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諦めきれないバカの追求録《パルシィード》  作者: 霞空
一章 汚れる前の三人と諦めた振りしたバカの馴れ初め
3/77

突撃、隣の研究所

文章を短くして改めて投稿。

読みやすくなっていることを切に願うのみ。


熱血展開も、プロローグのハーレム状態もまだ遠い未来です。

汚れた三人をお求めの方は今しばらくおまちください。

では、お楽しみ下さい。



「う、お、らああ、あああ……!」



 身体に魔力を通し、強化した蹴りで相手を吹き飛ばす。

 白衣を着た研究員が壁に叩きつけられ、意識が飛んだのか力なく倒れた。

 元々疲れが溜まっていたのだろう。

 苦痛に歪んだ顔には、どこか安らぎが含まれていた。



(目が覚めたらムショだが、ゆっくり眠ってくれ)



 ほんの少しの同情を抱きながら、次の標的に意識を移した所で発砲音が響いた。


「ちっ――――!」


 障壁を斜めに展開すると同じくして、魔力で生み出された壁を弾丸が削る。

 そして目の前で光を散らしながら、背後へとれていった。



 何の抵抗もせずに直撃すれば強化しているとは言えど、自分程度の強化倍率ならば紙を破るとの変わらない。簡単に身体を食い破るだろう。

 訓練さえ積めば誰でも手軽に扱える現代兵器の厄介さを改めて感じる。



「面倒だなっ!」



 好き勝手撃たせる訳にはいかない。

 乱射されれば、場慣れしているとは言え危ないのだ。

 此方に狙いを定めている白衣の男へと勢い良く突進する。

 合わせて魔力弾を二つ生成し、一つはそのまま真っ直ぐ男へ向けて放つ。

 もう一つは弧を描くように回り込ませ、手に持っている拳銃へ射出した。



 相手からも魔力弾が見えているため不意打ちにはならないが、それでいい。

 意識を割いてくれるだけで構わない、狙いが甘くなり焦りが生まれる。




 すでに追い詰められているこの状況下、魔導を使用しない事を考えるに、向こうは戦闘できるだけの魔力がないのはほぼ確定している。

 この焦りに満ちた表情が此方を欺くための演技ならば、俳優を目指すべきだ。



「はぁぁ!」



 そんな下らない思考を打ち捨て、姿勢を沈めて障壁に身を隠しながら前へ進み、前に出た勢いを利用して蹴りを放つ。



 生まれるのは三点同時攻撃。

 ほぼ武装しているだけの一般人にここまでの攻撃は過剰とされるだろう。

 だが、自分に何発もの対魔力障壁用貫通弾を防げる力は無い。




 だから容赦しない。

 できるほど強くない。

 故に全力を尽くして相手を打倒する。




 ニ回目の発砲音が響く。

 展開していた障壁が更に削られるが、三発目が放たれる前に蹴りが届いた。

 続けて拳銃と男に魔力弾が着弾し、男は静かに崩れ落ちた。



「…………ふぅ」



 男に意識が無いことを確認する。

 安全を確保したと判断して現状に思考を巡らせる。

 非戦闘員のはずの研究者ですら防衛に回っている時点で、この先に重要な研究データがあると予想できる。

 処分される前に確保しなければここまで来た意味の半分がなくなってしまう。



 それが、ただの調査協力でたまたま見つけてしまった研究所だとしても。

 立場上見つけてしまったからにはある程度、成果が必要なのだ。



かわして、らして、最短距離で突っ込む」



 自分の発言に――なんだが頭わるいなぁ……。と思わなくもないが、それ以外に出来ることがないので仕方がない。



 俺には英雄の様な圧倒的な力も、達人の様な技量もなく、

 ほんの少しだけ、小賢しい技術が有るだけだ。


