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第六話 まずはじめに

大分間が空いてしまいました…申し訳ないです。また更新していけたらと思っておりますので良ければ覗いて行って下さいませ (*´ ˘ `*)


夜を明かす前にやる事は沢山あった。2人の前には既に壁が立ちふさがっていた。


「…おいどうすんだよ、湯を沸かしてそれから?」


部屋のバスルームに4人が並ぶ。アステール、ライト、レフトはなんとも言えぬ表情をしている。グロリアは見慣れない広さのバスルームに驚いている場合ではなかった。


「……どうみても風呂桶だし風呂場だな?入るんだよな?ん?」

「…バスタブでここはバスルームだ。」

「呼び方はどうでもいいんだよ!!真剣な顔で先ずはこちらへ来いって言ったと思ったらこれか!」


アステールの胸ぐらを掴んで怒鳴るグロリア。ライトは呆れたように静かにバスルームから出て行く。レフトはオロオロと2人を見る。


「……なんつーキメェ顔してんだ…いや私の顔だけど。」

「…至近距離の俺の顔も美しいと思ってな…ふふ…罪深い奴め…。」


大きな溜息をついてグロリアは手を離す。


「なに、これから見慣れる、減るものでもないのだ、気にするな!」

「あたしが!!気にすんの!!ったく…。」


そう言ったグロリアは服のボタンを外し始める。脱ぎにくいなとブツブツ文句を言いながらもその手は止まらない。驚いたアステールが止めようとグロリアの手を取る、が冷たく払いのける。


「あんたが言ったんでしょ?いーよ、男の裸なんて兄弟で見慣れてる。あんたも女にゃ不自由してないみたいだしね。」

「ま、待ってくれ!そうではない!!」


シャツの前を閉めさせると、アステールは咳払いをして口を開いた。


「俺が俺の美しい引き締まった身体に耐性がないのだ。」


一瞬にして凍りつく場と頬を赤らめるアステール。グロリアからは思わず「きっめぇな」の冷たい一言がこぼれた。


「ゴホン、茶番はこれくらいにして…!城のメイド…いつも僕の入浴の手伝いをしてくれている者を呼ぶから、先ずは慌てるな。」

「…突っ込みたいところが多過ぎて…。」

「とにかく、君には僕になりきってもらおう。無駄な事は言わなくていい。いつも通り頼む、と。」


自分の説明はどうするつもりなのだろうと顔をしかめるグロリア。現れたライトとメイドらしき2人の人物に納得がいった。アステールとライトが顔を見合わせ頷く。


「メイド長ルルリラ・スターチスと申します。こちらは私の補佐ローレルですわ。初めまして…えっと…。」


手を出したは良いが、名前が分からずアステールを見つめるルルリラ。それを感じ取ったアステールはグロリアを見る。


「…あっ…グ、グロリア・オニーロ。」


名前を聞いたルルリラは静かにアステールに手を差し出し、笑顔を向ける。


「素敵な名前ですわ、グロリア様。今日はさぞお疲れでしょう。まさか王都から隣町へ帰る途中に荷馬車を盗賊に襲われるなど…。」


成る程、そういう話になっているのかとグロリアは小さく頷く。


「ルルリラ様、アステール様がお待ちですので私はアステール様を担当致しますね。」


淡々とした口調で一歩後ろにいたローレルがグロリアへ歩み寄る。


「分かりました。ではグロリア様、アステール様がお戻りになられるまで御召し物をお選びになりましょうか。」


そう言ってルルリラはアステールを連れてバスルームから出て行った。その後に続いてレフトもバスルームの扉の前へと移る。取り残されたグロリアのシャツのボタンを静かに外すローレル。驚いたグロリアが声を上げる。


「…どうされました?」


なんでもない、と言葉を絞り出し、口に手を当てる。これが日常茶飯事なのかと、自分との暮らしとの差に溜息が出る。こんな生活をしたいと思ってはいないが、生まれた時からこの差が決まる事には納得がいっていなかった。


「…しかし、アステール様も気をつけて下さいよ?道端で出会った女…ゴホン、素性の知れない者を城に招くなんて。」

「…は?」

「アマル様の余命ももう…。もしそれを狙った刺客だとしたらどうするんですか?今貴方様が居られなくなったら…この国は…。」


そんなローレルの言葉にグロリアは声も出なかった。兄がいる事、その兄の余命が迫っている事…自分に置き換えてみても、あれ程明るく振る舞えるはずがない。


「うふ、すみません。それはアステール様が1番お分かりですよね。しかしどうか私達の不安も汲み取って下さいまし…私達には、貴方様が全てなのですから。」


儚げに笑うローレルから、目をそらす事しか出来なかった。



「さてグロリア様、どういったのがお好みでしょう?西洋から東洋までの様々なお召し物がありましてよ。」


お淑やかにそう告げるルルリラ。その後ろには沢山の服が並んでいる。


「うむ、どれも美し…!ゴホン、そう、ですね…。」


普段通りではまずいと咳払いをし、姿勢を正す。きっとどんな衣装でも似合う、否似合ってしまうだろう、自分が認めた美しさを持っているのだから。喉元まで出かかったその言葉は無理矢理飲み込む。


「…着慣れていないのであれば、動きやすいものの方がよろしいかと思います。こういったのはどうでしょう?」


出されたのは薄い黄色の地に様々な花の刺繍が施されたドレスだった。しゃがみこみまじまじとそのドレスを見るアステール。


「…ほう、可憐の花言葉を持つプリムローズ等が施された…これは花の都にある仕立屋のフラウ・ブルームンの作品の…。」


ハッとしてドレスを持つルルリラを見上げる。


「大丈夫ですよ、事情があるのでしょう?アステール様が連れてこられたお方ですもの、私にとってこれ以上の信用はありません。追求するつもりはありませんよ、ありのままのグロリア様でいて下さい。」


そんな笑顔を向けるルルリラに、アステールは心底安心した。正体がバレていない事よりも、ルルリラがアステール自身にそのような感情を持ってくれている事に対してだ。今ルルリラがこの城でメイド長として働けているのには、アステールが深く関わっているからだ。アステールは立ち上がりルルリラに向き直る。しかし今の状態でそれを告げる事は叶わない。。


「…か、彼も……貴方の事、信頼してますよ、きっと。」


絞り出したその言葉に、ルルリラは優しい笑みを浮かべるのだった。

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