表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
桂花乱れるティル・ルナ・ローグ  ~蛙、異世界に立つ〜  作者: ふぐりり
壺蛙、異世界を観るの巻
16/156

壺蛙と子供と?????

 お待たせいたしました。これより第二章です。前回からおよそ数週間経ったところから物語が始まります。

 また、これよりしばらくサブタイトルは「壺蛙、〜」となります。【ヴァズ・ラネ】の事ですね。「コケイ」とお読みください。

 その小屋は人が住むにはあまりにも見窄らしかった。何しろ「廃棄された馬小屋」なのだから。壁は隙間だらけ、床は藁だらけで照明もガラスもない。住宅建築は須く政府が管理するこの国ではあり得ない光景だった。そもそもこの小屋は林の中にポツンと立っていた。とても人が住んでるとは思えなかった。


 だが小屋には確かに人が一人住んでいた。全体的に見窄らしいその人....子供は、水瓶に写った自分の姿を確認していた。痩せていて背も低く、全体的にくすんでいる。色褪せた青いオーバーオールを履き、シミだらけのほつれだらけなシャツを着て、ボサボサな伸び放題の髪を、これまた色褪せたキャスケット帽に収める。整った顔立ちは汚れだらけだ。髪が長いので一見女性にも見えるが、薄らとついた筋肉はどちらかと言うと男性らしい。次に発した声は男女どちらともつかない声だった。


 「うし!今日も頑張るぞ!」


 そう言うと子供は手袋とマフラーを身に付けた。.....いや、鍛治士が使うような厚手袋をつけ、布の切れ端を首にまくと引き戸を開け外に出る。まだようやく空が白んできた位の時間帯で、朝靄が出ている。子供は盛土に立てた棒....墓標を拝み、礼をすると意気揚々と靄の中に消えていった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 人はか弱い生き物だ。それがその妙齢の女性の意見である。目を離せば瞬く間に死んでしまう。だからキチンと手の中に収めなければならない。それが出来るだけの力も、権力も、時間さえもが(・・・・・・)彼女にはあるのだから。


 しかしそれらは今の彼女にはなかった。彼女は今、泉に無気力に浮いていた。泉は地下にあるようで、大樹の根らしきものがいくつも天井から泉に伸びていていた。光源らしきものは何も見当たらないが、不思議と明るく見える。


 表情を伺うことは出来ない。何せ大量の蛆が顔を覆っていたからだ。それもただの蛆ではない。黒く紺色のオーラを出しながらも透き通っており、彼女の顔を貪っていた。オマケにこの蛆は彼女の眼窟から湧いているようだった。痛々しい事この上ない。


 だが彼女は....彼女の仕草には怯えや恐怖は見られない。彼女は時折水辺から上がったり、泉の底へ泳いでみたりしているが、その動きは全く自然体だ。暇を持て余した人間のように見える。事実、彼女は暇を持て余していた。彼女にとって、この程度の呪い(・・・・・・)は必ず治るモノでしかないからだ。…療養は必要だが。


 彼女は今、泉から上がり芝を裸足で歩いている。黒く、シンプルながらも趣向の凝らされた服は、泉から上がったばかりだと言うのに全く濡れていなかった。彼女はそのまま大樹の根に寄りかかり、身を預ける。その仕草はまるで恋い焦がれる乙女のそれだった。


「■■■■■■■■■.......。」


 彼女は何か呟く。だがそれは黒蛆に覆われた顔からはハッキリとは聞き取ることは出来ない。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 俺は今、荒野を彷徨っていた。「見かけたことのない妖精を殲滅する」為に無鉄砲に飛び出した過去の俺を恨んでいる。


 何で荒野に居るんだって?俺が生まれた湖は森の中にあった。その森の北には山脈が広がっており、その向こうに荒野が広がっていたのだ。当時は雨季だったらしく、俺は荒野を大河だと勘違いして飛び込んだのだ。そのまま流れに乗っていく内に雨季が終わってしまい、荒野に哀れな蛙が一匹残されたという訳だ。ちなみに山脈超えは苦しいだけの詰まらない工程でした。断崖絶壁に穴掘りながら登ったので【地中適性】というスキルを獲得したと明記しておく。


 あぁ畜生.....水が欲しい......。

冒頭の子供はビジュアルは大体旧作のキノです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