪であるため赤髪というだけで珍しいが、その場での一番の注目を集めたのは……



「ーー亜人族、だと?」


 猫耳の青年の方であった。


 するとその時、もめていた二人組が喧嘩をやめ、この場にいる貴族、勇者一行に目を向ける。


 すると、赤髪少女が自身の懐から、何かを引っ張り出した。



「えー、コホン。『特に親愛でも何でもないし、何なら初めましての方が多い気がするし、しないかもある皆様。

 この度は、パーティーを元々台無しににするつもりとは言え、いざやると罪悪感が結構あったから今こんなふうに、手紙を書いてます。

 さて、ここまでくれば私が何者か見当もついていないと思うので、名乗りをあげましょう。

 私は、魔神領盟主直属、魔神七将の“七”の座をこの度は承らせていただきました。カロンと申します。

 この手紙は、半分罪悪感、もう半分は宣戦布告としての果たし状みたいな物だと、思ってもらって結構です。あ、あとこの手紙を読み上げている、俺の部下ですが今回は武器を保持していないので、暴れるつもりはございません。

 ーーそれでは』って何よこのバカが書いたような駄文は?」


「さぁ?あの人が慌てて書いたから、こんなふうになったんだろ?」


「シャキッとしないわね……」


「まぁ、しょうがねぇ」


 侵入者どうしで和んでるのを見て、ようやく状況を理解した面々が動き出す。


「動かないでください」


 二人の周囲には、十名程度のクラスメイト達が各自の武器を、二人に突き付けている。


「“魔神領”……その名前が出てきたという事は、あなた達二人ともそっちの関係者ってことなの?」


 赤髪少女の首に剣を置いて、二人に睨みをきかせるアイリ。しかし、彼女の表情には余裕がなかった。


(十対二の状況で、何でこの二人はこうも平然としてるの?)


「……おいデマテール?」

「デメテール、ね?いい加減覚えなさい。それで何?」


「お願いするわ」


 その時相手の服が弾け飛んだ。文字通り、彼女の周囲にいた人の服が、下着を除いて全て布切れ以下になった。


 男女関係なく、悲鳴を上げる少年少女達。大体が顔を赤くして、その場にうずくまったり、走って逃げたりしていた。


 場は完全に混乱していた。


「おー、やっぱやるなぁ……ところでデメさん?何で俺の服が大破してるんですかね?」


 彼の服も、残念ながら例外なく大破して、布切れ以下になっていた。


「ーー私の名前を、間違えた罰よ」


「はい、すいません」


 しかし服がなくなり、皆が混乱してる中、平静を保っている人間もわずかにいた。


 現に自身の首に先程と何ら変わらず、刃が触れていた。アイリと数名の生徒達は、衣服がなくなった程度では戦いは止まらない。

 今もその視線は、二人に集中している。


「ねぇレオ?」


「ん、何?トイレに行きたい?」

「ちげぇよバカたれ」


 女の子が男の足に蹴りを入れる。


「……何秒あればいいの?」


「あぁ、それね。んー【殺害許可】は出てないから、二十秒程度じゃね?」


 その時、会場の入り口から大量の衛兵がゾロゾロと追加で、二人を囲む。


「あ、ごめん。二十秒じゃたんねぇ」


 百以上の兵が列を組んで、勇者と代わるように陣をとる。矛先が二人に向いて、号令があればその場で戦いが起きる。そんな緊張感があった。


「はぁ……私がーー」

「いいよ、デメさんは下がっとけよ……俺が殺りてぇ」


 猫耳の青年が、威嚇のように構えをとる。

 獰猛な笑みを浮かべて、足を肩幅に開き左足を前に出す、左手を前に出して、右手は親指を上に向けて拳をつくる。


 何かのきっかけで爆破する……そんな雰囲気が、青年から発せさられる。


「先攻は俺でーー」

「待ってくれ」


 青年が動き出そうとした瞬間不自然に躓き、青年がこけかけ動きが止められる。


「へぇ……」


 隣の赤髪少女は、今のを見て関心するかのような声を漏らす。


「衛兵諸君、君たちも矛を収めてくれ。この二人は、思う所はあるが“魔神領”の正式な使者である。開戦前の攻撃は国際問題に発展するぞ?」


 その一言で場にいた兵達は、槍を下げてゾロゾロと帰って行く。


「何だよ……戦わねぇのかよ……」


「いいじゃない。無駄な労力が省けて」


「こちらの兵が、失礼をおかけしました。遅れて、私はフラベルと申します。後は僕が責任を持って送り届けたいと思います」


 二人に頭を下げて、先程の出来事の謝罪をする。白を基調とした軍服に身を包み、凛とした顔立ちである。


「一つ、良いかしら」


 少女が、フラベルに寄って珍しそうに眺める。


「貴方……魔術技師なの?それとも剣士?」


 それを聞かれたフラベルは、肩をすくめて苦笑いして、二人を案内しながら答える。


「あぁそれね。よく聞かれますよ、僕はこことは違う世界から来たんです。そこで僕は剣を極めてね、気づいたらここにいたんです。だから今度は、魔術の方をやろうかと。それでもまだ素人ですけどね」