 自分としても、それを最大限活用する方が性にあっているので、

 欲しいとは思っても手にすることはできないだろう。



 魔力をデバイスに送り込み、内蔵されている魔導式を起動。

 同時に探索班から送られてくる見取り図を確認しながら目的地を推察する。



 が、考えるまでもなかった。

 奥から次々と血走った目で走る、白衣の集団が向かって来ていた。

 どこの巨塔だ。

 拳銃やライフルだけでなくサブマシンガン、ショットガンまで持ち出してきているのが目に映る。



――うわぁぁ…………。



 役目も果たすまでもなく敵が現れた為、

 索敵用に起動していた魔導式を終了させる。

 遠目から見ても伝わってくる物量で押す気満々のラインナップに若干顔が引きつる。



 狭い通路での飽和射撃は流石にまずい。

 熱い歓迎は好きだが、女の子のハグ以外は勘弁して貰いたい。



 どうするかと一瞬悩むが、結局やることに変わりは無いと思い直し覚悟を決める為、呼吸を整える。

 



「歯ぁ食いしばれぇ!まとめて拘束してやるよぉおおおお!」




 やけくそ気味に叫ぶと同時に白衣の集団へと突撃する。


 このまま相手の射線上にいる訳にもいかないので、全身を強化して壁に向かって飛び上がる。

 更に壁を足場にして反対側の壁へと移動する。


 多数の発砲音が響くが、元々戦闘を想定している研究員なんている筈がない。

 俺の立体的な機動に狙いが追いつかず、弾丸は背後へ通り過ぎていく。


「せぇいっ!」


 もう一度壁を使って飛び上がり、天井を足場にして集団の真ん中へと向かい急降下。

 着地に合わせて魔導式を起動。

 制圧用に調整された衝撃が自分を中心に全方位を襲う。



「――っ!インパクトォォ!」



 味方を巻き込みながら吹き飛ぶ者。

 為す術無く壁に叩きつけられる者。


 魔力耐性もロクにないのだろう。

 衝撃をまともに浴びた者は正常に作動した魔導式の効力により意識を失っていた。



 一応、公務員なので正当な理由もなく相手を殺してしまうと後々めんどくさい。

 火器で武装しているので理由にはなるのだが、基本的には許可が必要となるのだ。


 今から許可を得る為に手続きをしている余裕もない。

 ここは日本国外。手続きにも外交的にも時間がかかるのは分かり切っている。

 その為状況は今と変わらない。


 一応、制圧用の魔導式でも殺傷力が無いわけではないのだが。

 その場合事故として処理できる為、そこまでの問題にはならない。

 要は此方に殺意は無いというポーズの問題だ。



 まぁ、ボーナスの査定には響くだろうが。



(最近の公務員はブラックだなぁ……)



 浮かんでくる思考を払いつつ名も知らぬ研究員達の意識を刈り取っていく。



「っ――――っ!!」



 抵抗らしい抵抗もなく、相手は腰を抜かしたり意識はあるがまともに動けなかったりと、戦闘の継続が不可能な状態に陥っている為、先程までの戦いと比べれば楽な物だ。

 此方に対して怯えながら何か喚き散らしている研究員を最期に気絶させ、後続班に通信をいれる。




「研究員と思われる集団を無力化した。身柄の確保を頼む――」




「――了解。探索班より。右奥の部屋に生体反応多数。しかし時間とともに反応数が消失しているとのこと。それ以外はクリア――」




「チッ、了解だ、クソッタレっ!」





 最低限のやり取りを終え、示された部屋へと急いで向かう。

 侵入者が自分一人しかいない状況で生体反応、つまり命が消えている。

 詰まるところ、人体実験。その処分だ。



――ああ、久しぶりの当たりだよ!畜生がっ!



