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まるで間違った偶像崇拝のようで

「痛っ」


クロが悲鳴を上げ、シロを睨む姿と彼女は満足した表情を浮かべる。


「申し訳ないっすが。母様呼びは勘弁してもらえないっすか」

「駄目ですか」


少し悲しそうな表情をするアンジェリカにシロはなんとも言えない気持ちになった。


「いや。それに、アンジェリカさんは私たちの母親って言う年齢にも見えないっすし」

「大丈夫よ。こう見えて私は結構な年齢だし、何よりも昔からあなた達のお世話をしていたのだから母親と言っても過言ではないわ」

「過言じゃないっすかね。結構な年齢って言ってるっすけど私たちとそんなに変わらないんじゃないっすか」

「ねぇ。本当に、駄目かしら」


懇願するアンジェリカに、たじたじになるシロ。


(あぁ。これは無理な奴だな)


会話に巻き込まれたくないクロはそんなこと事を思いつつも口を挟まない。


「あの。その」


何か言いたいシロではあるが、アンジェリカの無言の圧力に言葉が続かない。

シロはクロの方を見るがクロは気まずそうに視線を逸らす。

そうして見捨てられたシロが『わかったっす。母様と呼ばせていただくっす』と諦める事で決着した。


「それで、他にも聞きたいことが有るのよね」

「あの後ろのすごい恰好をしている女神について」


ご機嫌でニコニコしていたアンジェリカの纏う空気が変わった。

表情は一切変わっていないのに、クロとシロは凄みとプレッシャーを感じる。


「ちょっと、やばいっすよ」


シロは焦りをみせクロの服を引っ張り止めようとする。


「落ち着け。多分大丈夫だ」

「何の根拠があるんすか」

「神に選ばれた人は記憶を失うと言う事が伝わっている以上、俺たちの前に同じように記憶を失った者が居るはずだ。それが何人いるのかは解らないが、その者達が俺と同じ疑問を持った可能性は少ないと考えている」

「どうなんすかね。確かにあの像を見れば聞いてくる人は居そうっすけど」

「それなら多分、教会側もトラブルを避けるためにあらかじめそう言う事があると言う情報を伝えていると思う」

「あれを見てもですか」


そこには背景にゴゴゴゴゴと言う擬音が付きそうな貫禄を放つアンジェリカが未だに笑み一つ崩さずにいる。


「だといいなぁ」


クロは苦い表情を浮かべる。

二人のやり取りを見ていたと思われるアンジェリカが『はぁ』と短くため息を付く。


「たしかに、そう言う事例の報告は受けているわ。けど、あなた達も教会に属している身なのだからせめて女神様のことは覚えていてほしかったわ」

「すいません」


クロの様子にアンジェリカはため息を付く。


「まぁそんなことを言っても無駄だっていう事は解ってるわ。それよりも女神『フォール』を凄い恰好の女神と言うのはどうなのよ」

「語彙力がないもので」

「仕方がないわね。今回は許します。だけど神装『ナイトプリンセスドレス』は神聖なものだから、すごい恰好とか言ってはだめよ」

「気を付けます。それはそうと、ナイトと言う事は女神『フォール』は夜を司って居るんですか」

「ちょっと待って、そこに突っ込むんすか。普通ドレスの方に突っ込まないっすか」


的外れな部分に突っ込むクロに耐え切れずシロが言う。


「世の中スリングショットって言う泳ぎに適しているのか怪しい水着があったり、ビキニアーマーっていう一体何を守っているのか解らない防具があるんだ。だからビキニをドレスと言うなんて些細なことだろう」


クロは昔を思い出しながら言う。


「いやいや。あの格好で街を歩いたら補導されるっすよ」

「女神が補導って。さっきも言ったけどあの服は神聖なものなのよ。補導どうこう言っているけどね、収穫祭の時には女神『フォール』の格好で練り歩く行事があって貴方も参加してたのよ」


