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美人メイドと小さなご主人様  作者: ふぉりす
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UFOキャッチャー

ランチタイムに立ち寄ったゲームセンターで、ぬいぐるみのユーフォ―キャッチャーにチャレンジしたアニエス。

感嘆には取れないのがユーフォ―キャッチャーだけど、そこ現れたのは救いの神ならぬ救いの○○?


2021/02/05 タイトルをアルファベットに変更

 白髪碧眼の美女と金髪碧眼の十歳くらいの少年が、商店街のうどん屋のテーブル席で向かい合わせに座ってうどんを啜っていた。

 美女は髪をアップに(まと)め、黒いロングのワンピースにフリル付きの白いエプロン、頭に白いフリルカチューシャを乗せた所謂いわゆるメイドのような恰好をしていた。

 向かいに座る少年はアニメキャラが胸にプリントされた白のティーシャツにチェック柄の半ズボンを履いて、濃い青色のパーカーを着ている。その上から店に備え付けの子供用の紙エプロンをして、器用にお箸を使ってうどんを食べていた。

 昼時には少し早い時間なので、あまり広くない店の中には客は二人しかいない。

 店の三分の一を占める厨房には男性と女性が二人ずつ入って、うどんを茹でたり天ぷらを揚げたり食器を並べたりしながら、この後やってくるランチタイムの客を迎える準備に精を出していた。

「アニエス様、お(つゆ)が飛んでいますよ」

 白い髪の美女がエプロンのポケットから真っ白なハンカチを取り出してアニエスと呼ばれた少年の頬に飛んだうどんの(つゆ)()こうとしたが、少年はそれより早くテーブルの端に置いてあった紙エプロンを取り出して口の周りをササっと()いてしまう。

「アイシャさん、せっかく奇麗なハンカチが汚れちゃうよ」

 アニエスが言うと、アイシャは少し眉を下げて「また洗えばよいだけですよ」と言って席を立つ。

 どこへ行くのだろうとアニエスが目で追うと、二人の空になったプラスチックのグラスをもって給水器の所へ行き水を入れて戻ってきた。

「アニエス様、お水をどうぞ」

「ありがとう!」

 元気にお礼を言うアニエスにアイシャはにっこりと笑って答えると、席に着いて残ったうどんを食べ始めた。

 それから少してうどんを食べ終わった頃、店内にちらほらと昼休みのランチタイムの客が入り始めて店の中が賑やかになってくると、二人は満腹になったお腹に満足しながら揃って食器を返却口に返して店を出た。

「ちょっと時間が余っちゃったかな」

「そうですね、三十分くらい早く着いてしまいそうです」

 ランチタイムの商店街の中は、店を探す人達で一気に人口密度が増えていた。

 アニエスはアイシャの胸より少し下くらいしか身長が無いので、人の波に流されてしまわないよう二人は手を繋いで歩いていく。

「あ、アイシャさん。あそこ行ってみようよ」

 アニエスが指を指した店は全面ガラス張りで、赤や黄色の派手な色使いで「GAME」と書かれた看板が掲げられている。

「ゲームセンターですか?」

「うん、ダメかな?」

 アニエスが上目遣いにアイシャを見つめると、アイシャはその顔に弱いのですと心の中で呟いて「少しだけですよ」と許可を出す。

 二人は手を繋ぎ人波の間を縫うようにしてゲームセンターに辿り着くと、丁度昼時だからか店内は人影が少なかった。

 店に入ると手前はぬいぐるみやお菓子がたくさん入ったユーフォ―キャッチャーの台がいくつも並んでいて、奥の方にちらほらとビデオゲームやVRゲームの台が見える。

 アイシャはビデオゲームかVRゲームをプレイするものと思っていたが、アニエスは手前のユーフォ―キャッチャーの台をいくつかチェックして、そのうちのひとつ『VRモンスター』に登場するピンク色の猫か犬のようなモンスターの大きなぬいぐるみの入った台に張り付いた。

「これやりたい!」

「難しそうですね」

 アイシャが中のぬいぐるみを見ると、取れないものではないが一度では絶対取れないように配置されているようだった。

(上手く操作できれば三回、下手をすると二度と取れないようになりそうです)

 なかなか良くわかった配置になっていると考えたアイシャは、「私が取りましょうか」とアニエスに尋ねる。

「ううん、僕がやる」

 アニエスはそう言って断ると、ズボンのポケットからアニエスの手の平くらいの小さなカード端末を取り出すと、表面に表示されたアプリからアニエスのお小遣いが入った決済用のアプリを起動してユーフォ―キャッチャーの読み取り機に(かざ)す。

 カード端末からシャランと決済音が鳴ると、操作パネルの横に残りプレイ回数五回が表示された。

「一回で取れたら凄いよね」

「そうですね、頑張ってください」

 一回では絶対に取れないとわかっていたが、あえてアニエスの気分を害することもないだろうと考えて黙っておくことにした。

 アニエスが『→』のボタンを押しながら動き出したクレーンと一緒に右へと移動し、ぬいぐるみの丁度真ん中辺りでパッとボタンから手を放す。

 それから一度台の横へ回って奥行きを確かめ操作パネルに戻ってくると、『↑』のボタンを暫く押してパッと手を放す。

「ちょっと行き過ぎたかも!」

 アニエスが言うようにクレーンはぬいぐるみの少し向こう側に着地して、少しぬいぐるみを揺らしただけでスタート位置に戻ってくる。

(狙いは悪くなかったのですが。奥に行くときはボタンを離してからすぐ止まらずに、少しだけ動く様に設定されているようですね)

