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雨音に消える鍵

作者: しゅんけ

彼女は雨の中、駅のホームに立っていた。

手には古びたトランクを握りしめ、その表情はどこか遠くを見つめているようだった。雨粒が髪を濡らし、彼女の頬を伝う。だが、それが涙なのか、ただの雨水なのかは分からなかった。


「行くの?」


その声に振り返ると、彼がそこに立っていた。傘もささず、ただその場に立ち尽くしている。


「もう決めたの。」彼女の声は静かだったが、その中には揺るぎない決意が感じられた。


彼は一瞬何かを言いかけたが、口を閉じた。言葉は雨音にかき消されるだけだと悟ったのだろう。代わりに、彼はポケットから何かを取り出し、彼女に手渡した。それは小さな銀色の鍵だった。


「これを持っていてくれ。」


彼女はその鍵を見つめ、そして小さく頷いた。


電車がホームに滑り込んできた。彼女はトランクを握り直し、一歩踏み出す。そして振り返ることなく、車両の中に消えていった。




彼はその場に立ち尽くし、遠ざかる電車を見送った。雨はますます強くなり、彼の視界をぼやけさせた。だが、彼の手の中にはもう一つの鍵が残っていた。


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