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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【強者の権利】面倒事対処 その05【最下の義務】

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スレ72 同志たちと祝いの言葉を

皆さん、一ヶ月ぶりです



 俺にも少しばかり、ファンが増えた。

 リア充を恨む非リア……いや、同志が。


 直接的な関わりがあるわけでもないし、何かしてくれるわけでもない。


 だが、リア充との戦いが始まるとどこからともなく現れ、俺の内で眠るリア充に対する怨恨を吐きだしてくれた。


「いやまあ、それがどうしたとも言えるけどさ……さて、これでお仕舞いか」


「うがっ……」


「何が『君のために勝つ』だよ。おいおい、いつから俺は男女の縁を結ぶためのスポットになったって言うんだよ。逆だよ、逆……お前らみたいな奴が調子に乗ったとき、容赦なく叩き潰すのが仕事なんだ」


 今も客席には、俺が頭を踏んでいる男に向けて声援を……俺に向けて憎悪の声を上げる少女の姿がある。


 彼女の友人たちも、彼の恋を応援していた者たちも同じように彼を応援し、俺に怒りの声を上げていた。


「なあ、そもそもなんで俺に勝ったら告白するなんて風習ができたんだ……あ゛あ゛? 笑わせんなよ、周りはできないけど自分にはできます。だからそれができたら君に僕の想いを届けようってか? もう一度言うぞ、バカじゃねぇの!?」


 やられる側の立場になってみろよ。

 勝手に目標にされた上、上手くいかないとクレームを付けられる……しかも、それはやればやるほど期待度も恨みも増える。


 やる気が著しく減るだろ。

 やりたくもないことをやっているのに、さらにやりたくない理由が増える……なのにそれを強制され、俺の心は疲労困憊だよ。


「まあ、負けたんだから別れろ……って言ってもお前らは別れねぇんだろうな。アイツはズルをした、とか君への想いはアイツ程度には引き裂けないとか……知ってるか、そういう風に言って付き合ってた奴もいたんだぞ」


 その言葉に、周りは沈黙を始める。

 彼女さんの方はまだ応援しているし、周りにどうして止めたのかと詰め寄ろうとしているのだが……残念、見た限り倒した覚えのあるリア充君が居るからな。


 ──うん、その結果を知っているんだよ。


「ははっ! 約束も守れねぇ奴が都合よく女の言う通りになるわけないだろ? そう、俺が手を下しても下さずとも、テメェらは勝手に別れるんだよ!」


「だ、黙れぇ……」


「おいおい、図星を突かれたからってそう怒るなよ。お前がそういう奴だってのは、ここにいるほとんどの奴らが知ってんだよ。だからこそ、お前の負けっぷりを見たくてここに居るんだ──見てみろよ、客席を」


「きゃ、客席、だと……? ぐはっ!」


 親切に首の向きを動かしてやり、俺が見せたい光景を拝ませてやった。


 なんだか俺、悪役っぷりが身に着いてきたしてきた……まあ、友人が誰も否定しなかったから実際そうなんだろう。


「しっかり映ってるか? あれ、お前の知り合いのはずだよな? さっきから、お前に向けて熱いラブコールを出しているしさ」


「……し、知らない」


「そうか、違ったか。じゃあお前の彼女の知り合いだな。そうだなー、元彼とか」


「アイツに! そんな奴はいない!」


 うんうん、純粋な台詞(セリフ)だ。

 女の方は少し血の気が引いた顔をしているし、先ほど見せた男の方も恨みがましい顔をそちらへ向けているけど。


「鴨だな、お前。あっ、こっちだとそれは伝わらないんだっけ? スキャリオンダックが顔を出す、で伝わるんだったか」


「お、俺があの愚物といっしょだと?」


「いや、そうだろ。騙されたうえ、それに気づいていないんだから。まあ、それはあっちで見ている君の本当のお友達も同じなんだけどさ……同じ場所にいつか君も立ってるよ」


 鴨がネギを背負ってくるという言葉は、この世界だとそう伝える必要があるらしい。


 スキャリオンダックという魔物が、半端無いほどレベル上げに最適な魔物だからそういう言葉が生まれたとのことだ。


「ここから正確な声は聞こえないだろうし、直接聞いてやってくれや。俺も詳しくは知らないが、そう相談を受けたからな」


「相談、だと……」


「今や俺も人気者、リア充の悪を正す正義のヒーローになっているんだよ。だから、お前も救ってやるよ。いろんな男を手玉に取ってる、あのいけ好かない悪女からな」


 いやー、凄い冷めた視線だ。


 それは俺とあの女に向けられたもの、なぜだか俺の方が冷たさの度合いが上だが、まあ一部の奴が注目してくれてる人がいるし……気にしないでおこう。


「さぁさぁ、お集まりの皆様! 悪逆非道の従者様による、救済を始めましょうか! ここにおわすは、男を男と思わず糧として取り込むことしか思わない女! また、そんな女に喰われた哀れなスキャリオンダック!」


 魔力を一点に集中させて発光させる。

 それを男と女に向けると、スポットライトのような役割を果たす。


「これから彼らがどうなるのか……皆様の祝福は頂けるのでしょうか? では、スタッフの方々に祝詞(うらみ)を唱えてもらいましょう」


 客席から舞台へ降りる階段を作り上げ、闇魔法で色付けをする。

 闇色のそれは、まさに彼らの関係の終焉を告げる使徒の登場を表す。


「では、告白ターイム!」


 このあとどうなったのか、それはご想像にお任せしようじゃないか。

 だが、一人の女子生徒が退学したとだけ記しておこう。



それではまた、一月後に

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