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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【強者の権利】面倒事対処 その05【最下の義務】

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スレ95 帰り道こそ気を付けよ

皆さん、お待たせしました!

今回はきちんと投稿できました!



 いろいろとあった遠征だが……予定していた六泊七日が過ぎ去った。


 他のクラスは移動に余裕を持っているのですでに帰っており、高速で帰れるXクラスだけが未だに森の近くに残っている。


 思い返せば出発から今に至るまで、何一つとして休める時間の無かった遠征だ。


 頼もしい先輩の助力を得られたこと、新しく磨き上げた魔法技術などが無ければ不満しか残らなかった気がする。


「そういうことも含めて、最終的にはいい思い出だったってことか?」


[スクショ]


「撮ってたのか……いや、盗ってたのか。許可なく撮影するのはダメだぞ」


[依頼]


 アイツらに頼まれたらしく、サーシャはスマホのカメラをこちらへ向けている。

 遠征中も時々やっていたが、このタイミングで撮って何に使うんだろうか?


 残念なことに写真や動画を公開しているスレを知らないので、投稿する前に邪魔ができていない分はアイツらに回っているだろう。


 ──だが、今の分だけならば、どうにかできるかもしれない。


「と、いうわけでだ……それ見せろ」


[NO]


「……いや、見せろって──そいやっ!」


[やだ]


 近接戦からの武器奪取を再現してみたが、サーシャからスマホを奪うことはできない。


 そもそも、【武神之魂】やら戦系の神様の加護やらを授かっている者を相手に、再現程度の技で挑むのが烏滸がましかったか。






 それから数分ほど粘ってみたが、結局奪えずに集合時間を迎えてしまう。


 ……しかも粘っている時間も撮影されたらしく、スレを見るとなぜか特別訓練メニューなるものが新しく立てられていた。


「さて、これから学園への帰還を行います。移動方法は何でもあり、ただし全クラス合同の閉会式に間に合わない者は罰ゲームです」


「ば、罰ゲームですか?」


 俗すぎる反応するフェル。

 ピクピクする細長い耳が、キンギル先生がこれから発するであろう内容を聞き取ろうとしている。


 まあ、それは俺とサーシャ、あとクーフリ先輩以外は全員同じ反応だ。

 フンッとか鼻を鳴らしていそうなアルムでも、ジッと先生を見ているし。


「減点などの成績に関することでは無いですから、ブラスト君も安心ですよ」


「先生、なんで名指しなんですかね!?」


「自分に胸に手を当てて確認してください。罰ゲームはちょうど学園に届けられている冒険者ギルドからの依頼を達成する、というものです。受ける依頼はこちらで勝手に選ぶ、というのが罰という意味になりますよ」


 平民で入学した者の中には、以前から冒険者としてお金を稼いでいた者が多い。


 実践経験の中で戦闘能力を高めたり、高いランクを手に入れて地位を手に入れたりとそれなりに得はある。


 アウェイオンの場合、冒険者ギルドは学園と提携して運営を行っていた。


 志願する生徒や有望な者にギルド側から依頼を提供し、互いにWinWinとなるシステムだな。


 ──だが、例外も存在するわけで……。


 人気の無い依頼の押しつけ、今回の罰ゲームであるそれが該当する。


 それこそ成績が欲しくてどんな依頼でも受けようとする生徒や、世のためだと言って働きたい正義の味方などがこちらの該当者だ。


「あの、先生。具体的にどんな依頼があるか訊いていいですか?」


「良い質問ですね、アサマサ君。少し前に確認した時であれば、『どぶ掃除』や『町中のゴミ掃除』……」


 その内容を聴いて、まあこの程度かと一息吐く生徒たちだが──。


「あとは『山に住み着くドラゴンの排除』などがありましたね」


『ドラゴン!?』


「ただ、これはアサマサ君用の依頼です。君たちが気にすることじゃありませんよ」


「……先生、俺はとっても気にします」


 ドラゴンを相手にするのは、それこそ英雄のような奴らの役割だろう。


 なぜか教わっていた自分よりも大きい相手に使う技などがあるが、さすがにドラゴン用のものは……無い、と思う。


 なお、クーフリ先輩がそもそも含まれていないのは、当然空間を跳躍できる先輩が間に合わないことの方がおかしいから。


 ──というか、罰を聞いてすでに帰っているので話に挙げる必要がないのだ。


「それじゃあ、これから五分後に開始だよ。ああ、アサマサ君はその二時間後にね」


「先生、理不尽過ぎませんか?」


「君なら達成できるさ。クーフリ君もまた、達成できるのだから不可能ではないよ」


「……先輩には転移魔法がありますよ?」


 分かっていて言っていた。

 ニコリと笑うキンギル先生は、確実に先ほど挙げた依頼をやらせようとしている。


「アサマサ君──期待、していますよ」


「はい……」


 まあ、“虚数転移(イマジンジャンプ)”を使えばほぼ間違いなく楽勝だ。


 もっと言うなら、転移の魔道具に学園を設定してあるので魔力さえ残っていれば、いつでも帰ることができる。


 だがそれをやると、その存在が露見してしまうので秘匿しておきたい。

 かつての勇者が使っていたアイテム、その価値は計り知れないだろうし。




 本当に二時間空けられた。

 サーシャによると、すでにアルムやファウなどは到着しているようだ。


 彼らは光属性の適性持ちなので、移動速度向上などお手の物なのだろう。


「さてさて、俺のタイムはどれくらいだろうな──“虚数転移(イマジンジャンプ)”」


 滞在の設定はせず、入った瞬間座標を切り替えて学園に向かえるように“虚無纏装(ボイドオプション)”で調整しておく。


 そうした効果もあり──発動した瞬間、俺の視界は少し懐かしいものとなった。

 ……妨害とか帰宅中のバトル物とか、そういう展開は無視、俺は普通が一番だ。



それでは、また一月後に!


最後まで読んでいただきありがとうございます。


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