4.マッマは天然ポンコツ。俺はぬいぐるみ。
よろしくおねがいします!
「まず、ひとくくりに魔法と言っても、種類は数えたらきりがないほどありますし、大雑把にジャンルに分けて説明しますね」
マッマは俺を両手で抱きしめながら、俺のあの今思えば結局何聞いてるんだかよく分からない質問から、俺の本当に聞きたいことを読み取り、優しく、丁寧に教えてくれる。うちのマッマが聖母すぎて辛い。未だ見ぬパッパに嫉妬するレベルで辛い。
「大雑把にメジャーなジャンルで言うと、火、風、地、水、聖、闇といった具合ですかね。火は風に強く、風は地に強く、地は水に強く、水は火に強い。じゃんけんの一本手が増えた感じだと思って貰えたらいいです。聖と闇はお互い有利に働きます」
「光はないの?」
「えっと...あることにはあるんですけどね....。ただ....んー、さっきも言った通り、魔法っていうのは種類が無尽蔵にあって、その主な理由としては、魔法を勝手に皆が作っちゃうんですよね。それで、光魔法っていうのは扱いが非常に難しい分野で、それを極めているのはたった一家しかないんです。しかも、そこがその内容を門外不出にしちゃってるから、新しい使い手が現れない限りは光魔法というのは世には出てこないでしょう」
はえー、よく分からんけど、使い手の想像力、技術力にゆだねられるってことかな?マッマ、任せなさい、たぶんきっと俺の秘められし才能が....!
「あら、これからやってみせてくれるんですか?ふふ、そうですね。では、ここでやってみましょうか。でも、これは非常に危険なので、絶対にふざけてやったりしてはいけませんよ。
まず、魔法を使うにはイメージをする必要があります。火だとしたら、燃え盛る炎を。水だとしたら、荒々しく流れる水を。といった具合にです。やってみましょう」
「う、うん。やってみるね」
女の子演技も板についてきたな。するっと出てきて今一瞬ビビったぞ。こんなすぐ慣れるもんなんですかね。まぁ、一人称は俺ですけど。
さて、イメージイメージ...。燃え盛る炎。それは辺りを明るく照らし、しかしそれは近づくもの全てを燃やし尽くしてしまう劫火。荒々しく流れる水。それは命の源。しかし時として、人をも喰らい、飲み込む流麗なりし静謐。
「イメージできましたか?あ、返事はしなくていいですよ。集中が途切れてしまっては意味がありませんので。そのまま、イメージしたまま続きを聞いてください」
はーい。やっぱマッマの美声で癒されりゅ~。あんたのそのハートフルボイスで俺の心は激しく燃え盛るファイアー。荒々しく流れるウォーター気分よ!
「それでは...えーっと...なんていうんですかね。この....えいっってやってください」
...。うっそだろお前。まさかここまで理想的聖母ムーブして、ここで突如としてポンコツ化!?最高かよ!ここまでそんな俺の心をひいちゃう!?はー、やだやだ。思春期の娘を誑かすとか魔性のマッマ。ありがとうございます!いいぞ、もっとやれ!
「うーん、説明難しいですね。ちょっと、やってみせるので、真似してみてください」
そういうとマッマは手から炎を出す。
「こういう感じです」
????????どういう感じ?今俺の眼には何の予備動作も無しに、ただマッマの手の上に炎が出たようにしか見えなかったんだが?こういう風にやれってのは過程も含めて教えるものなんだよマッマ。結果だけじゃわからんのや。
まぁ、かわいいからよしっ!
というか、そもそもこれ魔法ってどんな原理なんだろうか。イメージしたものを、投影してる?何に?仮称:魔力に?ということはそもそもその投影先というものを感じ取ることが必要なんじゃないだろうか。多分マッマは天才タイプだからそういうのとか感覚なんだろうな。
えーっと、魔力魔力.....お、これかな?身体を血の巡りとともに、なにかが巡っているのを感じる。腹部を起点として、全身を通って、また腹部に返ってくる見えない水のような流れ。これを、掌の上に、抽出?して....
