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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【異世界学園の】面倒事対処 その04【劣等従者】

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スレ57 槍は構えない方がカッコイイ



「国賓たちも見ているみたいだな」


「そうみたいですね」


 たしかに、来賓用の豪華な席にお偉い様たちが座っている……一人、見覚えのある奴も混ざっているし。


「あの鎧の人、お前を見てるな。知り合いなのか?」


「ぼくの出身国の女王様で、剣の師匠でもあるお方ですよ。それよりアサマサの方こそ、アイン国のお姫様がジッと見てるよ」


「あっ、うん。そうだな……」


 熱い視線を向けてくるのは事実だが、その実正体は殺気だからな。


 俺を殺せず、黒い感情が内心で渦巻いているといったところか?

 アイツには及ばないが、相手が俺にどんな感情を抱いているかぐらいは理解できるぞ。


 ……懐かしいな。

 リア充君が今頃何をしているか、なんてことは正直どうでもいいんだが。


 セリさんに今度、連絡してみようかな?


「ねえ、アサマサ。そろそろ魔法を使ってみない? その髪色とアインのお姫様が見ているってことから、君が異世界人だってことはもう分かってるし。異世界人は、必ず一つ属性魔法を覚えているんでしょ?」


「…………」


「だからほら、魔法も使おうよ!」


「…………まあ、別にいいか」


 そうですか、そうでございますか。

 どうせ俺は、そんなこっちの人たちにも知られてる常識の枠外ですよ。


 異世界には魔法が無い世界もあるらしいので、あまり気にしてなかったが……アキがその法則を知らなかったから、俺もそれを知る方法が無かったんだよな。


「それじゃあ、俺から──“身体強化(ボディブースト)”」


「なら、ぼくも──“全身強化(フィジカルブースト)”」


 レイルの使った“全身強化”は、たしか複数の属性魔法を行使すると使えるんだっけ?


 自分は使えないから調べなかったが、通常の“身体強化”よりも強大な力を使えるようになる、と本に書いてあったな。


「アサマサは“身体強化”でいいのかい?」


「ふっ、本気を出させたいならそれ相応の実力を見せるんだな」


「……プッ、アハハッ! 面白いよ、アサマサ、君は! うん、そうだね。もっと高みに行くなら、ぼくは挑戦者だもんね。アサマサの本気ぐらい、すぐに見せさせないと!」


 そういうと、ただでさえ繊細なだけであった魔力がレイルの中から膨れ上がる。


 さすがに(自称)魔力チートの俺には及ばないものの、セリさんよりちょっと下ぐらいという、ただの人間種では到達できない魔力量を感知してしまうほどだ。


「それなら俺も、ただ剣だけでつきあうのを止めようか」


「それは──!」


「さぁ、魔法込みの闘いを楽しもうか」


  ◆   □   ◆   □   ◆


「槍か……」


 観客席で試合を眺めるブラストは、アサマサが新たに振るい始めた武器を見て呟く。


 いっさい装飾の施されていない、シンプルなデザインの長槍。

 アサマサは少し距離をとって、レイルの剣捌きを対処していた。


 ただし──槍は肩に担ぎ、振るわれる剣に合わせるように一瞬動かすだけだが。


「なあ、ファル。槍って、あんな風に使う物だったか?」


「……そんなはずあるわけないでしょ。しっかりと構えて、突きだす。剣を相手にするなら、剣の届く距離に入る前に対応するのが基本のはずよ……アサマサを見てると、なんだか常識が分からなくなるけど」


 なぜ町のチンピラがするようなふざけた構え方で、学園内の序列九位の剣戟を捌くことができるのか……彼らにはそれが謎だった。


 ──解を挙げるならば、アサマサにとって槍の構え方は特に重要ではなかったからだ。


 一部の動きには特定の構えが必要となるのだが、習った動きのほぼすべてがどのような状況でも振るえるようなものばかり。


 戦闘のプロフェッショナルを師として仰ぐ彼には、こちらの世界の人々で言う傭兵のような執念染みた戦い方も身についていた。


「というか、魔法を使い始めたけどどっちも身体強化系だよな。アサマサに至っては闇属性じゃなくて無属性だし」


「いきなり使って魔力が尽きた、なんてオチじゃつまらないじゃない。それに、アサマサはいつも闇魔法は必要以上に使ってないじゃない。たぶん、あまり好んでないのよ」


 闇属性にも、“遮断強化(ペインオフ)”と呼ばれる身体強化系の魔法が存在する。

 痛覚などの戦闘の際に遮断しておきたい感覚を遮断し、連動する感覚を高める魔法だ。


 アサマサは闇魔法を魔道具を介してしか使えないため、あまり強力な魔法を扱うことはできない。


 魔道具は闇属性の魔力を生成する機能しか備わっておらず、それを魔法として形作る作業は本人がしなければならないからだ。


 そういった事情を知らない彼らは、闇属性の魔法を求められたときに戸惑うアサマサの顔が本来の意図とは異なって見えただろう。


 ただどうしていいのか分からない顔が、何かを隠すような動作に見えるなど。


  ◆   □   ◆   □   ◆


「面白いね、アサマサ。そんな構え方でぼくの剣を、しかも近づけさせてもくれないじゃないか」


「そりゃあ剣の領域に入ったら、真っ二つにお陀仏だ。足掻きに足掻くさ」


「なるほどね。君を倒すには、ぼくは今以上に強くなる必要がありそうだ。だからこそ、君との闘いは最高なんだよ」


「勘弁してくれ……。俺も限界なんだ」


 高速で振られる剣を先読みして、予めその軌道に槍を乗せて弾いてはいるが……一度でもミスったら即負けルールだぞ。


 焦りはまだしないから大丈夫だが、これ以上ペースアップするのは少しキツいかな?


 ──もう一段階、ギアを上げようか。



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