アンジェリカは何を言っているのか解らなような表情でシロを見る。


「ちょっと待ってほしいっす。聞き捨てならぬセリフがあったっす。女神『フォール』の格好で練り歩くっすか」

「えぇ。そうよ」

「それには、自分も参加してたんすか」

「それはそうよ。貴方は教会に属しているのだから当然じゃない」

「ぬぉぉ。あずかり知れぬとこで黒歴史が生まれていたっす」

「黒歴史なんて言わない」


悶えるシロを眉を顰めるアンジェリカ。

そして、面倒ごとはごめんなクロはシロを生暖かい目で見ていた。


「なんすかその表情は。そうだ、先輩も教会に属しているのだからしたっすよね」


そんなクロにシロが噛みついてきた。


「先輩ってクロの事よね。あの行事は皆が女神『フォール』の仮装をする行事だから―――」

「はっ。ざまぁ見やがれっすよ。そんな自分は無関係って表情してるからこんなことになるっす」


(今、アンジェリカさん何かを言いかけて辞めたように見えた)


興奮して暴言を吐くシロより、アンジェリカが気になるクロ。

とうのアンジェリカさんは、シロが吐き出した暴言に一切触れる様子もなく再び笑顔のまま固まっている。


「ふふふ。ごめんなさい。皆が仮装するのは大昔の話で、今は未婚の女性だけが仮装するのだったわ」

「ぬあぁぁぁ。なんなんすか弄ばれたんすか」

「ごめんなさい。反応が面白くてつい」


アンジェリカの非情な一言に絶望するシロ。


(何かがおかしい。からかっているようには見えなかった)


一方のクロはアンジェリカの発言に違和感を感じて困惑している。


「それはそうとシロ。あの暴言は頂けないわね」

「今更っすか。あっ、いやそのえっと。あの時は興奮してたっすから。あの格好はさすがに恥ずかしいっすし。そもそも、教会が破廉恥な恰好をするのはどうかと思うっすよ」


すごみがあるアンジェリカさんに冷や汗が出ているシロは話を逸らそうとした。


(こいつは又、危険球を投げやがった)


クロはシロが地雷を踏んだように見えた。

その証拠と言わんばかりにアンジェリカは三度目の、あの貫禄がある笑顔へと変貌している。


「ヤバ。もしかしてやっちゃったっすか」


不安そうな表情でクロを見てくるシロ。


「どうだろうな」

「助けてくださいっす」

「ざまぁ見やがれだっけ」


悪い表情を浮かべるクロ。


「えっと。ごめんなさいっす」

「そうやって、素直に最初から謝ってればいいものを」

「だって、考えてみてください。あの迫力で迫られたら怖いっすよ」

「よく。本人を前にして言えるな」

「しまった」


恐る恐るアンジェリカの方を見るシロ。


「まぁいいわ。許してあげる。あの格好が恥ずかしいってのは解るから」

「ありがとうございます」


語尾の『っす』も忘れ礼儀正しくお辞儀をするシロに『そこまで怖かったのか』と苦笑するクロ。


「私も含める修道女達からあの格好は教会的には相応しくないから廃止するべきと意見を出したことはあるのよ」

「そうなんすか」

「その時は男性陣からは、伝統的な祭りを廃止するのはとんでもないと言い訳じみた反対意見が上がった上に教皇も継続するべきと言われてね。私たちの意見は却下されたのよ」

「もしかして教皇は」

「かなりのお年を召した男性ね」

「ただのスケ―――痛いっす―――」


シロの発言を遮るようにクロが彼女にチョップをした。


(備えておいてよかった。さすがにこれ以上の失言はヤバいだろう)


「すいません。アン母さん。どうやらシロは興奮しているようなので一度、オハナシをして落ち着かせてきます」

「そのほうがよさそうね。なら、ゆっくりと村を見て回ってきたらどうかしら。私もまだやらないといけない仕事が残っているから、クロ達が村を見て回っている間に済ませておくわ」

「わかりました。それと祭りの件ですが、女神『フォール』に限定せず、人々が好きな恰好に仮装する祭りを提案してみたらどうですか。もし、伝統的な祭りがどうこう言われるのなら、『伝統に則って行うならば未婚の女性だけでなく皆がするべきだ』と言ってやれば良いと思います」

「そうね。機会があったらそう言ってみるわ」


クロは不服そうに口を尖らせているシロの手を取ると足早に教会を後にした。

文章力が欲しいっす。ずいぶん遅くなりましたが次話とうこうです。

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