表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桂花乱れるティル・ルナ・ローグ  ~蛙、異世界に立つ〜  作者: ふぐりり
蝌蚪、異世界に立つ?の巻
5/156

蝌蚪、飢える

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【ペクリム・タドロップ】

 妖精を遠い祖先に持つおたまじゃくし。今やその面影は残っていないが、魔素を貯めることでその力に覚醒する可能性を持つ。また妖精族が使い魔としている事がある。尻尾にエネルギーを貯める為成長がやや遅い。エネルギーを多く持つ為数多の魔物に襲われるが、強大な母に守られている為捕食することは容易ではない。母親から経験値を分け与えられるため成長が極めて速い。このため人族では愛仔の象徴として扱われる。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 あの胸糞悪い録音を聴き終わった後、俺は寝て起きて、池の底を彷徨っていた。何せ腹が減った。満腹値にすれば17/100なのだ。喰われないためにも、クソアマの面殴るためにも、とにかく腹を満たす必要がある。必要がある、んだがなあ.....。オタマって何食うんだよ?蛙なら分かるぞ。蠅や蛆とかだろ?だがオタマの身じゃそんなもの食えないぞ?うーん...オタマとしての本能で食えるものが分からねえかな?でも虫食うとか、人として受け付けねえぞ?


 その日は池の底を彷徨って終わった。途中デカ虫やらデカ魚やらに襲われて逃げ回った。おかげで満腹値が12まで減っちまった。つか、ちょっとやばいかもしれん。今周りはサラサラとした土しか広がっておらず、岩すらまともに見つからない。水草すらないってどういう事だよ。結局尾鰭で苦労して地面に潜って寝た。ぶっちゃけ隠れきれてるかどうか分からなかった。あんまりよく寝れなかった。


 次の日には水草がない理由がわかった。兄弟食ってたのとは別の種類の虫が水草を食い荒らしてた。水草食いながら卵産むキメェ奴だった。デカ魚がそいつ食ってる間に逃げさせてもらった。


 更に次の日。俺は虫を食わなかったことを後悔した。満腹値が4/100まで減っていた。一応じわじわ回復していたHPは10まで回復した。でもなぁ.......今の俺って隠密性0なんだよ。俺が誰か見つけたときには十中十で相手も気づいているわけで。俺の鈍足スピードじゃあ、鑑定したりしながら逃げるなんてほぼ不可能なわけで。今じゃあ俺がまだ喰われてないの、ガリガリに痩せてるから「食うとこ無し」って思われてるんじゃないかって思ってる。


 ついに満腹値が0になった。ちょいちょい遭遇するデカ魚を撒くうちに、遂に切らしたのだ。....あーだめだ。頭がぼんやりしてきた。目も霞んできた。何にも見えねぇ。俺の泳ぎはかつて無いほど弱々しくなってきた。もはや泳ぐというより、波の動きに流されているとでも言うべき有様になっていた。もはや考えることもままならず、俺は池に漂うゴミと化していた。四肢.....じゃなくて尾鰭は全く動かず、口はぽかーと開きっぱで目は半目。...いや半目じゃ無いか。オタマって目蓋ないし。

 あーあ...このままだと喰われても抵抗出来ねえぞ.....。せっかく生きる目標が出来たのになぁ....。あーだめだ。力が入らねえ..。流されてやがる。


 今際の際に周りを少しでも見ておこうと、俺は首....と言うか体を捻った。するとそこは塵が集まっていた。それこそ水が少し濁って見えるほどだった。そしてデカ虫やデカ魚の死体がゴロゴロしていた。


 あぁ、俺もあの中の1つになるのか.....。そんなことをぼんやり考えていると、塵の1つが偶然口に入った。俺は反射的に、塵を飲み込んだ。その瞬間、猛烈な飢餓感を感じた。それと同時に【経験値を1獲得しました】と言う声が聞こえた。


 うお!?びっくりした!!え何?何なの突然!?何か塵食った途端に声聞こえたんだが!?経験値とか言ってたよな?経験値って敵を倒した時に入るもんだろ?ゲームしたことない俺でもそのくらいは分かる。と言うことは俺は何かを倒した?.......もしかしてあの塵か?でも塵みたいな生き物なんて.....あ。もしかしてバクテリアとか微生物って奴か?え?そんなので経験値入るの?と言うかこの飢餓感、中途半端に飯食ったせいで余計に腹が減った時に似てる ...。チッキショーーーー!!!何だよ飯そこら中にあるじゃん!!この塵前からずっと見てたぞ!!食えたのかよ!!ならこんなガリガリになることなかったぞ!!


 俺はそこら中にいる塵どもを喰って喰って喰いまくった。塵1個で満腹値1しか回復しなかったが、回復するだけありがたい。40くらいまで回復したあたりでデカ虫が現れたので俺は逃げた。逃げて満腹値は15くらいまで減ったが、次の日また塵を食えたので問題にならなかった。割としょっちゅうデカ虫が出てくるから50より回復するなんてまずなかったけど。少し離れたところに岩がゴロゴロしていたので、そこの隙間を寝床にした。ガリガリだったので隙間は大きく感じた。

 そして遂にレベルが上がった。Lv.1がLv.2に上がっただけだが、大いなる進歩だ。初めの一歩を踏み出した...泳ぎ出したとも言える。と、同時に【飢餓耐性】なるものを手に入れた。満腹値の減りを減らす耐性スキル出そうだ。これで当分は生きていける。これでようやく、俺は進化するための行動を起こせるようになった。

ちなみに【飢餓耐性】は「満腹値1/3以下の時間」=熟練度で、熟練度を稼ぐほど満腹値の減りが遅くなります

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