表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Knight of the girl ~少女と黒い猫~  作者: きと さざんか
3:災難再び
18/21

撃退

「てめぇ……!」


 怒りに満ちた声が聞こえた。乱暴で、力強い。どこかで聞いた覚えがある声だ。

 ゆっくりと、目を開ける。すると、目の前に黒い人影があった。

 後ろ姿だったので、表情は見えない。ただ、その人影は、巨人族(ジャイアント)の拳を、いともたやすく受け止めていた。


「だ……れ……?」


 メイの問いに答えたのは、生意気な声だった。


「守るって言ったろうが」


 黒い影が、巨人族(ジャイアント)の拳を弾いた。


「ったくよお、てめぇ……」


 少年だろうか。自分とそう変わらないような体が、メイを守るために立っていた。

 少年が動く。着ているコートを巻くように、一回転し、


「メイの前で、変身させやがってよお!」


 巨人族(ジャイアント)を、殴り飛ばした。

 巨体が、あっさりと吹っ飛んでいく。群れの中に突っ込んで、他の巨人族(ジャイアント)を巻き込んで倒れた。


「あー、くそっ。メイには絶対に見せたくなかったってのに! あー、もう!」


 少年が、頭を掻きむしりながら悶えている。巨人族(ジャイアント)の脅威など、全く気にしていないようだ。ぶつぶつと、独り言を呟いている。

 目の前の光景が、信じられなかった。人間が、巨人族(ジャイアント)を、ああも簡単に殴れるとは思えない。体の大きさでいえば、大人と赤子ほど違うというのに。

 だというのに、少年は当たり前のように殴り、それを気にした風もなく、一人で頭を抱えている。

 状況が、全く飲み込めない。


「とりあえず、お前はここにいろよ? あれはとっとと追い出すから」


 少年は、言いたいことが終わったらしい。あれ、と巨人族(ジャイアント)を指さすと、


「潰す」


 心底、許しがたいとばかりに走り、飛び込んだ。

 仲間を倒されて巨人族(ジャイアント)が怒り狂う。拳と言わず、足を腕を振り回しながら、少年を追い払おうとする。

 そのどれもが、少年には当たらなかった。当たれば即死であろう一撃を、しかも様々な方向からくる攻撃をするりと避けると、巨人族(ジャイアント)巨躯きょくを村の外まで吹っ飛ばしていく。

 少年はそうとう頭にきているのか、怒声を放っている。もう十数メートルは離れているだろうというのに、メイの耳にはよく聞こえた。

 変身、とか、体、とか、嫌い、とか。何を言いたいのかまではくみ取れなかったものの、とにかく怒りに任せて巨人族(ジャイアント)を殴り、蹴り飛ばしていた。

 やがて、巨人族(ジャイアント)は少年に恐れをなしたか、逃げていった。仲間を引きずりながら、山へと戻っていく。

 少年は、立てた親指を下に向けて、最後の一言を放っていた。メイには聞こえなかったが。

 巨人族(ジャイアント)の姿が完全に森に隠れると、メイは腰が抜けてしまった。ギリアムの重さに、それこそ潰されるようにへたり込んだ。


「おい」


 少年が、いつの間にか背後にいた。


「え、あ、はい! なんでしょう!?」

「いや、なんで敬語なんだよ。まあ、それはともかく、ケガはないか?」

「は、はい、私はありません! ギリアムさんは、ちょっと大変だから、すぐに治癒ヒールを使わないといけませんがっ」

「いや、だから敬語……。あー、いいか、もう」


 少年はがっくりと肩を落とした。ため息とともに疲れを吐き出しているようで、


「無事なら、よかった」


 一言つぶやくと、その体から光を放って消えてしまった。


「え? あれ?」


 一瞬で、姿が見えなくなった。メイがどれだけ見回しても、少年はいない。

 その代わりに、黒い猫が一匹、そばにいた。


「あ、ジーク……!」

「よう。その、なんていうか、悪かった」


 ばつが悪そうに、うなだれていた。

 そういえば、と思い出す。ジークムントを見たのは、巨人族(ジャイアント)の群れに歩いていくまでだ。その後は、命の危機と、少年の登場ですっかり頭から抜けていた。


「ど、どこにいたの!?」


 忘れていた罪悪感がありながらも、怒鳴る。


「ケガはない? どこにもない?」

「あ、ああ、大丈夫だよ」


 今度こそ、完全に体から力が抜けた。


「良かったあ……」


 相棒が無事で、ほっとした。

 ギリアムも、命に関わるケガはない。治癒ヒールを使えば、すぐに治る。


「はああ……」


 気絶しそうなほどに、気が抜けた。だが、意識を失っている暇はない。

 村は酷いものだった。ケガ人は多く、命を失った者もいる。これからが急がしいのだ。のんびりと寝るわけにはいかない。


「ジーク、マーシーさん呼んできて」

「お、おう」


 妙に歯切れ悪く返事をして、ジークムントは駆けていった。

 まずは、とギリアムのケガに、治癒ヒールをあてる。


「頑張らないと」

 腰が抜けているのも忘れて、ケガの治療を始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