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Knight of the girl ~少女と黒い猫~  作者: きと さざんか
4:一件落着
19/21

告白

 とりあえず、という前置きがありながらも、村の惨劇は一区切りついた。

 メイの担当はケガ人だった。酷い者から順番に、法術ほうじゅつで治療した。

 村の男たちは、亡くなった者たちを運んでいる。女らは、疲れ切った者たちのために、共同で食事を作っている。

 村人は、全員無事だった。マーシーが呼びかけてくれたおかげで、すぐに避難できたらしい。一人、戦ったギリアムも、メイの治癒ヒールで、すぐによくなった。

 兵士たちは、残念ながら、亡くなった者の方が多かった。森からトニ村にかけて、列を作るように倒れていた。

 隊長は、一人で逃げてしまったそうだ。ギリアムや村の男たちは、その隊長が無能だなんだと、文句を言っていた。村長がたしなめていたので、じきに静かになるだろう。

 一段落すると、メイは食事を貰って広場にやってきた。空はもう暗い。ノートスに帰るには遅く、そもそも馬車がない。今日もまた、ギリアムの家に泊めてもらう予定だ。

 ギリアムとマーシーは、メイにひたすら感謝していた。助かったのはメイのおかげだ、ケガを治してくれて感謝の言葉もない、などなど。あまりにも恥ずかしくなって、顔を上げられなかった。

 広場のベンチでスープを食べながら、メイは、ぼんやりと考えていた。

 人や生き物の生き死にに直接関わったのは、初めてだ。冒険者をやっている以上、いつかは関わるものだと思っていた。しかし、今日の様に、いきなり経験させられるとは、欠片も思っていなかった。

 そんな場で、結局自分は役に立てなかった。もしも助っ人がこなければ、メイも亡くなった兵士と同じ末路をたどっただろう。

 情けない、と感じた。腐っても法術ほうじゅつ師だというのに。勇ましく戦うことはできなくても、戦場でも誰かを助けることはできると思っていた。

 全ては、あの黒い少年のおかげだ。礼を言う前に消えてしまったが、いったい、誰だったのだろう。魔物を簡単に追い払うのだから、高名な武闘家なのかもしれない。

 初めて出会ったというのに、メイにはずいぶんと優しかった。その分、魔物には最大限の怒りをぶつけているようだったが。

 今日のような幸運は、もう無いと思おう。これからは、もっと自分を鍛えていかねばならない。三流の法術ほうじゅつ師でも、三流なりに意地を持たなければなるまい。

 すぐには変われずとも、どんどん経験を積んでいこう。自分が気弱なのは自覚している。だからといって、それに甘えて逃げてばかりではいけない。

 ベンチから立ち上がり、空になったスープ皿を持って、気合を入れる。

 皿を返しに行こうとすると、合わせたかのようなタイミングで、黒い猫がやってきた。

 ジークムントである。元気が無いようで、とぼとぼと歩いていた。


「あー、メイ、ちょっと話がある」


 口調も、どこか疲れているようだった。


「うん、どうしたの?」


 神妙な口ぶりだったので、メイはベンチに座り直し、ジークムントを隣に誘った。

 黒猫は、影のように座り込んだ。黄金色の瞳も、どこか虚空を見ているようで頼りない。

 メイは、ジークムントが口を開くのを待った。


「あの、今日のことなんだけどな」


 そう切り出され、


「今まで、悪かったって思ってる。お前に、ずっと隠してて」

「隠す?」

「おう……。巨人族(ジャイアント)に襲われたとき、黒い子供が来ただろ? あれなんだけど……」


 ああ、とメイは納得する。あの少年は、


「ジーク、あんなに強い友達がいたの?」

「……は?」


 どこから呼んだのかは知らなかったが、ちゃんと助けを呼びに行ったようだ。守る、とはそういう意味だったのだろう。


「すごかったよね、あの子。巨人族(ジャイアント)を追い払ってくれるなんて」

「あー、まあ、そこいらの魔物くらいなら、相手にならないけど……」

「そうなの? すごすぎて、びっくりしちゃって、お礼も言えなかったなあ……。ねえ、ジーク、今度あの子を呼んだら、教えてね? ちゃんとお礼言いたいから」

「あ? ああ、分かった、けど、よ」

「どうしたの? やっぱりケガとかした?」

「いや、ケガなんてしねえよ。ただ、なんつーか……、少し困っててな」

「困る? あ、もしかしてその困ってることで話があったの?」

「違う、そうじゃなくて……」


 いつになく、言葉がふらふらと揺れている。ジークムントらしくない。危ない場面でも、ジークムントはいつも冷静に判断を下せるのだが。


「……なんだか、もうどうでもよくなってきたんだが、とりあえず、言っておくぞ」

「うん」

「お前が危なくなった時は、いつでもその……、子供が助けにくる。だから、心配しなくていい。龍族(ドラゴン)だろうと、魔王カオスキングだろうと、蹴散らしてやるから」

「えっ? でも、あんなに強い子、いつでも呼べるわけじゃないんでしょ? 今日はたまたま近くにいたとかで……。それに、あんなに強いなら、王国のすごい人かもしれないし……」

「そういうことは気にしなくていい。とにかく、お前は余計な心配をしなくていい」


 疲れ切ったように言い終えると、ジークムントはさっさと行ってしまった。影に隠れて、すぐに見えなくなる。


「どうしたんだろ、ジーク」


 スープ皿を持ったまま、メイは首を傾げるしかなかった。

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