六 一緒に朝ご飯
翌朝、三人そろって寝坊した。
「フウレン、フウレン!
もう10時を過ぎたぞ? いいのか?」
フウレンと仲の良い侍従が、扉をたたいて起こしてくれた。
「大変! リヨク様、セキ王子、起きてください!」
セキとリヨクは、それで目を覚ます。
「着替えてください! すぐ!」
「フウレン、食事は俺がお持ちしようか? 先に、片づけた方がいいのでは?」
「わあああ、ひどい有様だ!」
カーテンを開けて回るフウレン。
夜でも散らかって見えた部屋だから、陽がさしたらなおさらだ。
「すまないけど、甘えていいか!? サーブの必要がない食事を、三人分、頼む!」
持つべきものは友達だ。
セキは起き上がり、昨日はシャツを着たまま就寝してしまったことに気づいた。さすがに、皺だらけでみっともない。
「兄上、シャツを貸してください」
「俺のだと、少し大きくない?」
「リヨク様のもので、スリムなデザインのものをお出ししましょう!
二人とも、早く顔を洗って!」
急かされながら、身支度を整える。
フウレンには悪いが、セキはちょっと楽しかった。
「とりあえず、目につくものから片づけましょう!
ああ、書類は順番があるので、私がやります!
セキ王子は歴史書を、リヨク様はそれ以外を本棚に!」
普段は自分のものでも片付けることなどないが、セキは拾い集める。
「セキ王子、リヨク様、本当に申し訳ありません!
極秘資料が多いので、その辺の者を呼ぶわけにはいかなくて……」
「いいんだ。俺、もともと自分で片づけるつもりだったし」
「私も、夜更かしして遊んでたことがバレないように、自分でやります!」
三人で、せっせと片づける。まだ途中だが、
「フウレン、カートごと受け取ってくれ。俺は中に入らないほうがいいよな」
「もちろんだ。すべて見なかったことにしてくれ」
持ってきてもらった食事をフウレンはテーブルに並べる。
「フウレンは、良い友達を持ってるな」
「この若さで近衛兵団長なんて仰せつかりましたからね。仲間の助けがなければやっていけません」
二人を促して、席につかせる。
もう時間がないので、今度はフウレンも遠慮なく座った。
「そういえば、父上のプライベートは、ほぼフウレンですね」
「もっと雇えばいいのに。今回みたいにフウレンが留守番する時、父さん、不便じゃないのかな」
「――私が悪いのです。陛下は、この城を信用しておられませんから――」
急いでいるというのに、フウレンは手を止め、うつむいてしまった。
「フウレン?」
「ああ、いえ、今は違いますよ? 奥方様も増えましたし、リヨク様やセキ王子は、陛下の心の支えです!」
「そう、なれるといいのだけど……」
セキは、素直に喜べなかった。
と、ここでノックが響く。
「フウレン、大変だ!」
先ほどの侍従である。
「陛下が予定を早めたらしい。昼前には、お戻りになると、知らせが着いた!」
「昼前!?」
イスをガッコンと押し倒して、立ち上がる。
「なんだって父さん、そんなに急いでくるんだ!」
「リヨク様を心配してらっしゃるんですよ!」
もはや、食べている場合ではない。
「さきに片づけましょう!」
セキも、立ち上がる。
――と、再び、フウレンを呼ぶ声。
「剣の先生から使いが来たぞ! 時間になっても王子がお見えにならないと」
「忘れてました! そうです、午前中は剣の稽古です!
リヨク様、早く行って! セキ王子も、ご一緒に!」
「フウレン一人で、大丈夫ですか?」
「何とでもなります! 二日連続でサボりなんて、絶対ダメです!」
「ごめん、フウレン!」
リヨク王子が剣を探して、本棚の上に見つける。
「ごめんなさい、フウレン。話が母上のところにいくと、面倒なので……」
「その通りです、セキ王子。
先生には、王妃様に告げ口なさらないよう、念を押してください」
「セキ、急ごう。おまえの剣は、修練場にある?」
「はい。置きっぱなしです」
セキはフウレンに、「また一緒にご飯食べましょう」と声をかけた。
フウレンは微妙な反応をし、それでも「そうですね」と笑ってくれた。
兄と並んで、廊下を走る。
「おまえ、ちゃんと食べれた? 運動できる?」
「兄上と同じくらいは食べました。あの――」
ほんの少し、勇気を出して聞いてみる。
「父上がお帰りにならないとき、また――、泊まりに行っていいですか?」
「もちろん!」
リヨク王子は当たり前に答えてくれた。
「今度は、早起きしてゆっくり朝ごはん食べよう!」
「はい!」
セキは、元気に答えた
完