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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【異世界学園の】面倒事対処 その04【劣等従者】

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スレ62 乾杯はメロンソーダで



「──遅いぞ、アサマサ! ナニやってたらこんなに遅くなるんだ……どぶぅぉっ!」


 颯爽と現れ、颯爽と消えていくブラスト。

 いつものXクラスが、俺たちを迎え入れてくれる。


[いいの?]


「平気よ。それよりもアサマサ、ちゃんと回復できたの? せっかくのお祝いなのに、倒れられちゃ溜まったもんじゃないわよ」


「あ、ああ……絶好調だ」


 Xクラスはいつもと違い、鮮やかな飾りで彩られたパーティー会場と化していた。


 残念なことに俺の知っているクラスメイト以外は参加していないが、それでも知っている奴が全員で居ているので気にしない。


 もしこの場に拘束されて連れて来られたとしても、きっと彼らなら笑って迎えてくれただろうな。


「ふんっ、余裕のない闘いのふりなどするから、そのような負う必要も負傷をするのだ」


「……ふり? いや、かなり苦労して勝利したわけだが」


 アルの台詞にそう返したのだが、再び鼻で笑われこんなことを言われた。


「お前のご主人様が丁寧に教えてくれたぞ、こんなものではないとな。すでに闘っているのだから、その程度理解できる」

「……ん、本当は強い」


 兄妹揃ってそう俺を評価する。


 ジロリと後方に居るはずの犯人を見ようとしたのだが、次の瞬間には会場に置かれた食事を摘まんでいた……アンデッドだし、わざわざこのタイミングで食べずとも問題ないだろうに。


「アサマサ、お前はあの九位に勝ったのだ。すでにお前を序列に加えよう、という考えを持つ者も多いとのことだぞ」


「……ずっと前から不思議に思ってたんだ。その序列ってなんなんだ?」


「……アサマサは無知」


 兄妹仲良く説明を行う。

 掻い摘みながらある程度理解し、それを口に出すことで確認を求める──


「要するに、学術都市の中で強い奴九人を纏めてそう言ってたのか。それで、俺が十人目にでもなると……そして、特典はいっぱい」


「これまで、誰かの従者がなるといった前例は存在しない。アサマサ、お前が初だ。誇るがいい」

「……ん」


「公式の場でテストだろ? 嫌だよ、そんな七面倒なシステム」


 まったく、パーティーはまだ始まってもいないというのに……一度この話を切り上げさせ、全員にグラスを持たせる。


 司会はブラストがやっているようなので、アイツに乾杯だけやってくれと伝えて始まる瞬間を楽しみに待つ。


「──それじゃあ乾杯!」


『かんぱ──!』


「いや、ちょっと待て!!」


 あまりに唐突すぎる乾杯コールに、つい怒声を出してしまった。

 いくらなんでも短すぎだろ! 頼んでからまだ三秒ぐらいしか経ってないぞ!


「……んだよ、空気が読めない奴だな。誰も長い話なんて聴きたくねぇし、さっさと始めたいってのが理解できねぇのかよ」


「くそ、コイツにそんなことを言われるなんて……一生の不覚だ」


 ほとんど正論じゃないか。

 だが俺にだって、ちゃんと整理したいこととかいっぱいあるんだよ。


 なのにブラストときたら……ったく、本当にダメなヤツだな。


「……おい、主賓。言っていいこととダメなことがあるんだぞ? なんなら今からでも、序列十位には俺がなってやろうか?」


「ああ? やれるもんならやってみ──」


[終わり]


『げぶぅ!』


 互いにサーシャの攻撃を受け、一時的に頭が真っ白な状態にされる。

 ……けどさぁ、なんでブラストは素手なのに俺は籠手付きなんだ?


[乾杯はした、アサマサも食べる]


「そうですよ、アサマサ君。今日は無礼講、思う存分楽しもうじゃないか」


「先生……それって、教師として大丈夫な考え方なんですか?」


「構わないさ。溜め込みすぎるよりは、解放した方がいい。魔力と同じことだよ」


 解放しすぎた結果、危険視されて殺されそうになった生徒に言う台詞ではないな。

 苦笑いを浮かべてコップを打ち鳴らし、互いに飲み物を口に含む。


 そして、サーシャ以外誰にも聞こえないような声で呟く。


「ハッキリ言おう。学園は君の魔力量を気にせずに受け入れる。学園長はもともと、強さ至上を主張するお方だ。学園もまた、あのお方の意思に沿って運営される」


「今さらですね。できるならば、もっと早く教えてくれればよかったのに」


「今回グレイル=レイル君を倒したことで、君の名と容姿は世界に確実に伝わる。少なくとも君の同胞にもね?」


「……バレましたか」


 黒髪全開で行っているので、バレるのは当然なんだけどな。

 隠す気がないのは、闇魔法さえあれば問題ないと理解しているからだ。


「異世界人か……いつかこの学園のSクラスでも、異世界人を迎え入れることになるかもしれない。けど、学園の味方である限りは協力させてもらうよ」


「なら、安心ですよ。ご主人様が学園を出ると告げない限り、俺は現状を守れるように尽力します。もちろん、ご主人様が序列に入れというのであれば……十位を維持し続けてみましょう」


「そこはもっと、上の景色を見てもいいかもしれないね」


 キンギル先生はそう言って、他の生徒たちの下へ向かう。


 クラスの端の方に居る俺とサーシャ、俺たちもまた誰にも声が伝わらないように細工してから会話を始める。


「これからどうする?」


[序列一位]


「いや、それならサーシャに譲るよ。さすがに難しいな、そこまで行くのは」


[どうして?]


 なぜ、と訊かれてもな……。

 一度言ったはずなんだが。


「努力をする凡人が、努力を驕った天才に勝利した……それが今回の闘いだ。けど、次もそうとは限らない。凡人の武術には限界があるし、虚無の力は俺の切り札だ。できるだけ学園では使いたくない」


[り]


「特典が役立ちそうだから、それでもどうにか頑張ってみるよ。サーシャ、いっしょに手伝ってくれるか?」


[り]


 相変わらず、短縮形が好きな騎士様だな。

 コップを交わし、入れた液体を口に含む。


 ……嗚呼、さすがアキの仲間だよ。

 完璧なメロンソーダだった。



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