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桂花乱れるティル・ルナ・ローグ  ~蛙、異世界に立つ〜  作者: ふぐりり
魁蟾妖、異世界に坐すの巻
96/156

魁蟾妖と団子と呪い

飯テロ回?

 この団子.....毒じゃねぇよな........


  婆さん団子を貰った後、俺は少し離れた見晴らしが良い場所まで飛んできた。高台と言うか小さい峰というか。ミアズマント達方はかなり離れてるけど、眼前に【魔力感知】を集中させれば全然見える距離だ。


 .......


 ggu~........


 俺は団子を前に、うんうん唸っていた。


 ggu.....


 駄目だ、何で婆さんが団子をくれたのかが分からん。勢いで持ってきたけど、団子を受け取るかどうかなんて婆さんにゃ分かるわけがない。

 これがもし毒で、これで俺を殺そうとでも考えていたとして、だとしたらあそこで婆さんが待ち構えてたのは何故なんだ?明らかに壺の中に俺がいるって分かってたよな?寝てる間にでも口に突っ込めば良かったんじゃ?




 目の前の白い団子は、実に美味そうであった。しっとりとしていてモチモチしていて、よくよく嗅げば笹のような匂いがする。手に持ってみればまだ温かい。作り立てだ。



 そもそもとして、俺に毒が効くのかどうかすら分からん。俺は経験値を得る為に、大体のモンスターは食ってる。つまり死体を食ってるのだ、新鮮だけど。でも偶には腐ってる時もあるし、精霊野郎みたいな料理の技術はない。どう見ても毒入りモンスも、背に腹は変えられずに食ったこともある。


 おたまじゃくしから最初に陸に上がった直後に至っては主食虫だったわ。それも蝶やハチならまだいい方で、大抵は死体に群がる蝿や芋虫だったわ。味覚や嗅覚が蛙仕様になってたから思ってたより食えたけど。


 

 まぁとにかく、動物のなら大抵の毒は食ってるわけだ。......植物の毒は食ったことねぇな。というか毒団子なら十中八九毒は植物から取ってきてるだろ。でもなぁ......



 団子を1つ手に取り、半分に割ってみる。中には笹色のアンコっぽいものがぎっしり詰まっていた。久しぶりの、人間の手が加わった食べ物に、生唾が溢れてくる。


 注意深く嗅いでみると、ほのかに甘い香りと、強烈な瘴気の臭いが漂ってきた。本能は、嫌悪感を示さない。瘴気もこの体なら平気ってことか?




 .......


 ggu~........


 ...................


 

 gguggu~.........




 ええぃ!!貰ったもん捨てられるか!!食ってしまえ!!



 自棄(ヤケ)になり、団子を1つ、口に突っ込む。



 団子は想像していたより何倍も旨かった。口の中にしっとりとした甘味が広がり、柔らかい香りが鼻先へと抜けていく。口当たりは優しく、ほんのりとした温かさは安心感をくれる。


 

 俺は雷が落ちたかのような衝撃を受けた。団子とはこんなにも旨かったのかと。夢中になってガツガツと団子を口に詰め込んでいく。


 ほぼ前世ぶりの人間の食べ物に、軽く感動して涙が出てきた。ガキは貧乏だったし、何より俺にはペットフード的な奴しか出さなかった。精霊野郎は人間の料理をしてくれたが素材が素材だったし、調味料とかはなかった。それなり旨かったから多分料理は上手だったんだろうが、環境や食材が致命的に悪かった。


 俺は無我夢中で団子を味わい続けた。


 あぁ.....甘ぇ.......



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


 あ、あら?もうなくなってる?


 あ”ぁ”〜...............もっと味わって食えば良かったなぁ........



 気づけば、団子は既になくなっていた。ひっくり返り、星空を仰ぎながらぼんやり考える。


 基本的に俺、いつも腹一分か腹二分だから、余計に甘味が深く深く染み渡った。


 一気にガッツいたから色々後悔してるけど、それでもまぁ満足だった。





 ふー.........よっしゃ!ミアズマント達のところで暮らそう!!





 単純だけど、それくらい甘味にショックを受けたってことだ。今までは「なんとなく」でフラフラ連いてきたけど、本格的にそこで暮らそう!!



 女神野郎ぶん殴るって言ってたろって?


 まぁ、それはそれだ。それはその内やるから......あ、ミアズマント達のところから日帰り修行しよう。


 そうしよう、それがいい!


 

 決めるな否や、直ぐに俺は飛び出し.......やっぱいいや、もうちょい余韻に浸らせて。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 余韻浸らなきゃ良かったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!



 ハッキリ言おう、ミアズマント達見失った.........!!


 あぁんもう、あそこで寝落ちしちゃったから置いていかれたわ。



 元々ミアズマント達がいたであろう場所を中心に、四方八方に飛び回って探し回る。


 でも何故か見当たらない。瘴気って魔力的にかなり目立つモノなんだが、それが全く見当たらない。というかそもそも、俺が団子を受け取ってからまだ夜開けてないよな!?


 いや東の空は白んで来てるから、ワンチャン起きて出発したのか!?俺そんなに寝たのか!?あいつらそんなに早起きだっけ!?



 駄目だ、闇雲に探しても見つからない。ここはクールに、頭にを使って探すのだ。




 俺は目を閉じる(気分)。そして【魔力感知】の範囲を限界まで広げ、しかしモンスターの反応だけに集中する。

 

 森や山は人間の感覚(つもり)以上にモンスターだらけだ。弱いやつは子供でも踏み潰せそうな奴までいる。


 そしてその中から探すべきは”人間”の反応.....ではない。そんな処理能力俺にはない。探すべきはむしろ”反応のない場所”だ。森や山には満遍なくモンスターが溢れていて、空白の場所なんてない。つまり空白の場所には、ミアズマント達がいる筈だ。

 例えばこの辺とかなぁ!!


 それっぽい場所を見つけ、一目散に飛んでいく。


 しかし行けども行けども、ミアズマントは見つからない。


 

 場所間違えたかと何度も【魔力感知】で確かめてみるが、半日経っても見つからない。



 .......もしかして、俺、団子で何か盛られたか!?

呪い婆さんは一応は感謝の念を持っています。

だからこそ、団子に死に至るような毒や呪いは込めませんでした。

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