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第一話 この世で一番美しいのは

「アステール様ー!」

「やぁ、今日も見目麗しいね。その琥珀の瞳に今にでも吸い込まれそうだよ。」

「そんな…アステール様の御美しさには敵いませんわ…!」

「……ふふっ…!何を言うかと思えば…それはそうだろう!僕より美しい人間がいるなら見てみたいものだ!」


 屋敷前の広場ではアステールは女性から次々に声を掛けられる。それに大袈裟に返事を返すと軽く手を振りその場を後にした。


「まぁ、アステール様ったら。」

「相変わらずですわね。可愛らしいこと。」


 アステールのこの性格は幼少期から変わらず…いや、幼少期よりも悪化していた。が、その人懐っこさや明るい性格から人々に嫌われる事はなかった。寧ろ愛され続けた人生であった。アステール自身、距離を置かれてよそよそしくされる事を嫌い、一度は王族そのものを嫌った時期もあった。そんな時、アステールは都に住む全ての人へよそよそしく接する事を禁止したのだった。流石に国王である父から怒られ、王位を継ぐまでという条件を出された上で、使用人供や住民達の敬語は徹底されはしたのだが。


「アステール様、今日はどちらまで?」

「やぁ、今日も警備ご苦労様。今日は街の教会にでも行こうと思っていてね。叔母さま達からの黄色い声も中々乙なものだろう?」

「はは…アステール様らしい。そういえば、小耳に挟んだ話なので私も詳しくは知らないのですが、隣村にそれは美しい女性がいるという噂はご存知ですか?名前は……。」


 アステールは警備兵の言葉に足を止める。そしてキメ顔で問い掛ける。


「… 僕よりか?」


 その質問に警備兵は頭を掻く。この質問を素で聞いてるのだ。流石だと笑うしかない。


「…あぁ、いや…そこまでは…。ですが、隣村と言っても距離はそこそこあります。そんな所からこの都まで噂が広まるという事は…と。」

「なんだアステール様、知らないのですか?」


 傍へやって来た他の警備兵が意外そうに口を開く。


「…ふむ、そこまで言うのであれば案内してくれたまえ。行ってみようではないか。」


 得意げな顔でそう告げるアステール。警備兵達はまた始まったな、と笑い合う。


「こうはしておれん、ジョセフィーヌを早く!」

「あ、あの…申し上げづらいのですが…。」

「なんだハッキリしないな!」

「ジョセフィーヌ様は…お食事中で御座います。」


 しばらくの沈黙。ジョセフィーヌとは、アステールが10歳の頃に父からプレゼントされた白馬だった。アステールは大袈裟に頭を抱える。


「…っ…!食事中…か…!!それは仕方ない。では終わるまで僕は僕磨きをするとしよう。ジョセフィーヌが出発出来る状態になればすぐに知らせてくれ。」


 スッと態勢と髪を整えるとマントを翻し、城へ引き返すアステール。その表情はまるで、新しいものを発見した子供のようだった。


「鏡よ鏡…この世で一番美しいのは…?いや言うな分かっている!それを俺自身の耳で聞いてしまったらこの先俺はどう生きれば良いと言うのだ…!」


 自室の鏡の前で百面相をしているアステール。ノックの音が聞こえ、ゆっくりと顔を覗かせたのは兄のアマルだった。


「…兄さん、どうしたんです?体調の方は…。」

「ありがとう、アステール。僕は大丈夫だ。それより、慌てて帰って来たようだけれど、どうしたんだい?」


 肩にかかるブロンドの髪を小さく揺らし、首を傾げるアマル。そして静かに部屋のベッドに腰掛ける。ヴィエート家は代々ブロンドの髪と青い瞳を受け継いできた。そのブロンドの髪は、一見イエロー系のバターブロンドだが、日の光を浴びると赤みを帯びて見えたり緑みを帯びて見えたりととても珍しく、それこそが王家の証ともされてきた。


「何とも興味ある話を聞いて…ジョセフィーヌの食事が済み次第すぐに向かうつもりなんですよ。」

「…ふふ、やはり羨ましいな、アステール。その自由も今だけだ、楽しんでおいで。」

「………はい…兄さん…。」


 複雑な思いだった。兄であるアマルの余命は1年程と言われている。身体の自由が効かなくなる病にかかっているらしく、筋肉は衰え今はもう剣を振る事も出来なくなっていた。兄の弱っていく姿を見るのは、胸が締め付けられる思いだった。その兄の代わりに王の座に就くのだ。今までのように自由ではいられなくなる。アステールは王になどなりたくはなかった。


「気を付けるんだよ、アステール。じゃあね。」


 穏やかな表情を向け、ゆっくりと部屋を出て行く。それと同時に警備兵が1人、顔を出した。


「ジョセフィーヌ様の準備が整いました。広場へお越し下さい。」

「…ふ…ジョセフィーヌめ、俺を待たせるとは愛い奴だ。食後で悪いが走ってもらおうか…!」


 マントを翻しジョセフィーヌに飛び乗るアステール。その動作一つさえ誰もが見惚れる程だった。


「さぁ、待っていろ美女とやら!」


 アステールのポニーテールが七色に光り、ジョセフィーヌが嗎をあげる。石畳を蹴る音が響き、暖かな風が耳の側を吹き抜ける。手綱をしごくとジョセフィーヌは更に速度を上げ、駆けて行く。広場から真っ直ぐに伸びる一本の坂道を下って。

更新が遅くなってすみません!アステールのお馬鹿っぷりはいかがでしょうか?これからもお楽しみください!

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