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誓いを立てて

少し長いですが楽しんでください

朝か…まだ寝ていたい。

そんな風に思ったのはいつからだろう、ここに来る前はそんな事なかったのになぁ…









「ふわぁっ、もう朝か早いなあ」

ベットから元気よく飛び降り、綺麗に着地する。

俺の数少ない特技の一つである。


「おはよう」

階段を降りてドアを開けると、家族がもう朝ごはんを食べていた。


「遅いよお兄ちゃん、学校遅れるよ?」


「悪い悪い、夜遅くまで勉強してたんだ」

この子は俺の妹で、中学二年生だいまだに思春期が来てないから気楽である。


「あれ?お父さんとお母さんは?」

リビングを見渡しても、母と父の姿が見えない。


「あー、パパとママもうお仕事行ったよ、お兄ちゃんが起きてくる五分前くらいかな?」

俺の父と母は、共働きで父はサラリーマンで母はアルバイトである。


「それじゃお兄ちゃん行ってきます!」

玄関で大きく手を振るう妹を見つめて、


「おーう寄り道すんなよ」

素直に、『行ってらっしゃい』が言えなかった。

こういう所が俺の悪い癖なんだろうな…


「やっぱ気恥ずかしいと言うかな…」

妹が登校した二十分後ぐらいに、そそくさと用意して

何も言わずに出発した。





ガヤガヤと朝の学校でいうのは、うるさいものだ。


「おっはよ〜、ハルト!」

うるさい人間代表が来た。こいつの名前は愛莉と言う、俺の幼馴染だ。


「あ!今私の事うるさいやつ代表とか思わなかった?」

エスパーかよ、最近この子が怖いです。


「分かった、分かったどいてくれ、ちょっと男子の目線が俺を殺しにかかってるって!」

愛莉(こいつ)のせいで友達が少ないし、地味な嫌がらせもあった、当の本人は自覚無しって感じだけど!


「お前が俺にベタベタするから、クラスの人から敬遠されがちなんだよ、頼むから自重してくれ。」


「分かったわよ、じゃあ学校が終わったらかまってよ?」

「それが原因だって分かってるかなぁ!」


本当にこの子が最近怖い。



その時、部屋全体が輝き出した。


「ちょっと何これ!」

「何だこれ!」

「やばいって!」

「体が動かなねぇぞ!」


愛莉が俺の腕を掴んで離さない、少し震えてすらいる


部屋が光に包まれる瞬間、ある可能性が頭をよぎった。

「これって…」

異世界召喚なのでは?と…






「ようやく目覚めましたね、おはようございます!勇者様」


周りにはクラスメイトがいる、ただ周りの風景と人達で元の世界と全くの別であることに気付く。


「ここはどこですか?」

そう言うのはクラスの中心的存在、御影慎也だ


「私としたことが、失礼しました。」

目の前の女の子が丁寧にお辞儀をして


「私はリュナミリア帝国の『聖女』ノエルです!唐突ですが、あなた達は魔王を倒してもらわないといけません。」


その言葉でクラスメイトがブチギレてしまった。

「ふざけんなよ!いきなり呼んで戦えってか!しらねぇ国の為に!」

クラスの中で一番素行が荒い相楽一真に続いて、

「そうだそうだ!」

「おかしいだろ!」


などと口々に怒鳴った、だがそれを静めたのは。


「黙れ貴様ら!」

一瞬、部屋が揺れたと思った。

そう思うほど、凄まじい大声量でクラスの反感を静めてしまった。


「申し訳ありません、いきなり話が飛びすぎたようですね。順を追って話しましょう、…この国は今魔神族と戦争をしています、このままいけば後十年も経たずリュナミリア(この国)は滅んでしまう、だからこの戦況を覆す為に、…異世界人(あなた達)をお呼びしたわけです。こちらにくる時に神から授かる力を持って私達を助けて欲しいのです。」