 乾いた声で笑いながら、フラベルは自身の過去を打ち明ける。

 女の子の方は興味があるのか、聞き入っていたが青年の方は戦いを邪魔されたのが気に食わなかったのか、拗ねていた。


「ーー今日は突然の訪問をしてしまい、申し訳ありませんでした」


 レオの頭を掴んで、デメテールが頭を下げると同時に、頭を下げさせる。その様子を見てフラベルはまたも苦笑いを浮かべていた。



 その様子を見ている事しか出来なかった勇者一同は、怒りと恨みが込められた視線を向け続けていた。



















 そびえ立つのは真っ白な巨城。そのお膝元で、賑わいを見せているここは、“魔神領”『七将統括地』と呼ばれる、魔神七将に選ばれた者が統治を任される領土ーーカロン、否、ハルトが住んでいる城である。


 大きな城のくせに、使用人は片手で数える程度の人数しか、ハルトは雇っていない。


 その理由は、七将でもあるハルトとその部下含めて、全員で城を綺麗にしようとしているからである。


 彼が目を覚ました。


 起きてまず最初にするのは、呼吸の確認である。


 死を経験した事がある彼は、起きてすることが呼吸が出来るかどうか、それを確かめて使用人を呼びつける。


 プライバシーの関係上、着替える時は男性の執事をハルトは呼んで、布団の上で寝巻きから仕事服に着替える。

 この時、執事が凄く気味が悪い表情をして着替えをしてくれる。実に罪悪感が湧いてくる。


 その後、メイドに連れられて部下が朝食をとっている場所へ、二人で行く。


 人一人が通るたびに、床の木が不思議な音を出す。朝の冷たい空気が、程よい眠気覚ましになっているはずだ。

 ちなみに言うが、俺の顔には顔全体がすっぽりと覆えるほどの大きさの仮面とフードをつけてるため、風なんて感じやしない。それでも、この世界に来る前の自分だったら、あり得ないほど健康的なな生活である。


 良い意味でも、悪い意味でも娯楽が少ないから、夜更かしする理由というものが無いからだ。


 メイドが止まった。ゆっくりと、流石にわかる減速の仕様だったから、おそらく着いたのだろう目的地に。


「それでは……開けます」


 隣にいたメイドが開けてくれるようだ、本当に彼女たちには頭が上がらない。





「お願いだ妹よ!!お兄ちゃんのこの嫌いな野菜を食べてゴハッ!?」


「自分で食えや!バカ兄貴!!!」


「食べ物で遊ぶな!愚か者ども!!」


「耳だけでも、うるせぇ奴らですねぇ……」


「ちょっと〜ウチのお肉がもう無いやん、早すぎやろ……」


「よかったじゃない、前から『痩せたいわ〜』って言ってましたよね?」


「……」


「変に沈黙しないでよ、私が悪者に見えるじゃない」


「あ!ハルトさんだ!!遅いよ?ほら、レイさんもこっちで一緒に食べようよ〜」


「ーー遅い」








 ハルトは、立ちずくしていた。目の前の情報量にやられ、頭の中に帰りたいと思ってしまった。


「ーー行きますよ」


 静かに見守っていたメイド……レイと呼ばれたメイドが動き出す。

 ハルトもそれに身を委ねて、動いて行く。


「皆さん、おしゃべりが過ぎますよ?主人が目の前にいるのに、部下としての自覚を持ってください」


「食事ぐらい、静かに出来ませんの?あなた達、全員十八は越えてますよね?」


 グタグタと、レイによる説教が始まる。ほとんどの人が正座をして、話を真面目に聞いている。


「はぁ……私からは以上です。ハルト様」



「ーー()()のお時間です」













『ーー【魔技駆動式】演算開始』

 









『ん?あぁ、ありがとさん。レイ、いっつも動けない俺を運んでくれて悪いね』


「いえ、仕事ですから」


 座っていた車椅子から、ハルトが立ち上がる。異質な音声が聞こえた瞬間、ハルトの四肢は動き出す。


『レオ、デメテール、手紙は渡せた?』


「はい、あんなの初めてのお使いよりも、ハードルが低いもんですよ」


「おう!バッチリ渡せたぜ。ご褒美に、野菜を減らしてください……」


『それはムリ』


 デメテールがドヤ顔と、レオが机に沈んだ。


『あ、そうそう、残りの皆んなの『宝具』完成したよ』


「え!マジで!?」


 机に沈んだレオが、顔を食べ物まみれにして、起き上がる。


『お前は別、そして顔が汚ねぇぞ?食いもん粗末にすんな』


 それを聞いたレオは、顔についた食べ物を食って、床に撃沈しましたとさ、おしまい。


「ようやく、私のが出来たのね」


「ーー長い」


『ごめんごめん、後で渡すから。それで……他の奴らは?』


「えー、今ここにいるのは『獅子座』『射手座』『天秤座』『水瓶座』『蠍座』『山羊座』『乙女座』『蟹座』『牡牛座』ですね。残りは寝てるか、そこら辺を走ってるんじゃないですかね」


『ありがと、アラン』


「いやいや、そんな大層なことじゃないですよ」


『何人か、いないけど……ようやくだ。ようやくなんだ』


 ハルトが自分の席に座る、仮面で顔は見えないがそれでも、仮面越しでもわかる強い感情。


『それじゃあ、始めよう』


『ーー俺達の計画を』


 例えば。そう、例えばの話である。


 もしやり直せるとしたら?俺は何をやり直しただろう……


 いや、多分だけど。何回やり直そうとも、俺はこの結末が一番似合ってる。


 たくさんの人を、俺は殺した。人殺しの結末としては、綺麗な方だろう。


 だから、俺はやり直してもこの結末を選び続ける。









 ーーたとえ、最悪の結末(バッドエンド)だとしても。



『俺には、似合わねぇよ。ハッピーエンドっていうのが、嫌いなんでね』

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