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桂花乱れるティル・ルナ・ローグ  ~蛙、異世界に立つ〜  作者: ふぐりり
泥淵蛙、異世界を歩くの巻
52/156

泥淵蛙とせめてもの感謝

 街の第一印象は「異世界風テーマパーク」だった。建物とか地面の作りは異世界風、要するに「中世ヨーロッパ」って言われて思い浮かべるような奴だけど、人々は違う。雰囲気こそあったが服は現代日本っぽいところがあるし、身につけてる道具もキテレツな形をしているがどことなく現代っぽい。少なくとも中世ヨーロッパ風ではない。

 そして人間以外の人種もいた。しかもいわゆる獣人とか、ドワーフとかそう言うベタな奴だけじゃない。腕が4本あるやつとか、頭が2つあるとか、足が3本とか、いろんな種族がいた。


 まぁ、ガキと衛兵がスタスタ歩くもんだからあんまりよく見れなかったけど。すぐにどこかの建物に着くと、奥の部屋に通された。話はもともと通してあった様で、出迎えすらあった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「GWEH.....TW$L'M{%{Q.........」


 で、登録とかあったわけだがその辺は思い切ってバッサリカット。言語も文字もわからん俺じゃどうにもならんしな。途中魔力を機械に吸い取られたりもしたが、さすがにそこで暴れるほど見境なしでも勇敢でもない。ガキもすんなり渡したし、取り敢えずは安全なものなんだろうと考えた。

 結果、俺の背中に変な模様が描きこまれた。魔力を込めると青く光り輝く模様であり、同時にガキの手の甲にある同じ模様も光る、と言うもんだ。首輪とかの代わりらしい。


「&L+B"....NT$#&0"YHh242......B$JP#N......」


 で、今はボロ宿で一室借りてる。そこでガキは何度も小袋をひっくり返してはため息を吐いていた。小袋の中身は....多分これ、お金だな、それも硬貨。ガキは何回も硬貨....変わった模様のドーナツ型丸石を山にしては、少しづつ山を切り崩してる。最後に残るのは僅かばかりの量。登録の時にかなり持ってかれてたしな。それこそガキが顔引きつらせるぐらい。


「?G#"% ..... "G+WSB*Q.....f$#+gq........$#G#B.....」


 と、ここで俺に気づいたガキが、金について説明してくる。いや、流石に金ぐらいは分かる........あーでも普通の蛙は金なんて分からないか。


 ここで理解を示してもいいが......ぶっちゃけ説明が面倒だ。「金を理解した」まではいい。だが普通の蛙が金をすんなり理解できるとは思えんし、下手したら俺の転生の部分まで説明しなきゃいけないだろう。あれは俺自身にも謎な部分が多いし、泥人形劇だけで説明するのは到底無理だ。俺としては【瘴病】を治すためにも出来るだけ旅路は急ぎたいし、「金がないと困る」と言う部分だけ理解したフリをするのが一番楽だろう。


「gwq.....2g、 "G"H$"BB+B*".......」


 うん、ガキも取り敢えずはこれでいいらしい。なんかぐったりしてるけど。すまんな。

......これは本格的に言語の勉強考えるか?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「AGR#、J"$NW+Q>>.B$NW.....」


「%NLESHB$L#NW。$NW> LOET A`」


 いくら金がないとは言っても、買い物をしない事には旅も出来ない。そう言わんばかりの表情でガキは商店街.....多分商店街に向かった。その先々でガキは店主相手に....多分値切りをしている。苦い顔をされることも多々あったが、それでも必要なものは買い集められたらしい。....まだガキの顔は渋いが。往来の脇で、買ったものを確かめている。


 ガキの買った物の中には、明らかにガキが使えない物.....ペットショップで買った虫とか、小石サイズの温まる石とかが含まれている。どう見ても俺用だ。理由こそ分からんが、俺のために少ない身銭まで切ってくれてるのだ。ここまでされたら、何かお返しをしなくちゃいけない。人間時代俺を育ててくれた婆ちゃんの教えだ。でも今の俺にできることなんて........?アレだ!!




 俺は地面...と言うかタイルの上に飛び降りる。そして泥人形をいくつも生み出し、色々馬鹿なことをやらせる。人形劇だ。


 ヒントは今、通りの反対側で起きているどんちゃん騒ぎだ。名前は忘れたが、目立つ服装の連中が様々な芸を披露してくれている。それの真似事だ。だが人が集まりすぎて、芸そのものはよく見えない。



 だから、せめて俺が真似するのだ。俺がこうして、ガキが笑ってくれるなら。ガキが少しでも気分を紛らわせてくれるなら。せめてこれぐらいの恩返しはさせてくれ。






 人形劇は、とても良い出来とは言えない。不細工な人形が不格好な踊りをしているだけだ。俺が人間時代の頃、婆ちゃん家のテレビで見たビデオを必死に思い出して、真似してるだけだ。


 ガキは最初、俺が何か伝えたいのかと首を傾げていた。でもやがて遠くの芸連中を見つけ、俺がそいつらの真似をしてるのだと気づいた。フッと笑いが溢れた時は俺もつられて笑った。それで集中途切れて人形崩れたけど。


パチパチパチパチパチパチ


 !?突然騒音が鳴り響く。振り返れば、2、3人程度の人が拍手をしていた。俺の人形劇見てたのか?


 そして皆、石の硬貨を1、2枚ガキの足元に投げてから去っていく。それを見て、ガキはとても目を輝かせていた。


あれ?俺そんなつもりじゃなかったんだが?

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