サマヨウモノの寄る辺
先ほどは予約投稿の時間を間違えたまま書きかけで投稿してしまいました。
読者の皆様を混乱させてしまったことをここにお詫び申し上げます。
ほうほうの体で逃げ出して、ようやく我らは司のプレッシャーを感じぬところまで来た。
見渡せば、ここはどうやら泉のようだ。魚も住めぬほど小さな泉で、おるのは精々光虫程度なモノ。周囲を茂みや木々が鬱蒼と茂っておって、まるで泉を覆い隠しているかのようだった。
『結局、また貴様に助けられたな。この恩は必ずや返そうぞ。』
話しかけても、蛙は....いや蛙型の魔力は何も返さぬ。目が無いのも相まって、空虚な視線のみを感じた。
『しかし貴様、それは一体どうなっておるのだ?幽霊として蘇ったにしては存在が希薄すぎるが.....』
この魔力塊は今も体を離散させ続けている。先ほどから我が魔力を与えているのだが、それも抵抗どころか、まるで何もないかのようにする抜けてしまう。
『.....もしや貴様、妖霊か?』
そのような存在など、妖霊しかおるまい。奴らは現世に現れたーは良いが、寄る辺もなく消えゆくモノども。転生者が稀にこの状態に陥ると聞く。
魔力塊は愛らしくその首を傾ける。自分ではわかっておらぬようだ。まぁ生前のあの蛙も妖霊など分からんだろう。
『しかしそれなら我の注いだ魔力は完全に無駄であったな。何か現世に留まれる器があれば良いのだが.....』
奴の本来の肉体は回収など到底望めぬ。生前と同じ蛙が居れば良いのだが........
......いや、器はなくとも良いやもしれん。我は祈るような気持ちで握り締めていた紙を読んだ。
『背景、コレを読んでいるということは、私はもう、あなたには会うことが出来なくなっているでしょう。それが死による物でないことを、切に願います。
私は”サニディン”、命絞り取る瘴気を放つ呪瘴人です。それがあなたの命を蝕んでいることを知った私は、それを治すため【ユーシャメレィ】の街へ向かいました。
ここでは神聖なる”女神様の礫”で全ての病を癒してくれるのですが、その代わりに私のような病を振り撒く者をとても嫌うのです。恐らく私は街を無事に出ることは出来ないでしょう。
それでも、私は貴方を救いたかったのです。全てを記す時間がないことを許してください。でも、それほど私にとって貴方は大きい存在だったのです。
最後に、私の全てをあなたに送ります。出来れば受け取って欲しいです。
あなたは強い子。どんな苦境からでも帰ってくる子。独りぼっちに疲れ切っていた私の道標。
あなたの名前は.....レンヌ』
「.......レンヌ」
その言葉を口にした瞬間、目の前が光り出した。蛙が「レンヌ」の名前を受け入れたのだ。




