表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【異世界学園の】面倒事対処 その04【劣等従者】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

55/132

スレ55 勝者は遅れてやってくる



[負けた]


「……はい、すみません」


 控え室にやってきたクラスメイト。

 アルやファウたちも見守る中、俺は正座の状態でサーシャを見上げていた。


[勝てた]


「無理だから。あれは勝てない奴だった」


[勝てた]


「いや、そもそも出れば良いって話だっただろう? なんで、勝つところまで指定されているんですか」


 手紙の内容を要約すれば──さっさと試合に出ろ、といったものだ。

 だから仕方なく参加したわけだが、そこに勝利が必須だと言う文言は無かった。


[勝てた]


「……すみませんでした。サーシャ様のご指示に沿えず。次こそは、必ず勝利することを誓いますのでお許しを」


 学園では俺が従者。

 なので頭を垂れ、許しを請うポーズを取った……のだが。


[…………]


 わざわざ表記しなくとも、沈黙はしっかりと認識できるんだがな。


「な、なあ……アサマサ」


「どうした、ブラスト」


「お前、アイツに勝つ気なのか?」


「えっ? そりゃまあ、サーシャ様のご命令なわけなんだし。あんな戦い方じゃなくて、あらゆる手を尽くせばたぶん勝てるぞ」


 たしかに、剣術の腕前は冴えていた。

 ──だが、アイツはもっと高みにいる。


 たしかに、繊細な魔力操作ができていた。

 ──だが、アイツはもっと優れている。


 たしかに、実力は俺以上なんだろう。

 ──だが、アイツらはもっと強い。


 結局のところ、リア充君にやった方法を応用すればギリギリ勝利は掴めるだろう。

 けどそれでは、何も得ることができない。


「……相手は、あの序列九位なのよ!?」


「サーシャ様が望むんだから、そこは仕方ないさ。俺だって、本当はやりたくない」


 フェルナスが驚いているが、たしかに実力はあるヤツだったからな。


 当然、才能も可能性も限界点もアイツの方がはるか高みに位置するだろう。

 それでもなお、積み上げた技術が変わらず機能したならば……俺にも勝ち目はある。


「アル、ファウ」


「なんだ」

「ん」


「決勝戦でアイツと闘いたい。たぶん、組み合わせの方は心配ないだろう。だから頼む、そこまで二人だけで勝ってくれ」


 ただ、俺の方も準備が必要となる。

 虚無系の魔法は制限をかけているし、最適な武具を選ぶのにも悩む。


 ──ああ、別に主人公みたいに何か特殊な封印がかかっているわけじゃないんだ。

 そんなことをせずとも、凡人の才能限界などすぐに発揮される。


「そうすれば、勝利できるのか」

「……本気?」


「ああ、信じてくれ」


「そうか、ならば任せろ」

「兄さんが、きっと勝つ」


 二人はそう答えてくれた。

 よし、これでサボる理由ができたぞ!


 サーシャもここまでは読めないだろう。

 まさかここまでシリアスな展開を見せつつも、裏でこうしてサボるための口実を考えていたとはな……ふっふっふ。


[アサマサ、勝って]


「ええ、勝ってみせますとも」


 今の俺に大切なこと。

 それは──ゆっくりと眠ることだろう。






「……ん? あれ、今何時だ?」


 いつの間にか暗くなっていた。

 スマホを取りだし、時計機能を調べてみれば──すでに決勝開始時刻となっている。


「遅刻、遅刻か……うん、指示通りだ(・・・・・)


 チャットアプリを開き、自身の行動が正しかったことを確かめる。


「……というか、遅刻することになんの意味があるんだろうな。別にそれ自体は構わないけど、せめて理由が知りたかった」


 腕をうーんと伸ばし、体を解していく。

 寝ていたせいか、若干凝り固まっている。


 ゆっくりと気を練り上げ、体内で循環するように意識して回していく。


「──よし。これでいいか」


 肉体の凝りを調べる動きをしてみても、たしかな感触を掴める。

 少し荒い戦い方でも、一度だけならどうにかなるだろう。


「それじゃあ、始めるとしますか!」


  ◆   □   ◆   □   ◆


 遠くで、ギリギリでやってきた俺に対するナニカを話す声が聞こえる。


 だが、アナウンスなど気にしない。

 必要な音声は、目の前で立ちはだかる少年の声だけだ。


「……待たせたな」


「いえ、退屈はしなかったよ。チームメイトさんは、とてもお強かったです」


 チラリと視界の端の方に、申し訳なさそうな顔を浮かべる二人を見つける。

 舞台内で敗北したなら、すぐさま転送されるはずなんだけどな……戻ってきたのか。


「ぼくの前の二人は、あの女の子……ファウちゃん一人に倒されちゃったよ。Xクラスは本当に凄いんだね。彼らはSクラスの中でも選ばれた生徒だったのに」


「そりゃあ、こっちだって選抜しているんだぞ。精鋭なのはお相子様だ」


 そうか、ファウが一人で……。

 なんだか感慨深いものを感じてしまうが、それはこれまでのサボり具合を見ていたからだろうか。


「体力を戻す分にも、待機時間は助かったからね。準備は万全にできてるよ」


「こっちも準備は整えたさ。お蔭で、仇を討つことができる」


「うん、ちょっと前の闘いじゃ本気をお互いに出せなかったしね。今度こそ、高みを目指した闘いをしようじゃないか」


 高み、彼の言うソレが俺の見た一種の頂点と同じとは限らない。


「魅せてやるよ」


「何を?」


「凡人が身に着けた高みの技術さ。紛い物で劣化品だが、それでも元が凄すぎてな、勝てると自負しているよ」


「それは……うん、凄く楽しみだね」


 あーあ、どうしてこんな挑発をしなきゃならないんだよ。

 絶対、相手のやる気を上げさせるための挑発でしかないよな?



≪それでは、運命の決勝──大将戦! 勝つのは1-SクラスかXクラスか!? 学園長より開始の合図をお願いします≫



 学園長が舞台に上がってくる。

 俺たちの集中力に気づいているようで、何も言わずに合図の準備だけを整えていく。


「試合──開始だ」


 空高く上げられた空砲。

 それが決勝戦で鳴り響く音楽会、その始まりを知らせる音だった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