5. [配信回] 富士山ダンジョン ショートカット超楽しい!
「マグマシャークはマグマから急襲してくるのが厄介なだけでステータスは上級ダンジョン並だからマグマの様子に気を付けていれば余裕で倒せるよ」
「オラアアアアアアアア!」
「リザードマン(灼熱)の攻撃は炎耐性でそこそこ軽減出来るけれど、そもそもの剣技が鋭いから気をつけようね」
「オラアアアアアアアア!」
「煉獄アルマジロは小さくて攻撃当て辛いし硬いしマグマ纏って飛びあがり上空から襲ってくる厄介な敵だよ。タンクさんが盾で受け止めると一定時間地面に転がって動かなくなるのでその間に魔法で倒すのがセオリーかな。タンクさんが居なくてもマグマ耐性と防御ステータスがある程度あればこの通り」
「オラアアアアアアアア!」
富士山ダンジョン上層の敵について解説しながら京香さんに倒してもらっている。奥多摩ダンジョンの基礎ステータスが高い魔物達を狩れるようになっているので、ステータス面では劣るここの魔物相手なら倒し方さえ分かれば京香さんでもソロで十分討伐出来るんだ。
"オラアアアアアアアア!"
"オラアアアアアアアア!"
"オラアアアアアアアア!"
"狂化様のバーサクっぷりがいつも以上に激しくて救くんちゃんの説明が入って来ないw"
"でも最難関ダンジョンを普通に攻略してる……"
"いくら救くんちゃんにバフかけてもらってるといってもすごくね?"
"これがブートキャンプの効果か"
"ちょっとだけ興味出て来た?"
"それはない"
富士山ダンジョンは奥多摩ダンジョンと似ていて嫌なギミックが少ないから、暑さとマグマ対策が出来ていれば上層探索程度ならお勧めだよ。
「ふぅ、敵は倒せるが足元が不安定なのが大変だな」
ゴツゴツした岩場だらけで平らなところが少ないからね。
「空中足場とか浮遊使えば楽なんだけど、ここって広いから魔力消費が多くなっちゃうんだよね」
ボクは余裕だけど、皆はそんなに魔力が無いって覚えたから無理に勧めないよ。皆に寄り添った解説が出来るように少しは進歩してるんだぞ。えへん。
「また爆弾発言を……」
「ぷぎゃっ!?」
気を使って発言したはずなのにどうしてそうなるの!?
"えへん、って胸を張ってるのが超かわいい"
"ドヤ顔たすかる"
"でも新情報を突然出すのは止めてくれぇ"
"浮遊はともかく空中足場って何よ!"
"まさか空中を歩けるとか?"
"アクションゲーマー憧れの二段ジャンプが可能に!?"
空中足場の方が知られて無かったんだ。二段どころか何段でも出来るよ、とかは言わない方が良いのかな。
「……謎スキルについては後で詳しく教えてもらうとして、他に気を付けるところはあるか?」
配信の時にボクが新しい情報を口にしたら、京香さんに後で詳しく説明して公開してもらうのが最近の流れになっている。そうしないと説明ばかりで先に進めなくなるからなのと、説明の中でまた新しい情報が出て来て説明が終わらないことにもなりかねないからって京香さんに言われたんだ。
「マグマが地面から噴き出たりするギミックもあるけど、それよりも広くて探索が大変なのがネックだと思う」
「そんなに広いのか?」
「上下に凄い入り組んでいて、何度も昇り降りしながら進まなくちゃダメで、しかも深さが建物十階分くらいはあるんだ」
「うげぇ、マジかよ」
だからここを攻略するには灼熱の環境の中で長時間探索する技術が求められるんだ。
「思ったより配信に時間がかかりそうだな。予定が狂った……」
「大丈夫だよ。ボクがいるから」
「……その心は?」
そんなに不安そうにしなくても平気だよ。
"狂化様がめっちゃ苦悶の表情になってるw"
"何が飛び出すか分からないから聞き返したくないんだろうなw"
"危険予知が発動している可能性もあるぞw"
皆も失礼だなぁ。むしろとても爽快で楽しい体験をしてもらうつもりなんだよ。
「アレを使うの」
「マグマの大河?」
「うん」
周囲と比べて一際幅の広いマグマの川が流れていて、それを使うのがショートカットのコツなんだ。
「マグマ耐性を利用して川の流れに乗るのか。だがマグマは水とは違って動きが遅いし、中から魔物が襲ってくるからその対処時間も考えると素早く移動するのは難しいように思えるが」
「あはは、マグマそのものは利用しないよ。あのマグマの流れに沿って移動するだけでボス部屋への入り口へのショートカットになるんだ」
「どういうことだ? ボス部屋って多分下の方……………………」
お気づきになられましたか。
"ま さ か"
"うそやろ!?"
