スレ44 覚醒する力(笑)
「……さて、ならどうするべきか」
Xクラスは幸いなことに、自由時間が多いクラスであった。
キンギル先生の素晴らしい授業は、真面目に聞いてさえいればゴブリンでも理解できると評判らしい……じゃあ、どうしてXクラスの担任なんだろうか。
独りで授業を教えているので、いろいろと調整ができる。
複数の教科を分かりやすいように重用して説明し、一度の授業で複数の単位を取らせるという荒業を行っていた。
──問題はありません、この学園はいろいろと適当らしいので。
というより、俺って従者だからな。
そもそも授業受ける必要ないじゃんって、今さら気づいてため息を吐いたり……。
それでもいちおう、授業は受けてしまうのが日本人としての習性なんだとよく感じる。
行く必要はないのに、なんだか行かないといけないという意味のない使命感に襲われるのだ。
というわけで、今日も授業を必死に受けて居ます──“虚像偶像”が。
「いや、どっちも俺だしな」
感覚の共有ができるので、授業の音声はいつも耳に入れている。
たとえば……ほら──
『──このようにして、ポーションは……』
今は薬草学だかポーション学をやっている最中、うちのパーティーに回復は必要ないので耳にするだけだ。
俺もサーシャも、自動回復できるからな。
まあ、そんなこんなで特訓を始めます。
場所は誰も居ない荒野、転移石を使って移動しました。
「──“魔力弾”」
聞いたばかりの魔法を唱え、目の前に広がる壁に向けて放つ。
すると、小さな魔力の球体が現れ、真っ直ぐに壁にぶつかり──
「……地味だ」
小さな爆発と土煙を残し、消滅した。
……もしかして、蓋を一度開いたせいで魔力がおかしくなったのか?
「──“虚無限弾”」
そう思い放つのは、これまでも世話になってきた基本の魔法“虚無限弾”。
もともと、銃弾補充を零にしたいがためにイメージした弾丸の魔法なので、球体とは異なり魔力の形は銃弾と酷似している。
「……やっぱり、普通にできてるのか」
これまでと同様に、壁を貫通してどこかへ飛んでいきました。
心配だったから、いつもより多めに魔力を籠めたんだが……大丈夫か?
この後魔力を最小限にしてみたが、それでも“虚無限弾”はこれまで通り機能した。
つまり、まったく異なる魔法なんだろう。
俺が今まで無魔法だと思っていたもの。
それは、無魔法ではないナニカであったという証明だ。
同じであったならば、“魔力弾”は同等の威力を出せていたからな。
「ステータスは…………って、虚無魔法?」
魔力と同様、俺自身が俺のステータスに不信を抱くことで内容が書き換わった。
これまで無魔法が記されていた場所へ、新たに虚無魔法が置かれている。
えっ、なんだよ(虚無魔法)って?
……ああ、だから虚無○○とか虚無○○って魔法を思いつくのが多かったのか。
詠唱の際はカタカナ読みだったとはいえ、どうして気づかなかったんだろう。
「──“魔力壁”、“身体強化”。あと……“虚無壁”、“虚無限化”。あっ、やっぱりそうだったのか」
圧倒的な性能の差、それが今はっきりと認識できた。
魔力の壁は投げた石で壊れ、身体強化はバランスが取りづらい。
虚無の壁は何物も通さず、虚無の身に宿せば万物を破壊した。
……うん、これで違いがないなんて絶対に言えないし、間違えることもないだろう。
「どういうことだよ! アキえも~ん!!」
困ったときは、やっぱりこれだよな。
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参加者:アサマサ以外
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アキ:……凄い久しぶりな気がするな
というか、ついに気づいた
ハルカ:まあ、自覚したら分かるようにプログラムの方も偽装してましたし
フユツグ:……というか、なんで勇者に願ってるんだよ
ここは俺の出番だろ
ナツキ:それこそないわよ
アキ:俺が行った世界なんだ、構わないだろ
自分が行った世界に朝政が行ったら、剣聖が説明してやりゃあ問題なし
リホ:……むぅ、案内できない
ユキ:某にも無理だな
ケント:っていうかよ、そもそも時間の流れとか大丈夫なのか
ハルカ:自分が行ったときよりも後ならば、自由に調整可能ですよ
ミランダ:ふっ、その程度
我の魔導であれば時空を超越することも容易いわ
アキ:虚無魔法なんて、どうやったら使えるものなんだろうな
賢者、何か知らないのか?
ハルカ:とっくに調べてますけど……
これまでに虚無属性を使いこなした人間に関する情報が無いんですよ
多元世界に接続して調査しているんですが、少なくとも転移者・転生者の中に虚無属性の使い手はいないようです
ナツキ:じゃあ何よ
オンリーワンってこと?
ハルカ:神にはそれらしいのもあるんですけどね
星を生み出したエネルギーを、どこでもない空間から生み出した、といった伝承がある世界も存在しますので
フユツグ:まあ、アイツの能力からしてある意味神に近いからな
ケント:魔法はスゲェにしても、武術の方はまだまだだけどな
魔法とどこまで絡められるか……そこが問題だな
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この後、朝政の新たな戦闘スタイルについて激しく論争があったらしい。




