新年、グィに惑う者達
正月なんだしハジメの人間時代の話するべきだったなーっと、今更ながらに思ってる
グィ南方連峰。魔物が生きれぬ程険しく厳しい環境だが、にも関わらず魔物が多く発生する。彼らは山の中に洞窟を掘り、そこで生活している。つまり南方山脈は見かけよりずっと空洞だらけなのだ。
その上、地下でハジメやマルグリットが散々暴れている。放っておいても、山は崩れただろう。
ーーーーならばその最後の一押しは、過剰すぎるものだった。
神話級と呼ばれるランクが存在する。字の如く神話にも語られるべき力を秘める魔物の属する位階だ。この位階の魔物は惑星をも破壊しかねないので、主神自らが役目と権利を与える事で世界の安寧を保つのだ。マルグリットもその内の一体だった。
マルグリットは噴火を司る大いなる地龍である。かの者は山の創造、海の中から山を盛り上げ大陸を作る役目を承っているのだ。ならばその噴火は、スカスカの山を吹き飛ばす事など実に容易かった。
後に「グィ南方連峰災害」と呼ばれるこの事件は、グィ南方山脈の消失・並びにマントルまで届く大穴が開き、向こう数ヶ月に渡る大寒波を持って収まることとなる。火山灰が太陽を覆い隠したのだ。
ーーーそして都市伝説としてまことしやかにしやかに囁かれるのが、光の柱が立ったと言われるものである。
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ココ..ココは......
何というか、凄まじい眠気や気怠げに覆われている。周りは真っ暗闇.....じゃなくて星空だ。宇宙にいるみたいだ、星空の中にいる、地面は見えない。
俺は...そうだ俺は.....
鈍い頭の中、いろんな事が頭を過ぎる。
そうだ....俺は蛙にされて....それから婆ちゃんを馬鹿にされて.....それで.....
頭がぼんやりするせいだろうか、婆ちゃんの顔を思い出せない。他にも思い出せない顔が沢山ある。でも何故か『精霊野郎』や、今は懐かしき『ガキ』の顔ばかり出てくる。
そうだ....あの野郎......最後に俺を見捨てやがって........
本当のところは分かってる。でも俺があの......//あの.....あのにっくきオタク野郎を助けたなど、認められなかった。認めたくなかった。だから、記憶を捏造した。
あの野郎...許さねぇ......顔を殴るまでくたばることは出来ねぇぜ......
仮初の憎しみに背中を押され、一番大きな星に向かって踠く。何故だか、そこから精霊野郎の声が聞こえるような気がする。
だがいくら踠いても、まるで届かない。空気を掻いてるようで、まるで動けない。
力だ....力が必要だ.....
その時、目指している星の中から、安らかな力を感じた。懐かしき、月の力だ。
もっとだ.....俺にはもっと力がいる......
意志の力のみで、月の力を呼び寄せる。
俺には力が必要だ.....今すぐあの化け物から逃げ出し、あの精霊野郎を殴り飛ばすだけの力が必要だ.....!!!
貪欲に、執念のみの力でソレを呼び寄せ、身に纏う。
今、俺は何故か全身を意識することが出来ない。その空白を月の力が埋めていく。異物感が凄まじい。本能が拒絶している。
でもダメだ.....ココで負けたら二度と戻れねぇ....踏ん張るんだ....!!!!
異物感をも飲み込んで、身に纏って、従えて。その気概で、俺は進んでいく。匍匐前進のように一手一手、確実に進んでいく。
【対象:ハジメ・ササキダの要請を確認しました。】
【肉体の消失を確認しました。】
【癒属性魔力を確認、魔力の質・量・親和性を確認しました。】
【魂・自我・記憶。上記3つの頑強性を確認しました。自己の連続性を認めます。】
【主神:■■■■■へ許諾申請致します......了承されました。】
【対象:ハジメ・ササキダを転生進化致します。なお転生に伴い、前々世の真名が乖離致します。】
【転生に伴い新たなる種族へ変化します。新たなる種族は.....妖霊です。】
マルグリットはアレです。常人ならば病床から起きることすらままならない状態で海○本部崩壊させた白●げみたいなもんです。アレより朦朧としてるけど。