"でもさっき言ってたスキルがあれば"
"出来るけどさぁ!"
"川と言えば滝!"
"ひゃっほー!滝下りだー!"
"狂化さまが流してる滝汗のことかな?"
"めっちゃ青褪めてて草"
"だって救くんちゃん、ここって建物十階分って言ってたし……"
"紐無しバンジーやるって言われたらそりゃあ狂化様でもビビるわw"
大丈夫大丈夫、怖いのは最初だけだから。
一度体験すると病みつきになるよ。
「さぁ、京香さん行こう」
「ま、まてまてまて、正気か!?」
「安心して、ボクが京香さんをしっかりと抱えるから」
「それは嬉し……じゃなくてだな、他に方法は無いのか!?」
「これが一番てっとり早いんだって。今日はダンジョン攻略以外にもボクに秘密の用事があるんでしょ? だったらやっぱり飛ばないと」
「…………」
もう少し時間をかけて良いって話なら壁や床を強引に破壊する方法もあるけどね。
「というわけで京香さん」
「へ……!?」
京香さんの後ろに回って軽く膝裏を押して、倒れそうになったところで背中と膝裏に腕を回して支えて持ち上げた。
「なっ……なっ……」
「あれ、京香さん大丈夫? 顔が赤いけどもしかして暑い? 耐性バフが切れちゃったのかな?」
追加でバフをかけたけど顔色が良くならないなぁ。
"お姫様抱っこ裏山!"
"救くんちゃん小さいから無理しているように見えるw"
"そこが良いんだよなぁ"
"狂化様が京香様に戻りかけてるw"
"そら(推しにお姫様抱っこされたら)そうよ"
"ガチ照れ京香様はかどるわぁ"
"羨ましい想いと可愛らしい気持ちで脳がバグった"
"救様、私もやって!"
"私もやってもらいたーい!"
"私も私も!"
"俺も!"
"Me Too!"
"ブートキャンプに参加すればやってもらえるかも"
"…………"
"…………"
"…………"
"…………"
しまった、この体勢だと配信装置のリストバンドが京香さんの体の下にあるから皆のコメントが見れないや。
「リスナーの皆さん、ごめんなさい。コメントがしばらく見れないので、降りるまで返信は出来ません。ああ、でも京香さんが未知の状態異常にかかってるから配信止めて引き返した方が良いのかな?」
「大丈夫でふ!」
「でふ?」
「大丈夫だから気にするな! こんな風に持ち上げられたらだれだってこうなる!」
「そうなの?」
それは知らなかったや。また一つ勉強になったなぁ。
「じゃあ問題ないということで、そろそろ行くね」
「え、まってまだ心の準備がひぃええええ!」
「だーっしゅ」
まずはマグマの大河に沿って下流側へ走って向かう。
京香さんを抱えていようとも足場が悪くても平気さ。
「はいどいてね~」
魔物が出て来ても圧縮魔力弾で粉砕して消えてもらおう。
"ひゃー!"
"何が起きてんのこれwww"
"魔力弾で撃ち抜いてる?"
"しかも魔物が出た瞬間に急所に直撃"
"今魔物が出る前に撃ってたぞ!?"
