原点
かなり短いですけど、楽しんでくれたら幸いです
「すっげえ!!音が聞こえるぜこれ!!」
路地裏で日課のゴミ漁りをしていて、ふと目に止まった名前がわからない物。花みたいに開いていた金属、それの根元にある木の箱。
どれも路地裏じゃあ、お目にかかれない代物ばかりだ。
色々いじっていると、木の箱の上についていた黒い円盤が急に回り始めた。
急に動き始めて俺はビビったが、それよりも俺にはこれが、俺の人生を変える。
そう思って、目が離せない。
俺は恐る恐る手を伸ばして、木の箱から飛び出ている、先端が針のようになっている部品を、ちょんと下に押した。
聞き慣れない音が鳴った後、静かに“音”が流れ始める。
最初は弱々しく、吹けば飛ぶような歌声。
それが負けじと、段々と強くなっていく。
強くなって、音が一番盛り上がる瞬間……
ガチャ
と無慈悲にも、そこから先は聞くことも、または音が流れる事も無かった。
俺は木の箱から出続ける異音を、食い入るように聞いていた。俺の腐った世界をぶち壊しに来てくれた、“天使”のようだった。
断言出来る。俺はあの時間、あの瞬間だけ確かに路地裏を飛び出していた。
時間にして三十秒。あるかないか、そんな時間しか経過していないはずなのに、俺には何十時間にも感じられた。
一つの劇を俺はずっと、魅せられていた。
「すごかったなぁ……」
しばらくして、やっとこさ出てきた俺の声は、俺が思う以上に頼りなく、震えた声だった。
多分、生まれて初めての感動だった。
「よっと」
ズシリと両手から重さが伝わる。両手で抱えた“音を出す機械”を俺は瓦礫の山から丁寧に運び出して行く。
この機械に使われている金属部分を売ってしまえば、多少の金にはなるだろう、いつもならそうしてる。
でも、不思議と俺はそうしようとは思えなかった……