 アイシャはボタンを話してからクレーンが止まるまでの間に少しだけタイムラグがある事を見抜いたが、自分がそれを忠告してしまうのは無粋(ぶすい)だろうと考えて言わないことにする。

「次は取るぞ」

 アニエスは気合いを入れなおすと再びボタンを操作する。

 結局アニエスは五回チャレンジして、ぬいぐるみは最初の位置から少しだけ斜めに角度を変えただけだった。

(もう取れないという事は無いですが、五回かけて位置をずらさないと落ちてはきませんね)

 アイシャはぬいぐるみの位置を確認して取れるまでの手順を予測していると、悔しそうにしていたアニエスもぬいぐるみをジッと見つめた後にアイシャを振り向いた。

「もう一回やっていい?」

 珍しく見せる悔しそうな顔に、「私が取りましょうか」という言葉が喉まで出掛かった。しかしアイシャはそれをグッと飲み込んでコクリと頷いた。

「アニエス様のお小遣いですから、好きなように使って良いんですよ」

「ありがとう、アイシャさん!」

 嬉しそうなアニエスの顔に笑顔で答えながら、残念だけど今日は取れないだろうと心の中でアニエスに謝罪する。

 アイシャの予想通り、アニエスの通算六回目のチャレンジで動いたぬいぐるみは、アイシャでも絶対取れない位置へとずれてしまう。

 それから残りの四回で多少ぬいぐるみを動かせたものの、アニエスはぬいぐるみを取ることはできなかった。

「けっこう動かせたんだけどなぁ」

「残念でしたね」

 しょんぼりしたアニエスの背中にアイシャが手を添えて慰めていると、ユーフォ―キャッチャーの台の脇から半そでの赤いスタッフシャツを着た若い男性店員が顔を出した。

(この男性店員は、もしかすると……)

 アイシャは男性店員の顔を見て、少し怪訝な顔をする。

「うーん、残念だったね。でも、もしもう一回チャレンジしてくれるなら、ちょっとだけおまけしてあげますよ?」

 そう言って店員は腰からぶら下げていた鍵の束を手繰(たぐ)ってユーフォ―キャッチャーのガラス戸を開き、ぬいぐるみの位置を少しだけ動かすと再びガラス戸を閉じた。

(少し難しいですが、よほどひどい失敗をしない限り着実に落とせそうな位置ですね。それでも三回くらいは必要ですが)

 アイシャがぬいぐるみの位置を分析していると、アニエスがどうしようか悩みつつアイシャの顔を伺う。

「時間ならまだ大丈夫ですよ」

 そう言ってアイシャは微笑みながらひとつ頷いた。

「やります!」

「ありがとうございます、がんばってください!」

 アニエスの言葉に男性店員は満面の笑顔で答える。

「今度は手前の左側の足をグッと押し込むような位置で動かしてみてください」

 アニエスが三度目の決済をすると、男性定員はアニエスが操作する前にアドバイスをしてくれた。

(攻略法を教えてくれるの?)

 アニエスが頷いて『→』のボタンを操作する。

 アイシャが意外に思いながら見守っていると、さらに四回かけて良い位置に移動させたぬいぐるみが、最後の一回、通算十五回目でゴソリとポケットに落ちてきた。

「おめでとうございます!」

「ありがとうございます!」

 男性店員が台の下の取り出し口を押し開き、アニエスがぬいぐるみを取り出すと意気投合したように二人は笑顔でアイシャを振り返った。

「アイシャさん、取れたよ!」

「おめでとうございます、アニエス様」

 アイシャも笑顔でアニエスの偉業を称えると、アニエスはぬいぐるみをアイシャに差し出した。

「これ、アイシャさんにプレゼント」

「えっ?」

「アイシャさん、この子好きって言ってたから」

「私の、ために?」

 突然の申し出にアイシャは戸惑っていたが、二人の事を見守っていた男性店員はうんうんと頷いて「小さくても男の子ですね」と笑顔を見せる。

「もし貴女に取らせていたら、僕は止めに入らないといけなかったんですけど。お客様は自分で頑張っていたので応援したくなったんです」

 そう言って男性店員が指さした先には一枚の張り紙があった。


『サイボーグ、アンドロイドのご利用はご遠慮ください。

 見つけた場合は景品を返品していただき、プレイ料金の返金はいたしません』


「気づいていらしたのですか」

「僕もそうなので」

 男性店員は笑顔でそう言いながら、またガラス戸を開けて今度は黄色いモンスターのぬいぐるみをセットする。

「でもこちらのお客様は一度も貴女に頼らずにご自分で取ろうとしていらしたので、ぜひ助けてあげたくなったんです。それに小さくても男の子ですからね。彼女にカッコいい所見せたいですよね」

 男性店員がアニエスに向かって片目を瞑ってウィンクを投げると、アニエスは顔を赤くして照れてしまう。

「いえ、私は使用人ですから」

 アイシャが眉を下げて否定するが、男性店員はうんうんと何やら一人納得したように頷くと「ご利用ありがとうございました」と言って店の奥へと消えていった。

「アイシャさん、嬉しくなかった?」

「いえ、とても嬉しいです。ありがとうございます、アニエス様」

 心配そうに見つめるアニエスに笑顔で答えると、抱えたぬいぐるみの顔に頬ずりする。

 その様子にアニエスも嬉しそうに笑顔になった。

「そろそろ時間ですので参りましょうか」

「うん、行こう」

 そうして二人は、まだランチタイムの人が行き交う商店街を、はぐれない様に手を繋いで歩いて行った。

ゲームセンターで何度やっても取れないでいると、店員さんが助けに来てくれます。

というわけで、元ネタとしては実体験です。

登場人物はこんなに可愛くないですけど。

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