サスラウモノとサマヨウモノ
お待たせいたしました。本日より第4章の始まりです。
今更かもしれませんが、タイトルに「咆虎蛙」とつかない場合は視点が主人公ではないです
雨降り頻る山中、そのモノは突然襲いかかってきた。同胞を多く喰い散らかしている気配がする。より高みを目指そうとしているのか、差もなくば我々を恨んでいるのか。稚拙なその攻めから見て恐らく後者だが、何処か腑に落ちない。
面白い。
烏滸がましい物言いだが、我は強い。積み上げた技量ではなく組み上げられた技巧によるものなのが不甲斐ないが、並の魔物など相手にならない。魔物の側もそれを肌で感じ取り、我を避ける。
だが、今眼前で喉を鳴らすそのモノは我に対し、怯えではなく不快をぶつけて来た。怯え自体は随所に見えるので、理性か強き情動にてそれを制したのだろう。我の知らぬ種族であるからして、恐らく群れる性の魔物でもあるまい。人や我らに準ずる精神を持っていると見てまず間違い無いだろう。
そのモノの声が我を殴る。精神体を殴りつけるとは侮れん。覚束ぬ足取りでそのモノの居所に当たりをつけ乾風を放つ。苦悶を訴える蛙の泣き声が聞こえる。泣き声に向けて辻斬りの竜巻を放つ。
そのモノも負けじと爆風を放つ。我は制したが、今度は的確に鉄砲水を放ちおった。だがただの水では我の体をすり抜ける。回復した視界が、そのモノの驚愕の表情を捉える。
やはりチグハグだ。
動揺するそのモノに突風をぶつけながら考える。奴は恐らく我ら我々について何も知らぬのだろう。
慌てるそのモノの共鳴に耳を塞ぎながら考える。ならば奴は何故同胞を襲うのか。偏見などでここまで不快感を示せるのなら、奴は何処かで人間至上の考えに触れてると考えられる。ここでは群れぬ獣は子育てをしない。卵生である蛙ならば尚更だ。親や仲間の仇というのは考えにくい。
とここで我は思考を中断せざるを得なかった。我が肉体が弾け飛び出したのだ。思索に夢中になるあまり、干渉を防げなかった。堪らなく痛く堪らなく苦しい。
しかし我は歓喜を隠せなかった。何だこの力は!?格上の我にこのようなことが出来る蛙など聞いたことがない。奴はユニークモンスターと考えて良いだろう。ああ、奴をもっと知りたい!!
歓喜の情動を駆使して、弾ける肉体を束ね奴に向ける。空気の弾丸を一身に受け、そのモノの手足を幾つも吹き飛ばした。奴は苦しみ絶叫しのたうち回るが、死ぬ気配はない。
さぁ!!もっと試合おう!!もっと知り合おうではないか!!!
だが水が刺された。弾け飛んだ空気の弾丸に、山の大地の方が耐えられなかった。雨や奴の水で泥濘んでもいたのが拍車をかけた。地響きと共に、山が瞬く間に崩れていく。土砂崩れだ!!
我は常に浮いている故問題ないが、奴は違う。見れば、その変わった虎柄が土に埋もれようとしていた。いけない!!
我は奴の下に急行し、その身を庇う。あぁ、我に癒しの力がないのが恨めしい.....
奴....虎柄の彼は我に驚愕の瞳を見せる。「何故、オレを助けたのだ?」と言わんばかりだ。そんなモノ決まっている。貴様のような未知なる面白いモノ、みすみす亡くせるか!!!
全快の我なら土砂崩れを弾くなど容易い。しかし身の大半が弾け飛んだ今では、厚くし盾となるのが精一杯だ。我と彼はすぐさま土に埋れていき、我らの視界と意識は闇に沈んでいった。
Q:休載中何やってたの?
A:異世界のんびり農家とか今更鬼滅とか宝石の国とか一気見してた。




