7.運命が変わる予感。
よろしくお願いします!
帰還!!
マッマのワールドから現実世界へと舞い戻った俺を迎えたのは、辺り一面に広がる緑....あー、やっぱりなんかこっちのが本家って感じがして落ち着くな。マッマのワールドで俺が生成した森も、確かに同じような雰囲気ではあったけど、それでも本物と比べてしまえば劣っているとはっきりわかるわ。
これからは...そうだな。しっかりと周りのことも記憶していこう、そうしよう。純粋に、今回あっちで森を生成してみたときにも思ったことだが、あんまり意識してみていなかったところっていうのは曖昧になっちゃうんだよな。そういうのを取りこぼさないように....もっとも、ここが俺の故郷な訳だし、どっかでこれを生成するようなことは起こりえないだろうけどな!がはは!
『おかえり。あれ?お前の愛しのマッマは?』
「うるさ...うっせ、腐れ老木人は黙ってろや」
『久しぶりのソレ。ラブラブマッマの前で清楚ぶってるのもいいけど、やっぱりそっちのが落ち着くのぉ』
はいー、出ました。コイツ自分で口調治せとか言っておきながら、なんなんすかね。やっぱりボケてるんすかね、昨日言ったこと覚えてましゅか~おじいちゃーん~。あと、お前何勝手にマッマ呼びしてんだァ?死にたいんならそう言えよ。
...というか、今更だけど、本当にコイツなんなんだ?他の木は特に語り掛けてきたりしないのに、なんでコイツだけ自意識があるんだ?しかもマッマと知り合いみたいだし、ますますわけわからん。ただの木ではないのは分かるが、マッマと違ってそんなすごそうな神聖オーラ出してるわけでもないし、後光がでてるわけでもない。う~ん....まぁ、あんまりコイツのことで悩むのも癪なので、放置放置。無視に限るわ。
『わしの正体、知りたい?』
「...はぁ?」
『いや、今そんな顔してたからのぉ。単純に、マッマがいないんならいってもかまわんよ?今はまだ向こうで収縮作業してるんじゃろうし』
...コイツ、実は俺の考え読んでる?確かに、何度か俺の心の声に割り込んだりして来てたが....まぁ最初の会話の感じ、口調とかは分からないけど、どんな感情を抱いてるとかがわかったりするのかな。...はぁ~、その読心スキルよこせや老木ゥ!お前が持ってても何の役にも立たんやろがいッ!!あとマッマって呼ぶな!!
つーか、コイツまじで何者だ?なんでマッマが収縮作業してるって、知ってるんだ?”原初の”創造魔法【精霊領域】は、こことは異なる次元に創り出した一種の仮想世界のようなものだ。そのため、一度開いたら、勝手に崩壊することはない代わりに、収縮させないと、永遠に残り続けてしまうのだ。これが残ってると、再度【精霊領域】を使用した時に、そこにアクセスすることになってしまう。まぁ、それは別にデメリットではないと思うのだが....今回は、俺とマッマで適当に遊んだだけだから、これから先、何かあった時に使用するのに備えて、今回のは消してしまおうとなったのだ。
確か【精霊領域】は、今では3人しか使えないはず。俺も使えるようになった(らしい)から4人だとしても...コイツがその一人に該当するのか?じゃなければ、収縮作業なんて、内実を知っているなんてことありえないだろう。
「聞きたいんだけど、お前って【精霊領域】使えるの?」
『いや?わし、今は使えんのぉ』
「はー、使えなッ!!別にお前の正体なんてくっそどうでもええわ」
結局使えないのかYo!!まぁ、実際マッマと一緒にいたわけなんだし、別に知ってても何らおかしな話ではないか。知ってるのと、できるのは大きく違うことだし。...そもそも、コイツ魔法使えるんかね?
