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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【異世界学園の】面倒事対処 その04【劣等従者】

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スレ54 前哨戦は剣の舞で



「──あの、どうしてこんなことに」


「正々堂々、いい勝負をしようじゃないか」


 爽やかな笑みを浮かべるイケメンが、手を伸ばしてくる。

 薄ら笑いをヒクヒクとしながらもして、俺もまたその手を掴む。



≪1-SvsXクラス! どちらも準決勝への切符は勝ち取った! これは双方の実力を見るための闘い。片や序列九位、片やXクラスの大将──どちらが勝つのか!?≫



 止めて、煽らないで!

 リア充君の時はまだどうにかなったけど、さすがにコイツは死にかけるから!


「Xクラス、凄い活躍じゃないか。ここまで一度も敗北せず、勝ち続けてきた」


「それはお互い様でしょう。見てましたよ、グレイル=レイルさん」


「レイルでいいよ。だけど、代わりに君の名前も教えてね」


「アサマサだ。そう、呼んでくれ」


 ちょうど握手をしているので、こうして会話は進んでいく。

 俺もだが、レイルもまた体内では必死に魔力の生成を行っている。


(けど、やっぱり実力者は違うな。俺と違って練り方が繊細だ)


 最近分かった魔力チートだが、制御の緻密さは完全に本人依存だった。

 レイルの魔力は彼の思い通りに動くだろうが、俺の場合はそう簡単にはいかない。


 蓋が開いたせいか、暴虐的な量の魔力を扱わなければいけなくなった。


 百を出すなら簡単だが、それでは完全に人外として扱われてしまう……それは、開いた当初のことを思いだせばよく分かる。


(“虚無纏装(ボイドオプション)”があるからどうにかなると思うけど、あくまであれは補正だけだ。最低限の操作イメージは必須。気をつけないと)


 しかしまあ……どうして俺は、こんな強そうな奴を相手にしなきゃいけないんだ?


  ◆   □  回 想  □   ◆


「さて、お前の出番だぞ──アサマサ」


「いや、アルが出ればいいだろう」


 悪いが俺は、戦いたくないんだ。

 サーシャに売られた喧嘩を勝ったお前たちと違って、俺は本当に無理矢理だったし。


「そうはいかないさ。これには、お前にとって重大な理由がある」


「──っ! 俺に、だと」


 まさか、『面倒事対処シリーズ』のことがバレた! ……なんてことは無いか。

 あれは何十にもプロテクトをかけるよう、ハルカにも頼んだチャットだ。


 なんらかの方法で俺からスマホを奪ったとしても、たぶんあれを見ることだけは決してできないだろう。


「実は試合を終わらせたあと、こんな物をアサマサに渡すように頼まれた。準決勝進出を決めたら渡せともな」


「……手紙か?」


 アルに渡されたのは、一枚の手紙。

 それを受け取り、内容を見ると──


「ハァ……なるほど、こりゃあ出なきゃいけないわけだ」


「すでに準決勝は決まっているのだ。最悪不戦敗でもこちらは問題ない」

「……怒られそう」


「そうなんだよな……ハァ」


 まったく、ご主人様は厄介事を押し付けてくるものだな。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 なんて事情があり、俺はこの場に立つハメに陥ったわけだ。


「凄い、凄いですよ! ぼくの剣を捌いてくれる人は、同年代ではそう多くありませんからね!」


「あっはは……それはどうも」


「魔法を使ってはいけないという縛りが無ければ、アサマサともっと熱い闘いができたのに……残念だなぁ」


「それなら、もう終わりにして決勝まで楽しみを取っておかないか?」


 嵐のように荒々しく、それでいて水のように流れる繊細の剣捌きだ。


 だがこれも──彼の本気ではない。


 アイツらと違って筋肉を見て型が分かるというレベルには達していないが、なんとなくしっくりこないのが違和感となっている。


 いくつか持っている型の内、一番彼が使っているもの……ということでないだけだが。

 それでも、これまで対戦者を倒してきていたのは事実なので、油断はできない。


「そうはいかないよ! ぼくは君と闘って、もっと強くなりたい! だから、この段階でどこまでいけるか練習につきあってくれ!」


「練習ね……これまでの相手のこともあるんだし、言葉は考えた方が良いと思うぞ」


「おっと、それもそうだったね。けど、九位なんて座はもう必要ない。君を倒すことができたら……間違いなく、ぼくはもう一つ上の高みに昇れるよ」


 話し、納得し、笑みを浮かべるレイル。

 その笑顔に観客席の女性が年齢に問わず、キャーと歓声を上げる。


 くそっ、俺がやってもどうせギャーという悲鳴しか上がらねぇよ!


(降参すれば殺される。いや、コイツにじゃなくてサーシャに)


 少しでも試合を勝利以外の方法で終わらせようとすると、どこからともなく試合に影響が起きないギリギリの殺気が放たれる。


 その方向はサーシャが座っているはずの場所で、犯人は分かったも同然だ。


「なら、俺も少し頑張るか。ご主人様が、勝利を求めてくるんでね」


「ごめんね、アサマサ君。あとでいっしょに謝ってあげるから……ここはぼくに、勝ちを譲ってもらうよ」


「魔法を縛ってるのに、それでもなおこれだけの実力って……厄介だな」


「ぼくより序列が上の人は、それでもなお通用しないけどね」


 ……本当に、遭いたくないな。

 まあ関わる気はまったくないし、それでも構わないんだけどな。


「……分かっているよな」

「ええ、当然」



『本当の闘いは──決勝戦で!』



 この後俺はあっさり敗北し、サーシャから罰を受けることが確定したのだった。



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