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Knight of the girl ~少女と黒い猫~  作者: きと さざんか
2:盗賊
7/21

黒い少年

 黒衣の少年がいた。

 頭からつま先まで、墨で染めたかのように黒い。青空の下にいる者としては、酷く不似合いだった。

 歳は、十と、その半分くらいだろうか。落ち着いたたたずまいで、のんびりと空を眺めていた。

 少年がまとっているのは、黒いコートだった。首どころか、口元までえりが覆っている。厚ぼったい生地は、そのままくるぶしのあたりまで重苦しそうに垂れ下がっている。

 腕には、漆黒の手甲をはめていた。足も、靴ではなく金属らしい光沢を放っている。

 黒くないのは、かろうじて見える白い顔と、金色の瞳だけだった。

 服に合わせたかのように黒い髪は、肩まで。そして、その上には、尖ったものが乗っていた。尖ったそれは、せわしなく動いていた。前へ横へ、時には後ろにも向けられている。

 飾りではない。少年の意志に合わせて動く、耳だった。


「ったく。こっちに来なけりゃ、死なずにすんだのにな」


 腰のあたりに、くるりと回る、尻尾もあった。

 人間そのままの姿ながら、動物のような耳と尻尾という付属品付き。知識があるものなら、少年の姿を見て、亜人デミと呼んだかもしれない。

 人間ではない、人間に近しい姿をもつ者。森人族エルフ鉱人族(ドワーフ)という種族が広く知られている。

 だが、少年に、森人族エルフの特徴とされる長い耳はない。鉱人族(ドワーフ)よりは背が高く、屈強な肉体も持っていなかった。

 尖った耳が頭に、尻尾が腰にありながら、亜人デミとは違う特徴だった。


「ふん、これで全部仕留めたか。逃げたのはいるけど……、まあ、いいか」


 何とも気楽そうだった。手甲をはめたまま、器用に頬をいている。


「帰るか」


 短く、自分に言い聞かせる。ここで突っ立っているのは、時間の無駄だ。


「あいつ、泣いてないといいけどなあ」


 一人でつぶやくのは、罪悪感を紛らわせるためである。本来ならば、自分はこんなところにいてはいけないのだから。

 歩きだそうとして、少年は右手に持ったままだった塊を思い出した。


「あ、こんな土産はいらないよな」


 適当な場所に放り投げる。べちゃり、という音は無視。


「土産、土産、かあ。なんかあるかな」


 少年は、コートが汚れるのも構わずに、しゃがみ込んで戦利品を漁り始める。

 あるのは、貴金属のたぐいばかりだった。ネックレスに指輪なら見た目が良さそうだ。金貨や白金貨は、そのまま使えるだろう。さすがに金歯はいらないと思って、見ないことにした。

 集めてみると、両手では持ちきれない量となった。ただ、そのどれもに問題がある。


「うへ、べっとりだ。これじゃあ、あいつは喜ばないよな。適当に置いとくか」


 赤い汚れは、簡単には落ちそうにない。

 少年は、集めたものを、これまた落ちていた袋にザラザラと流し込んだ。口を縛り、肩にかけると、それなりに重さを感じる。

 今度こそ帰ると決めて、


「よいしょっとねー」


 姿をかき消した。

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