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コミュ障ダンジョン探索者、人助けしまくってたことがバレて感謝されすぎる ~やめて! もう感謝しないで!~  作者: マノイ
第三部 第二章:コミュ障(治りかけ)、勇者たちと会う

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6. 勇者会合 隠しボス道場

『オラオラオラオラァ!』

『踏み込みが甘い!』

『ぐはぁっ!』


 おおー、綺麗に水平に飛んで行った。

 ボクが初めて戦った時もあんな感じだったなぁ。


『どうした威勢が良いのは最初だけか』

『まだ……まだぁ!』

『甘いと言ってるだろうが』

『ぐはぁっ!』


 さっきのリプレイみたいに全く同じように水平に飛んで行った。

 策も無く真正面から特攻するからだよ。


 ただいまキングさんが隠しボス道場でガムイと戦闘中。京香さんっぽい台詞だけれどキングさんだよ。

 キングさんはガムイと戦いたくて戦いたくてうずうずしてたんだってさ。

 ボコボコにやられているけれど目のギラギラは消えていない。


 ちなみにボクの限界突破のバフはかけていない。

 自分自身の力だけでどこまで通じるか試してみたかったそうだ。


『キング様がんばって~』

『負けても慰めてあげるからね~』

『格好良いよ~』


 キングさんの付き添いの女性達が黄色い声援を送っているけれど、あそこまでボコボコにやられている姿を見られるのは恥ずかしそうだ。女性達の方はキングさんが勇敢に立ち上がる姿に惚れ惚れしているから良いのかもしれないけれどね。キングさんが殴られて倒れた時に喜んでいる人もいるように見えるのはきっと気のせいだろう。