おー、できた。今はただの仮称:魔力が手の上に顕在している感じ。白色で....なんかめっちゃうねうねしてて気持ち悪いなコレ。しかもなんか手がネバネバしてくるのを感じる。実際にネバネバしてるわけじゃないから、これは多分仮称:魔力によって俺のイメージが侵食されてる?それとも無意識下での俺ですら把握してない俺の仮称:魔力のイメージが投影されてるのか?
「あら、あなたの魔力、おもしろい形状をしていますね。これは....よくわからないですね。ただ、あなたは私の娘ですので....おそらく創造系....ということでしょうか?うーん....」
マッマでも分からないみたい。俺の魔力ってそんな特殊なん?あ、あと仮称:魔力が正式に魔力に命名されました。ありがとう、マッマ!
というか、私の娘だから創造系って....マッマも創造系ってことか?なぁんだ、やっぱり神で合ってるじゃないか!俺のシックスセンスが冴え過ぎて自分が怖いぜ...!というかそのボディで神じゃないわけないんだよなぁ。今もずっと押し付けていてくれる。ありがとうございます!集中結構乱れてるけど!
「よくわからないので放置しときましょうか」
放置しないで!マッマ放置しないで!この俺のネバネバも愛して!!
...んー、創造系っていうことは、何かを生み出すことに長けている魔力って解釈でいいのかな。っていうことはここで炎を生み出そうとすれば炎はでるんか?
炎よでろー!!カム着火インフェルノォォォ!!!!
....出ないっすね。やっぱ想像だけで創造は無理があるって。うーん、マッマは感覚派だし、どうするかなぁ...。もういい、こうなりゃやけくそだ!
「ふぁいあー...おあっ」
「おお、さすが私の娘ですね。えへへ、ママ誇らしいです」
俺もあんたがママで誇らしいよ。
というかやけくそで言ったら出たぞ....ははーん?これさては口に出して創造するタイプだなぁ?
「ママ、もっとやってみたい!」
「~~♡かわ....でもね、もう今日はやめておきましょう。日が暮れてきましたよ」
まじ?...本当だ!マッマの後光でずっと辺り明るいからまだ昼だと思ってたわ!もう空赤いじゃん!
時間の流れって早いっすねぇ。マッマと会うまでは無性に長く感じていたのに、マッマと会ってからは本当に一瞬で時間が過ぎたな。はぁ~。マッマにぬいぐるみみたいにずっと抱きしめられてるけど、全然嫌にならないな。むしろ、もっと抱いてって感じ。
「ママね、本当にあなたと会えてうれしいんです。今日生まれてくるとは思ってなかったので、歓迎パーティーの準備はまだできていませんが、実はプレゼントはすでにラッピングしておいたんです。サプライズで渡そうと思ってるんですよ」
サプライズの事前告知を受けてしまった...。さてはマッマ、天然入ってるな?本当にマッマが可愛すぎて辛い。
「お風呂は沸かしておきました。あなたがお風呂に入っている間にご飯を作ってしまおうと思っているんです。なにか、リクエストはありますか?ママが、腕によりをかけて作って見せますよ」
そういって、俺に微笑んで見せるマッマ。マッマの手料理....こんな聖母のような外見なんだ、きっとめちゃくちゃ料理上手なんだろうなぁ。うーん....正直俺は好き嫌いするタイプじゃないから、なんでもいけるんだけど...。まぁ、せっかくだし、リクエストしてみようかな。
「じゃあ、シチューが食べたい」
「はい、シチューですね。わかりました。とびっきりおいしいのを作って見せますよ。
そういえば、これから寝泊まりする家は、ママが建ててみたんです。気に入ってくれたらうれしいです」
マッマ、建設家でもあったのか...。マッマが多彩すぎてまじ神すぎて聖母。やべ、可愛すぎて脳内ショートして文法がカタストロフしてしまった...。
『あれ?今回わしに一回も触れて無くない?いや、拗ね取ったのわしじゃけど....あれ?お別れの挨拶も無しってまじ?』
ちなみに、マッマの作ったログハウスは職人並だった。
今日はもう更新しません。明日のお昼とかに更新できるかな....できたらいいな