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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【異世界学園の】面倒事対処 その04【劣等従者】

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スレ46 定番の学園バトルイベント



 数日後、俺のキャンパスライフは色取り取りな明るい物へと変化していた。


「あら、おはよう。サーシャ、アサマサ」

「ようサーシャ、それにアサマサ。なあアサマサ、ちょっと試してぇ魔法があんだが試してもいいか?」


「お、おはよう」

[おはよう]


 まず二人、挨拶を交わしてもらえるようになった。


 えっ、それだけだと?

 今まで存在感がないせいでスルーされていた、それが解消されて気づいてくれるだけで感動するもんだぞ。


「なあ、いいだろ? やらせろよ」


「ちょっ、その言い方止めろ!」


「あぁん? なんか問題あったか? ──とりあえず、挨拶代わりに一発!」


 結局ブラストの掌から、燃え盛る炎が放たれた。

 通常は球として放たれるそれを、どうやら渦巻く螺旋のように放っているようだ。


「サーシャ様、ヘルプミー!」

[かしこ]


 いろいろと短縮形を覚えたサーシャが、ブラストの放った魔法を盾で防ぐ。

 魔法自体は“虚無鎧(ホロウアーマー)”で防げるが、副次的に生まれた熱エネルギーは防げない。


 なのでそれも防げるサーシャに任せ、俺は後ろで待機していた。


[ガード]


 できるだけ虚無の魔法は隠しておきたいので、“虚無壁(ホロウウォール)”は使えない。

 俺は学園では無属性と魔力操作、そして気の運用しかまだ使っていないのだ。


 おまけで言えば、闇魔法も魔道具を介して少しだけ使っているけどな。


「おいアサマサいいのかよ、自分のご主人様に防がせてよぉ」


「いや、死にたくないから。サーシャ様に防げて俺に防げない。なら、サーシャ様にお願いするのは当然だろ」


[次は自分で]


「……へっ?」


 一瞬で俺の背後に立つサーシャ。

 それを咎める暇も与えられず、ブラストはニヤニヤと笑みを浮かべ始める。


「おっ、そういうことならもう一発ぶぅう」


 再び掌に魔力を溜め始めたブラストに、どこからか小さな水球が飛んでいく。


 水道を捻れば出てくる水滴を、やや大きめにしたほどのサイズの水は、それだけでブラストを弾き飛ばす威力を有していた。


「やりすぎよ、ブラスト。……いつもこのバカがごめんね、アサマサ」


「い、いや、大丈夫。毎度のことだが、サーシャ様に守ってもらっているし」


[問題なし]


 ブラストが仕掛け、俺が逃げ、サーシャが防ぎ、フェルナスが止める……この一巡が朝のパターンとなっていた。


「あ、グリアルムとファウルムもおはよう」

[二人とも、お早う]


「ああ」

「……んぅ」


 金髪二人とも挨拶(?)を交わし、ようやく席に着く。

 これまでよりも時間が掛かるが、これこそが求めていた生活なんだろう。


 アキたちに出会ってから、こうして誰かと話すことが増えていたからか……こうされた方が、案外落ち着くのだ。


「さて、今日も頑張りますか」


 予鈴が鳴り、一日の開始を告げる。

 それとほぼ同時にキンギル先生が登壇し、朝のHRが始まる。


  ◆   □   ◆   □   ◆


「えっと……クラス対抗戦?」


「お前らはまだ一年目だけど……別の国に居た時に聞いたことないのか?」


「ありますか? サーシャ様」

[いいえ、誰でも]


 まあ、言葉の響きでなんとなく内容が理解できたんだが。


 キンギル先生のためになる授業が終わり、気づけば帰りのHR。

 そこでブラストが率先して、このイベントのメンバーを決めるために盛り上がった。


「要するに、クラスの中から三人出して闘うイベントだ。このXクラスからも当然三人出すんだが……先輩の大半が登校拒否だから、俺たちはこの中からメンバーを出す必要があるんだよ」


「去年はワタシとブラスト、それに一人教室に居た先輩に出てもらったけど……途中で乱闘になって失格になったわ」


「何があったんだよ、その闘いに」


 訊いたら駄目、そう思ったがつい呟いてしまった。

 幸い誰の耳にも入らなかったので、話はそのまま進んでいく。


「今回はサーシャとアサマサもいる。せっかくだし、アルムとファウも出てみない?」


「断る」

「……んん」


「そう、残念ね」


 金髪組はあっさり却下。

 なら出るのはブラスト、フェルナス、サーシャの三人になるか。


[ブラスト、フェルナス]


「あぁん──ぐぼぅっ!」

「どうしたの? サーシャ」


 ヤンキーみたいな返事をしようとしたブラストが水魔法をくらった直後、うちの鎧騎士がとんでない発言をした。



[メンバーは、グリアルムとファウルム──そしてアサマサでFA]



 さ、サーシャァァァァァァァァッ!

 お前さんは、何を言うてはりますのっ!


「お、おい貴様! 私は出るなど──」

「……んん」

「ちょ、おい、サーシャ……様!」


 俺たちの苦言に、サーシャは長文を打って返答する。


[ブラストとフェルナスは去年出た。なら、二人が出るべし。残った人枠は、従者であるアサマサが代わりに出るから問題なし]


 などと言いやがった。

 前半の部分は納得がいくが、後半はいろいろとおかしい!


「先生、学生でない従者が対抗戦に出るのは間違ってますよね!?」


「──いえ、問題ありませんよ」


「そうですよね、問題ないですよ……え?」


「そうした例もあります。ただ、それは試合に出るのを面倒臭がった、大貴族のドラ息子でしたが。それでも前例はありますし、アサマサ君が出るのは可能なことです」


 Oh! ……少しずつ逃げ道が減ってる。

 だがまだ希望の星、金髪組の反論が残っているじゃないか。


「ふざけるな! 私は出ないぞ。こんな茶番など、そこの二人に任せておけばいい」

「……ん」


[負けるから、そう言っている]


 ちょっ、挑発はいけないよサーシャさん。

 こめかみを引くつかせる煽り耐性が無さそうなグリアルムが、勢いのままに応える。


「参加するだけ価値がないだけだ! 貴様の挑発なぞ、引っかかるか」


[なら、賭け]


「賭けだと?」


 ……ヲイ、ちょっと待て。

 なんだか凄く嫌な予感が──


[アサマサと二対一で勝負。負けた方は対抗戦に参加する]


「お、おい、ちょっと待ってサーシャ様、それって俺が勝っても負けても、全然意味ないじゃない──」


「良いだろう! それで構わない」

「……ん」


 テメェラァァァァァァッ!

 絶対グルだろ、どうせグルなんだろ?


[勝ちなさい、アサマサ]


「……はい」


 そして、キンギル先生が訓練場の予約を取れた翌日、俺と金髪組との戦いが幕を開く。



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