果物を奪うキツネ
あるところに、樹を育てている猫がいました。
猫は樹を苗の頃から水やりを一日も欠かしたことがなく、やがて大きく成長した樹を大切に、大切に愛情を込めて育てていました。
そして、樹は大きな果物を実らせると猫はその果物を収穫し、森の動物たちに分け与えます。
猫の持ってきてくれた果物は甘くて美味しいと大変評判でした。
やがて森の動物たちも自分たちで樹を育てて美味しい果物を育てたいというものが現れ、猫に樹の育て方を教わりました。
そんななかで、一匹のキツネがどうしても猫のように果物を作りたいと思いましたが。樹を育てるのが面倒だ。楽して果物を手にして、森の動物たちから美味しいと言われるようになりたいと思うようになりました。
そこで、キツネは森の仲間たちや猫が育てている樹から果物を勝手に取り、他の森へ行って動物たちに振る舞いました。
キツネは、自分ならいつでも美味しい果物を持ってきてやると胸を張っていいました。
ある日、森を大雨と台風が襲いました。小さい木々はなぎ倒され、川から溢れてきた水が森に流れてきてしまいます。
森の動物達が育てた樹も被害に遭い、果物は樹から落ちて食べられなくなってしまいます。森の動物達はひどく落ち込みました。
しかし、猫だけは落ち込んだ様子もありません。
「大丈夫だよみんな。樹や果物はダメになっちゃったけど、みんなには今まで樹を育ててきた知恵がある。また一から育てて今度はもっと美味しい果物を実らせる樹を育てよう」
猫の言葉に動物たちは励まされ、もう一度樹を育てようと立ち上がりました。
一方、困り果てたのはキツネでした。樹が無くなってしまえば果物を取ることはできない。おまけに自分は樹を育てる方法も知らないのです。
やがて、他の森の動物たちに果物を振る舞うことが出来なくなったキツネは嘘つき呼ばわりされ、しかも今まで果物を勝手に取っていたのがバレて森を追い出されてしまいましたとさ。
結果だけ欲しがる者はなにも手に入れられなくなります