『おいおい、何寝てやがる。魔物は貴様の都合など待ってくれないぞ』

『うっ……』


 流石に打ちのめされ過ぎたのか、キングさんが苦しくて立ち上がれなくなりそうだ。


『チッ、情けねぇ。ならこれでどうだ』


 うわぁ、ガムイがキングさんを無視して付き添いの女性探索者の方に向かって殴ろうとした。


『待て』


 でもフラフラだったキングさんがもの凄い勢いで移動して先回りして、ガムイの拳を受け止めた。


『てめぇの相手は俺だ!』

『ふん、やれば出来るじゃねーか』

『オラオラオラオラァ!』

『だがそれでもまだ甘い!』

『ぐはぁ!』


 容赦ないなぁ。

 本気で訓練してくれってキングさんがお願いしたからってのもあるだろうけれど、キングさんの男気溢れる感じってガムイが好きそうだから楽しんでやってるのかも。


『立て。まだ終わってないぞ。貴様が立てないというのなら、あの女共を一人ずつ潰してやる』

『止めろ! お前ら逃げろ!』


 ガムイの脅しも女性達が訓練場から出てしまえば意味をなさない。

 でもガムイならキングさんの相手をしながらここから逃がさないように出入り口を塞ぐことなんてたやすいだろう。


 なんて思ってたら予想外のことが起こった。


『キング様助けて~』

『いや~ん、殴られちゃう~』

『怖~い』


 わざとらしく怯えた演技をしながら前に出たのだ。

 まるでどうぞ殴って下さいと言わんばかりに。


『お前らなぁ……』

『はぁ~っはっはっ! 肝が据わってるじゃねーか。メンタルは貴様よりも遥かに強いんじゃないか?』

『そんなこと知ってらぁ!』


 知ってるんだ。


 きっと彼女達は単なる付き添いでは無くて、ガムイと共に戦う心が深く通じ合った仲間なのだろう。何度も修羅場をくぐり合ったかのような強い絆が感じられる。


 最初にキングさん達を見た時と印象がガラっと変わったや。

 最初はキングさんのカリスマに惹き付けられたファンのような女性達なのかと思っていたけれど、むしろあの女性達にキングさんが振り回されているんだね。


『いやぁ強い強い。あの見えない糸は本当に厄介だね』

「お疲れ様」


 キングさんの様子を見ていたら、訓練が終わったボロボロのキョーシャさんがやってきた。見えない糸ってことはハーピアさんにしごかれていたのかな。


「カマセさんは?」

『知り合いの探索者と情報共有をしているよ』


 キョーシャさんと一緒に訓練し終わった後だって言うのに頑張るなぁ。


「キョーシャさんはまだ訓練を続けるの?」

『いやぁ、流石に二回も戦ったらヘトヘトだよ。このくらいにしておくつもりさ』

「そっか。ペリエルさんとも戦ったんだもんね」


 ペリエルさんは天使っぽい見た目で聖属性の使い手だから、キョーシャさんは教えを乞いたかったんだってさ。その後にハーピアさんと戦ったんだ。


「おっと危ない」


 話をしている途中に濃縮獄炎魔襲弾(ぜんぶもやすぞい)が飛んで来たので打ち消しておく。

 どんな物体でも焼き尽くし消滅させてしまう炎の球で、サッカーボールくらいの大きさがある。


「ほっほっほっ、すまなんだな」


 技の命名者にして、誤爆のフリしてわざと攻撃して来た犯人がやってきた。


「酷いよウルゴールさん」


 白い髭を蓄えた魔法使い風のおじいちゃん。

 隠しボスのウルゴールさんだ。


 ボクが三番目に倒した隠しボスで、以前隠しボス達に怒られた時に幻影が出て来たことがある。

 そういえばウルゴールさんについては配信でもほとんど触れてなかったや。


「油断しているところなら当たるかと思うてな」

「油断しているように見えるの?」

「ほっほっほっ、全く見えんな」


 ボクが隠しボスと対等以上に戦えるようになって悔しいのか、隠しボスの皆は隙があればボクに攻撃を仕掛けてくるからここではいつも以上に気を抜かないようにしてるんだ。ウルゴールさんの今回の一撃なんて文字通り挨拶みたいなものだけれど、今日は他にも人がいて守るのが大変だから止めて欲しい。


「ウルゴールさんは休憩中?」

「挑戦者が居なくなってしまってのぅ」

「そうなんだ。それじゃあキョーシャさんやってみない?」

『!?』


 ウルゴールさんは魔法使いのエキスパートだから聖属性魔法の使い方も指導(ブートキャンプ)してもらえるかも。


『とても興味はあるのだけれど、疲れすぎているのでまた今度お願いするよ』

「そっか、残念だね」


 一瞬だけエリクサーをあげようかとも思ったけれど、貴重な物を簡単にあげるなと怒られそうだから自重した。きっと褒めてくれるはず。


「皆の実力はどうだった?」

「まだまだじゃな。魔法の神髄のしの字にすら到達していない者ばかりじゃ」

「そりゃあ皆は魔法研究者じゃなくて探索者だもん」

「だとしても、じゃ」


 相変らず魔法には厳しいなぁ。


「あれ、ギルさんとセオイスギールさんは?」


 あの二人ならウルゴールさんを満足させられると思ったんだけど。


「ギルとやらは嘆かわしいことに物理専門じゃな。こっちには来とらんよ」


 あれ、そうだったんだ。

 物理寄りだろうなとは感じていたけれど、魔法はおじいちゃんに挑める程じゃなかったんだ。


「セオイスギール嬢はここには来ておらんな。外で瞑想をしておるようじゃぞ」

「あれ、そうなんだ。準備(・・)するって言ってたから、皆と戦っているのかと思った」

『救様、彼らと戦うのを準備運動と考えるのはちょっと……』

「ほっほっほっ、そんなことを言えるのはお主だけじゃ」


 呆れられちゃった。


 会合休憩中でのオモイ・セオイスギールさんの爆弾発言は場を大いに混乱させた。

 ボクは彼女の『自分が救済者』という言葉の意味をちゃんと分かっているので気にならなかったけれど、他の人は知らないどころか『救済者』はボクだけ(・・)を指す言葉だと思っていたから仕方ないこと。

