そして日常へ
巨人族の事件から二日で、メイはノートスの街に帰って来た。
領主から新たに送られてきた兵士が事件を調査し、盗賊が遭遇したのは巨人族であった、と結論付けた。
兵隊が去り、トニ村の人々はやっと安心して暮らせるようになった。その際、ギリアムとマーシーがメイを養子にしたいと話を持ち掛けてきたが、それはさておき。
街に戻ってから、今日で五日目。
メイは、今日も冒険者として、ギルドの掲示板を眺めていた。
「むー……」
自分を鍛えようと決意したものの、具体的な手段が思いつかない。難しいクエストを受ければ、などと考えてもみた。しかし、まだまだ子供、まだまだ未熟では、受付嬢のエムにすぐさま却下されてしまう。
そのため、今日も手に取るのは簡単な、低レベルのクエストである。
「牧場警備かあ。……狼とか、出るのかな?」
受付表には、野犬が少し、と書かれているだけだった。牛や羊を守って欲しいとのこと。備考として、食事も付くとあった。
「これかな」
カウンターで手続きをすませ、宿に帰る。わらの寝床では、相変わらずジークムントが昼寝していた。
「ジークー? 出かけるよー」
呼びかけると、ジークムントはすぐに起きた。あくびをして、
「今日はなんだ? 今度こそ龍族退治か?」
などと大口をたたく。そんな態度にももう慣れた。
「牧場の警備。野犬だって」
「んだあ? またシケた話だ」
「いいの! ご飯も食べられるみたいだし」
「へえ。オレの分ももらえよ?」
「牧場だから、ミルク貰えるかも」
「それだけってのは、さすがになあ」
黒猫が、法衣とローブをまとったメイの肩に、するりと上る。
「それじゃ、行こうか」
「おう」
ネリーに泊まり込みのクエストを受けた旨を伝え、宿を出た。
「肉くらいでないかなあ」
「もう、ジーク、それは贅沢すぎ」
「へいへい」
軽口を叩き合いながら、一人と一匹はまた新たなクエストへ出かけていった。