 研究という己が好奇心を満たすために軍備の為、世の発展の為と。

 色々と御為おためごかしはある。

 しかし、それは共通して命をもてあそび、強化と銘打った後遺症を与え、成果と称して幸せを享受する未来を奪う。



 果てにはクローンを生み出してまで実験体にする。

 投薬耐久、加圧耐久等、まるで命をおもちゃの様に使い潰す狂気の所業。



 表立ってやってる治験や協力検査とは訳が違う。

 正真正銘、倫理をドブにてた者達による本物の違法研究。




 作戦前の資料を正しければクローン技術によって異能者ホルダー魔導士まどうしを造り上げる人造計画の可能性が高い。

 後天的に異能を取得できる因子投与とは違い、成功さえすれば【原初オリジン】や【片鱗ピース】すら再現する事ができるだろう。



 事の重大さが一公務員である自分の手に余る事に舌打ちがでるが、

 やらないわけにはいかないのがお役所仕事の辛い所。


 あとで死ぬほど手当を要求してやると心に決める。


 本来、使う予定のなかった拳銃を腰のホルスターから引き抜き、強化式を起動。


 丈夫そうな扉が目に入るが、最大強化している今の自分からするとただの扉と大して変わらない。

 勢い良く扉を蹴破り室内に飛び込むと、白衣の女性がコンソールと思わしき物を叩くように操作している光景が目に飛び込んでくる。



 強化した拳銃を女性に向け、叫ぶ。



「Allied Army! Freeze!(同盟軍だ!動くな!)」


「っ!!」



 言い終わるなり此方に気づいた女性が魔力弾を飛ばしてくる。

 俺の曖昧な英語が伝わらなかった訳じゃないだろう。

 この状況下、攻撃を仕掛けてくる時点で黒だ。



 敵性を確認。最低でも魔導の戦闘使用が可能なレベル。

 現在は研究成果の処理中と思われる。


 見たところデータの持ち出しも間に合ってない。

 つまりここで女性の逃走を阻止、拘束ないしあるいは殺害することで、これ以上研究成果が外に出されることはない。



 現場判断により、殺傷目的の攻撃手段に変更する。

 始末書は確定だが理由としては十分すぎる。

 魔導による反抗。最悪の場合世界に影響を与える研究の可能性もある。



「おらっ!これでも食らってろ!」



 魔力弾を身体を逸らして避けるとすぐさま三度発砲する。

 本来魔導と掛け合わせることが難しい、対魔力貫通弾に特殊加工を施し、強化式を乗せた今の俺が出せる最大火力。


 貫通力はAランク魔導士でもない限り魔力障壁ごと相手を貫通する代物だ。



が……。



「ウッソだろぉっ! おいぃ!」




 三つの鈍い音が着弾した事を知らせてくれたが相手は健在。

 外傷もなく無傷のままだった。



 防がれた。

 自分の様に小手先の技術で逸らしたのではなく、純粋に魔力障壁だけで防いだのだ。




――ファック! なんで研究員なんかやってるんだよ。軍や魔導局にでも入れよ!



 自分の才能と比較してやるせない気持ちになる。

 しかし現状が変わるわけでもないので、思考を打ち捨て打開策を模索する。



 先程放ってきた魔力弾には技巧の欠片も見いだせなかった。

 つまり、相手が才能を磨いていない事がわかる。

 そこに勝機がある。



 事実、此方の攻撃を防いでからは攻勢に出てきたが、そこに精緻はない。

 予測しやすく、制御も雑。速度も足りない。

 ただ威力が高いだけの稚拙ちせつな攻撃。

 闇雲に周りを破壊しているだけの魔導。

 まだCランクで伸び悩んでる奴らの方が上手く扱える。



 活路を見出した事で反撃に移る。

 接近するため足に魔力を集中させるが、いざ突撃しようとした所で女性の姿がぼやけ始めた。



 接近を中断してすぐさま発砲する。

 だが、弾丸が当たることはなくむなしく女性をすり抜けた。


 そして目の前に居たはずの人物は影も形もなく、




 残されたのは室内にたたずんでいる自分、ただ一人だった。




戦闘だけ。なんというか苦手なんですよねぇ。

ギャグを書きたいけど、ストーリー上どうしても必要になってくるので

しかたないし。


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