 これを説明するとアレについて詮索されてしまうかもしれないから黙っていたのだけれど、こんなところで明らかになっちゃうなんてなぁ。


 ボクも彼女も何も説明するつもりがないから、会合の混乱が治まらずに中止になっちゃったんだ。

 そのまま誤魔化すように皆で隠しボス道場に移動して訓練をしてもらっているのが今の状況。


 その移動途中で、セオイスギールさんからお願いされたことがある。


『私と模擬戦をして欲しい』


 ボクとしては何も問題無いどころか、とても強い彼女と戦って訓練できるなんて嬉しい事だったので笑顔でそのお願いを受け入れた。

 でも、それじゃあすぐにやろうって言ったら準備があるからってどこかに行っちゃったんだ。


 だからそれまではこうして皆が訓練しているところを観戦させてもらっている。


「それならワシと準備運動せぬか(やらんか)?」

「それも良いけれど、ボクはこの近くに住んでいていつでも戦えるから他の人を優先して欲しいなぁ」

「なんじゃ、つれないのぅ」


 そんなに物欲しそうな視線で見てもダメだよ。

 今日の主役はボクじゃないんだから。


「ラストダンジョンをどこに設置すべきかアドバイスくれたら戦っても良いよ?」

「ほっほっほっ、それは無理だと言っておるだろう」

「うん、知ってる」


 けれど念のため聞いてみたんだ。

 ここの隠しボス達は新たな情報を提供できないように制限がかかってるんだってさ。


 質問に答えて欲しければダンジョンに出現する隠しボスを倒さなきゃダメらしい。


「じゃあガフェさんに手伝ってもらえるように説得してよ」

「ほっほっほっ、あの小僧は怠惰なひねくれものじゃから無理じゃ」

「うん、知ってる」


 これも何度もお願いした話だ。

 ボクが二番目に倒した隠しボスの堕天使風のチャラ男、ガフェさん。


 彼は隠しボス道場に一切興味が無いらしく、様子見に来ることすら無いんだ。

 道場の相手になってもらうのはあくまでもお願いだから仕方ないことなのだけれど、折角だからガフェさんの厭らしい戦い方を皆に味わってもらって欲しかった。


「しかたないのぅ、他の者を探して遊ぶとするかのぅ」

「キングさんとかどうかな」

「キングとはあやつか……魔法の才もあるのに何故ガムイと肉弾戦をしているのだ?」


 それはボクが聞きたいくらいだよ。


「肉弾戦が得意なガムイ相手に肉弾戦で挑みたかったのかも。だとすると魔法が得意なウルゴールさんには魔法で挑むと思わない?」

「ふむ……試してみる価値はあるか」


 あ、ウルゴールさんが悪い顔して二人の方へ向かっちゃった。

 もしかしたらキングさんに悪い事しちゃったかな。


 でも隠しボスと戦いたいって意気揚々としていたからむしろ喜んでくれるかも。

 隠しボスは興味がある相手としか戦ってくれないから、興味を持ってもらえるのはとても貴重なことだしね。


『救様、流石にキングが可哀想かと』

「そうかな?」

『だってすでにボロボロの状態ですよ?』

「でもキングさん楽しそうにしてるよ」


 ボッコボコで体中が痛い筈なのに笑顔でガムイに挑んでいる。

 困難に立ち向かうのが好きならば、ここにウルゴールさんが加わったらもっと喜んでくれるはずだ。


『あれは相手がガムイだからかと……いえ、やってみなければ分かりませんか』


 そうそう、ダメだったらダメって言えば良いだけなんだしさ。


『きゃ~キング危ない!』

『キング立って!』

『そろそろ一発入れなさいよ!』


 相変らず女性陣は元気だな。

 むしろさっきまでよりも前に出てきている気がする。


「キョーシャさんの付き添いの人はカマセさんだけ?」

『うん、他の人なんてありえないからね』


 恋人同士で実力も考えたら当然か。


『救様はキングの付き添いの女性方が気になるのですか?』

「気になると言うか、ボクも誰か付き添いの人が居た方が良かったのかなって思って。ほら、普段は京香さんがパートナーだけれど今回は進行役だったからさ」


 本当は友達に来て欲しいのだけれど実力的に場違いになっちゃう。

 ギルドメンバーの幹部の誰かにお願いすれば良かったかな。


『おや』

「どうしたの?」


 キョーシャさんが何故か笑みを浮かべてボクを見ている。

 ううん、ボクの背後を見ている?


『救様にも立派な付き添いの人達がいるじゃないですか』

「え?」


 ボクの背後には誰も立っていないはずだけれど誰の事だろう。

 もしかして幽霊的な怖い話じゃないよね。


 恐る恐る振り返ってみる。


「ぷぎゃああああああああ!」


 なにこれ!?

 沢山の美男美女がいるんだけど、どこのどなたさん!?


 ってこれホログラム映像だ。

 ということはつまり……


「かのん! こういうのは要らないから!」

『あはは、酒池肉林とは流石王様、いや、神様だね』

「神様じゃないから! 王様でもないから! 酒池なんてどこにもないから! 肉林も偽物だから! ぷぎゃあ! 神々しい着物を着てるように見せるのもやめて! 露出が多い人達をボクに絡ませようとするのも止めて!」


 皆が見てるし写真も撮られてる!

 かのんったらどこでこんなの覚えたのさ!


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― 新着の感想 ―
[一言] そりゃ、カノンちゃんには、悪い教育係が沢山いますからねえw 隠しボスたちも楽しそうで何より。本章締めは救済者同志の模擬戦かな?
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