"絶対また未知のスキル使って先読みしただろw"
"そもそも魔力弾にこんな威力無い定期"
"魔力弾って弾丸維持するの大変で狙いつけるどころじゃないのに……"
よし、目的地に到着だ。
深くて広い円形の竪穴の中に、マグマの大河が流れ落ちている。
「ひぇええええ! これ絶対十階どころじゃない!」
「そうかな? じゃあ二十階?」
「五十階以上はあるに決まってるだろうが!」
そう言われてみると確かに十階は小さすぎたかな。考えたこと無かったから勘違いしちゃった。
「マジでここを飛び降りるのか?」
「うん、ボク飛べるしマグマ耐性あるし大丈夫だよ!」
「うんぬぅんうんぬぬぬ」
その声何!?
"聞いたこと無いうめき声で草"
"呪われそうでこれはたすからない"
"ASMRかくていな"
"やめいwww"
さぁて、そろそろ行こうかな。
「じゃあ京香さん行くよ」
「あ、やっぱり止めぴゃああああああああああああああああああああああ!」
「いやっほおおおおおおおお!」
高い所から飛び降りるのって爽快感あるよね。
巨大なマグマの滝の真横を勢いよく降りて行くのが超気持ち良い。
「あ! 言い忘れてた!」
「ぴゃああああああああ! 何をだああああああああ!」
その状態でもお話し出来るんだね。実は楽しめてるのでは?
じゃなくて、これ絶対に後で怒られるよ……
「本当にごめんなさい。言い忘れてただけなんです、隠してたわけじゃないんです、だから怒らないで!」
「何のことか早く言ええええええええ!」
「あ~もう遅いや」
「へ?」
マグマの滝の中から轟音と共に一匹の巨大な魔物が姿を現した。
『グギャオオオオオオオオ!』
「こんにちは~」
「ぎぃやああああああああ!」
"なんだアレ!?"
"魔物!?"
"でっけぇ!"
"ウナギか!?"
"二人を丸のみしそうなほどでけぇぞ!"
"ヤバイ! 狙われてる!"
ここを飛び降りると全長五十メートルくらいはありそうな巨大ウナギが必ず襲ってくるんだ。
「京香さん、しっかり掴まっててね」
空中ダッシュで下方向へ加速。
「ぎぃやああああああああ!」
まずはこれでウナギに食べられずに済んだけれど、ここからが本番だ。
「上からマグマが降って来るけど大丈夫だから!」
「ふぇ!?」
『グギャオオオオオオオオ!』
ウナギが大量のマグマの塊を頭上から降らせてくるのでそれを空中足場、空中ダッシュ、空中機動などのスキルを駆使して落ちながら左右に軽やかに避ける。
「あれって一見してただのマグマの塊に見えるけど中に岩が入ってるからマグマ耐性があってもダメなんだよね。卑怯だと思わない?」
「知るがああああ!」
"雪玉の中に石いれるみたいなことかw"
"確かに卑怯だけどそんなことより絵面がやべぇ"
"画面中マグマ(石入り)だらけで当たりそうで怖え……"
"でもぶっちゃけ空中を自在に動いて躱してるの超格好良くね?"
"それな"
"滝落下中バトルはくっそ熱い"
"狂化様をお姫様抱っこしているのも良い味だしてる"
"ふぁっ!?"
"挟まれた!?"
"危ない!"
避けてボク達よりも下に落ちた巨大マグマ弾丸が位置を変えて上昇して来る。もちろん上からもまだ降ってきているので挟み撃ちになる形だ。
『グギャオオオオオオオオ!』
「無理無理無理無理、もう無理ぃ!」
「あはは、大丈夫だって。ほら、空中ダッシュ!」
もっと下方向に加速して上昇して来るのを先に避けて、その後に上から落ちてくるのを避けてと、同時に対応しなければ簡単に避けられるよ。
"弾幕ゲーかな"
"グレイズしなきゃ(スコア狙い)"
"救様なら被弾してもぴちゅんしないから"
"笑顔で破壊しそう"
"むしろ楽しいから律儀に避けている説"
"ありそう"
"[シルバー友1] ごめんなさい、後できつく言っておきますので"
"最早友達が保護者みたいになってて草"
"きつく言わなくても家族会議モノだろこれ"
"[シルバー姉] 救ちゃんが楽しそうだから悩み中"
"姉www"
"出て来たwww"
"でも気持ちめっちゃわかる"
"あれだけ笑顔で楽しんでると怒りにくいよなぁ……"
やっぱりここの滝落下は楽しいな。
さて、そろそろあのウナギくんが来るかな。
『グギャオオオオオオオオ!』
「ぎゃああああああああ!」
「はいざんね~ん」
巨大マグマ弾丸を避けると今度はウナギくんが猛スピードで縦横無尽に突撃して来るんだ。しかも同時に周囲に機雷となる小さな岩石を召喚するから適当に避けると被弾して大ダメージを受けちゃう。
「京香さん、少しうるさいけど我慢してね」
「死ぬ、もう死ぬ、すぐ死ぬ、だめ…………え?」
「どかーん」
「ひゅっ!」
機雷岩石が邪魔ならを全部爆発させてしまえば良いんだ。
音波スキルを全方向に飛ばせばほら簡単。
"耳がああああ!"