少し話は長かったが、言いたい事はみんなに伝わった、…でも


「じゃ、じゃあさもし俺たちが魔王を倒した後、おっ、俺たちは元の世界に帰れるのか?」

誰もが思った事、異世界に来たのであれば、帰りたいものである。

その問いに彼女は、


「魔王を倒した後あなた達は…無事に元の世界に帰ることができます。」


その声を聞いて、クラスが沸いた。

それぞれが喜びを表現し、歓喜に満ち溢れていた。

だが、その歓喜の裏に…沢山の思惑があることも知らず。

「……まぁ嘘ですけど」

ボソッと言った言葉は、誰にも伝わらなかった。




「それでは皆さん、少しお話し良いでしょうか?」

ノエルが喜びに溢れているクラスを宥めた後、俺たち(異世界人)にこう伝えた。


「あなた達の神格(スキル)を把握しておきたいのです、よければ見せていただきませんか?」


「あぁ分かった、みんな一列になってくれ、聖女様にみんなが貰った神格(スキル)を見せてもらいたいそうだから、並んでくれ!」

とシンヤが全員に伝えた、みんなは指示通り一列に並んだ。


「まさか異世界で、番号順に並ぶなんてな」

その時、周りの人達が一斉に驚きの声を上げた、


「確か、今の奴は…愛莉か?」

騒ぎの先頭にいたのは、俺の幼馴染だった…



「凄いですよ、《運命壊し(ファタリタス)》を持っているなんて、持ってる人を初めて見ました。それでは次の方どうぞ。」


次はシンヤである。

「あいつ、どんな能力(神格)何だろなぁ〜」

前のクラスメイトのバカな会話が聞こえてくる、こういう奴の場合大抵…


「凄い神格(スキル)が出ました、ぜひ心清やかに過ごして下さい。あなたの能力は…」


まぁ大体の人が見終わった後、最後に残ったのが俺である。

果たして俺にはどんな能力が与えられるのか、頼むから使い方が分からんやつとか、意味が分からんやつとか辞めてくれよ?


俺の手が光り部屋を包め込む―――


「あなたの能力は……何故ですかこれは!どういう事ですか!」

いきなり胸ぐらを掴んできやがった。


「ちょっとまて、何が出たんだ?教えてくれ」

彼女は深呼吸した後、


「確かに、先程は取り乱して申し訳ありません、あなたの能力は、《待機》とだけ書かれてました、恐らくあなたは能力が無く、この先何か強いきっかけでも無い限り、新たに力を得ることは無いでしょう。」



・ ・ ・ ・ ・




瞬間、クラスが俺を笑った


「何だその能力!」

「お似合いじゃねぇか!」

「いっつも調子に乗ってるからだよ!」

「何しに来たんだよ!!」



正直に言うと、


別に、何とも思っちゃいない。

あ、負け惜しみとかじゃ無くてね、だって何であいつらは死にに行くような戦いに行くのになんか勝ち誇った表情で、バカなのか?こいつらはバカなの?


「人生生きたもん勝ちだ」

この言葉は、俺の亡くなったおじいちゃんからの受け売りだ。


あれから二年、結論から言うと

俺は結構強くなってる、流石に能力を使われると厳しいけど、でも披露しようとも思わないし、別に死にに行きたい訳じゃ無い。


この世界で俺は、結構努力したつもりだ、勇者(あいつら)みたいにはなれなかったけど、俺だって人並みに人を救いたいって思ってる。


この力でーーー、一人を救いたいって思ってる。


全員じゃ無くて良い、俺に道に行き交う全ての人を守れる、救える力は無い……でも俺にだって、全員じゃ無い誰か一人を守りたいって思うのは、分相応な願いのはずだ…


ここ最近、みんなが俺に絡まなくなった。

理由は察してる、俺が目障りなんだろう、能力が無いくせにずっと剣を振るってる、ずっと魔法を練習しているやつだ。


一部のやつは、面白く無いだろうな。


そのせいか、一部のやつから無能扱いだ。

今更って感じだけど、剣の腕前だけだったら恐らく誰にも遅れを取らない、俺だって人を助けたいと思う事は悪い事じゃ無い、クラスメイトの皆んなを守りたいって思う事は悪い事じゃ無いはずだ。