『まぁ、わしの話を聞けって。これ、めっちゃ大事な話。わしはお前に――っておっと、もう帰ってきたのか。いやぁ、じっくり話す暇ないのぉ。寂しい?わし、モテモテでごめんね!』
「...はぁ、いい加減燃やしたほうがいいんでしょうか。シャナちゃんの教育にも悪そうですし....」
『ちょ、タンマタンマ!わし、人畜無害の老木じゃよ!?』
「人畜無害かどうかは....私が決めますので」
『ぎゃああああああ』
憐れ、腐れ老木人はさすがにイラッとしたマッマに燃やされた。いいぞマッマ、もっとやれ。やっぱ躾に一番効くのは痛みだとおもうんすよォ...。
というかマッマのSっ気が垣間見えた気がした。聖母神マッマ、S属性持ち――最高かな?マッマに罵倒されたらパー百で興奮するわ!最高です!ありがとうございます!
「さて、シャナちゃん。この燃えカスは置いておいて、おうちに帰ってママとお昼寝でもしましょうか」
お、お昼寝ェ!?そんなの、幼稚園生の頃ぶりだぞ...。やだやだもっとマッマと遊ぶのぉ!!お昼寝なんてしたくないぃ!!
「ママがぎゅーってしてあげますね」
一緒にお昼寝しゅるぅ!!
◆
「いいこ、いいこ。...ふふ、ぷにぷにしてて、とっても可愛いです」
大事な愛しい娘の髪を撫でながら、その柔らかな頬を軽く指でつつく。暖かな弾力で、私の指を押し返しながらも、嬉しそうに微笑を浮かべてる姿に、心が癒される。
すー、すーっと寝息をたてながらも、私の左腕にきつくしがみついてくる甘えん坊な姿。起きているときの、少しクールぶっているときも可愛らしいけれど、こうやって無意識下で私に甘えてくれる姿も愛らしい。本当に、ママ冥利につきますね。
...あの人にも、この子をみせてあげたかった。この子のこのかわいらしい姿を見せてあげることができないというのが、ひどく物悲しい。もっとも、あの人も、こうなることは覚悟していたのですけれど。
あの人の話を振られたら、どうしましょうか。この子はきっと優しいから、話を聞いても私の前ではずっと笑顔でいてくれるのでしょう。...悲しむのでしょうか。怒るのでしょうか。でも、わかってほしい。あの人は、あなたのことをとっても愛していて、嫌っているわけないってことを。...それとも、未だに変化を恐れ続けている私を、軽蔑するのでしょうか。....それは、かなり辛いですね。娘に嫌われるのは、死ぬよりもつらいことです。
でも、本当にこの子の才能には驚きました。【夢幻創造】....ふふ、自分で言うのもなんですが、かなりかっこいい名前ではないでしょうか。寝ながら考えただけあって、会心の出来だと思っています。
この特異魔力は、いい意味でも、悪い意味でも、これからこの子の運命を左右することでしょう。もしかしたら、こんなのいらなかった、なんて思う日もくるかもしれません。
でも、できれば、大切にしてほしいものです。きっと、そこにはあの人の想いも詰まっているはずだから。それは、あの人と、私の愛の証でもあるのですから。
...それにしても、自然魔力回復の速度、そして魔力量は実際どれくれくらいなんでしょうか。【精霊領域】内で、どれほど使っても、魔力量が減るのは確認できませんでした。..いや、正確には最初の一回。森を生成するとき、それと、昨日は炎を出した時。あの時は、本当に微量ながらも魔力の減少が確認できました。もっとも、すぐに回復して元通りになっていたわけですけどね。
さて、考えるのは後にして、私も寝ましょうかね。私たち、精霊は睡眠は必要としませんが、娘のこんな愛らしい姿には眠気が誘われてしまいます。....親子って、キスまではしていいんですかね。ちょっと、失礼して――。
『お取込み中失礼するのぉ。』
家の外から...いや、室内から声がする。その声は、何度も聞いたことのある、前任者の声。
予感がする。精霊王である私は、空気の変化、運命の分岐点といったのを、なんとなく漠然とだが感じ取ることができる。
ここが、今日が。
『その子についての、話をしに来た』
たぶん、シャナちゃんの運命を変える日になるのでしょう――。
本当にブックマークとかしてくれてありがとうございます!
次回、序章最終話です!ちょっとだけ長くなるかも。その次からは本章に入っていく予定です。