焦り
外で大声がした。鎧が鳴る音と、兵士が走り回る音がする。
家に閉じ込められていたギリアムは、すぐさま窓に寄って確認した。
声と音は、やはり兵隊のものだった。皆、武器を携えていた。何か起こったようだ。
兵隊が来てから、初めてのことだった。件の化け物が現れたのだろうか。
窓を開けて、適当な兵士に、何があったのか尋ねる。兵士は焦りを隠せない顔で、
「魔物が出たんだよ!」
それだけ言って、走り去ってしまった。
「魔物だって……?」
兵士たちが向かうのは、山の方角だった。少し前に、メイが薬草を取りにいった山である。
「あなた……」
兵士の声は、マーシーにも聞こえていたようだ。
「魔物ですって?」
「ああ。どうやら、何か出たらしいな」
「どうしましょう……?」
「……どうしようもないな。本当に魔物が出たなら、俺たちじゃ歯が立たない。兵士に任せるしかないよ」
獣程度ならば、ギリアムたち自警団でも追い払える。しかし、魔物となると話は別。奴らは獣の比ではないくらいに恐ろしく、強い。
どんな魔物が出たか気になるが、そもそも家から出られない。あの慌てようからして、兵士たちからも話を聞けないだろう。
いざという時は、村から逃げ出すことも考える必要がある。
ギリアムは歯噛みした。先日の盗賊団の一件から、村に災難が絶えない。
神に祈りを捧げる。どうか村の皆が無事でありますように、と。
妻の肩を抱いてやりながら、静かに目を閉じた。