ある夜の日俺は、誰かに呼ばれた…クラスメイトの誰かに、

「一応名義はアイリなんだよなぁ?」

頭を掻きながら、言われた場所に到着して呼び出した人物を待っている、でも…


「かれこれ二時間は待ってる、どうしよっかなぁ?」

どうしても暇になった俺は、素振りを始めた。

訓練用の木剣を両手で払い、動きの確認などをする、最後に百回程度振って終わりだ。


「こねぇじゃん、全く何がしたかった………あ?」

直後、腹が左脇腹から真ん中ぐらいまで抉られた。


「がっっ、あいっっ、づがあああっ!!!!!!!」

何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


直後また、左腕を落とされた。

「づあぁぁあああっ!!!」

腹から内臓が溢れ落ち、腕には骨が見え血がこぼれ落ちている、胃液と血が混ざってクソみたいな味がした。

痛みで視界がチカチカしている、だが直後また視界が赤く変わった。

右足を膝から下を切られていた…


「づっっづぅ、ゔゔああっううう!!!!!」

これはいつ終わる?何でまだ俺は死んで無い?

視界が点滅して、赤と黒が交互に視界を彩った。


俺は逃げようとした、でも左足を…付け根からごっそり斬られた。

もう悲鳴を、激痛に叫ぶ程の声も体力も残ってない、もはや痛みすら感じなくなっていた。

その時、ようやく姿を現した。


「ご、にん?何で?」

痛みに耐えると言うか、もはや見れる惨状では無い俺を、穴という穴から何か出ている俺を見て、五人の殺人鬼はこう言った。


「国からアンタの追放命令が出たのよ、『追放の仕方はお前達に任せる』ってさ、でもクラスメイトの皆んなの意見で変えてもらったんだよね『あいつを追放したら、魔神族に情報を売るから追放じゃ無くて死罪にしろ』って事にしたのだから、死んでくんない?…ハルト」


今度は俺の右足が消えた、膝から下が…


その後は酷かった、回復役(ヒーラー)がいたのか、俺が死にそうになったところを少し回復して、また痛みつけるという拷問じみたものを笑いながらやっていた。


死にたいと、何度思ったか何で俺がこんな目にあって、

「お、おれが…何したんだ?なぁっ?」


「さあ?私に聞かれても」


あぁよく分かった、よく伝わった、こいつらは俺の事を何とも思っちゃいない、そこら辺の虫か雑草ぐらいだばばばば。


痛みで思考がまとまらない、耳を削がれ頬を抉られ体全体に無数の切り傷や、火傷の痕が体を抉られた痕が精神を蝕んでいった。


一目顔を拝んでやろうと顔を上げると、目を刺しやがった。

もはや何をされているのか、自分がどうなってるのかすら、分からないし知りたく無い。


でも、一人だけ分かった。

でも言いたく無い、言ったら俺が変わらざるを得ない。

でも、

でも…


「何で、何でそこにいるんだよ!アイリ!!」


「汚い顔で、呼ばないでよ…無能め、」


俺は一人だけ分かった、俺の幼馴染で好きな人で付き合った事もある、俺の大切な大切な………人だったはずだ、筈なんだ。


気づいたら、俺は何かを呟いてた、自分でも驚く程の熱量で、


「もう良いよね?殺しても?」

「あぁ良いぞ、というか時間をかけ過ぎなんだ…」


「……っして、やる」

五人がこちらを見る、今俺はものすごい形相だろう、初めてだ俺が人をこんな風に思う日が来るなんて。


「……っしてやるっ」


五人の表情が硬くなる、


「お前ら、全員…」



俺は静かに、

「殺してやる」


ーー息を引き取った。



必ず殺すと、誓いを立てて




ありがとうございます。


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