"ぎゃああああ!"
"う る せ え!"
"画面も何も見えないw"
"これ救様大丈夫なの!?"
"心配なんだけど絶対大丈夫という自信がある"
"音量注意!"
"おせえよwww"
"いやでもこれウナギが機雷ばら撒くと毎回やるんじゃ"
"ぎゃああああ!"
"耳がああああ!"
"つーか、この状況でも壊れないカメラ凄くね?(難聴中)"
"え、なんだって?(難聴系)"
"ラノベの世界に帰れ"
"マジレスすると救くんちゃんがカメラにスキル使ってたから多分なにかまた知らないことがあるw"
この大量爆発はいつ見ても迫力があって気持ち良いんだ。
『グギャオオオオオオオオ!』
「おっと危ない」
ウナギくんが真横からの突撃のフリして巻き付き攻撃をしてきたので下方向へのダッシュで軽やかに避けた。避けるばかりじゃなくてあの解説もしないと。
「このウナギくんって、実はあらゆる攻撃を無効化するから倒せないんだよね」
"は?"
"どういうこと?"
"倒せない敵とかいるの?"
"それってつまりここは通るなってことではw"
"止まれ(止まらない)"
"どうりで殺意高すぎると思ったわw"
"飛べるからって試してみたらウナギに喰われるとかえぐいな"
"普通はウナギが出て来た段階で無理だと思って引き返すのではw"
スキルを駆使して色々と試したけどどうやってもダメージを与えられなかったんだ。
「だから強引に倒してみたんだけど、すぐに復活したから意味なかったよ」
"は?"
"どういうこと?"
"倒せない敵って言ってたよね?"
"それってつまり…………どういうこと?"
"倒せない(倒せないとは言ってない)"
"いやマジで意味不明なんだけど"
フラウス・シュレインが手に入った後で試したら何故か攻撃が通じたんだよね。やっぱり隠しボス撃破報酬は別格ってことなのかな。
「救! 下っ! 下ああああ! ぶつかるうううう!」
「そろそろ終わりかぁ」
赤黒い滝つぼが見えて来た。
このままだとマグマの中に一直線だけど、もちろんそんなことにはならないよ。
「ひいっ! なんでか、加速……!?」
敢えて空中ダッシュで勢いをつけて…………………………ここだ!
「いいやっほうううううううう!」
「…………」
勢いをなるべく殺さずに急旋回してマグマに落ちるギリギリのタイミングで横方向へと向きを変え、そのままマグマしぶきをあげながら高速飛翔をするんだ。これが超気持ち良いんだよね!
『グギャオオオオオオオオ…………』
そのまま横穴へと入ると、ウナギくんはもう追ってこなくなる。
「いやぁ、今日も楽しかった」
「…………」
これだから滝下りは止められないんだよ。
ショートカット出来る上にアトラクションも楽しめるとか最高だよね。
「京香さんどうだった? 楽しかったよね?」
「…………」
「京香さん?」
あれれ、おかしいな。
京香さんが首に手を回したまま反応が全くぐえっ!
首が、首がああああ!
「ぎょうがざん、ぐびっぐびがっ!」
「~~~~っ!」
「じめないでええええ!」
力任せに首絞めるの止めてぇ!




