スレ43 仲間はずれな無属性
「[ごちそうさまでした]」
Aセット、美味しゅうございました。
一番安い……というか無料のAセットだけど、それでも貴族が居るような学園だ。
料理人も一流の人を連れてきているみたいで、満足のいく味をしていた。
料理を片付けると、サーシャに言う。
「……さて、それじゃあ行きますか」
[り]
朝食を食べ終えれば教室にGOである。
無限の魔力を持っていようと、結局俺の存在感は希薄だったようで……。
「うん、分かっていたさ。でも、もしかしたらって思っても良いじゃないか。ハハハッ、バカみたいだよな俺。向こうでどうにかなったからって、こっちでもそんな高望みなんてしちゃってさ……」
誰も近づかない俺の席の周辺。
サーシャは気づいているのだが、仲の良い友達に絡まれているので来ない。
嗚呼、ボッチスペース。
普段なら否定して取り繕うところだが、今回ばかりは肯定しようではないか。
よくあるよな、教室の中でそういう場所。
ボッチが居るからボッチスペースなのか、ボッチスペースだからボッチが居るのか。
鶏が先か卵が先か、そんな感じだった。
「……さっぱり分からん」
Xクラスは特別、なんと全教科をキンギル先生が受け持っているようだ。
キンギル先生にそこまでの重苦を背負わせる学園を嘆くべきか、全教科に対応した優秀なキンギル先生を称えるべきか、キンギル先生に授業をさせているXクラス(俺込み)を憐れむべきか……。
俺としては、称えるのが正解だと思う。
「──であるので、適応属性との親和性が、魔法の行使には重要なことと──」
今は、魔法学とやらをお勉強中だ。
適応属性? 何もないからこその無属性ですけど何か?
黒髪なので闇魔法の使い手っぽく見えますけど、実際の適応係数は0ですから。
この世界で無属性の適性が高い奴は、髪の色が中途半端になるらしい。
……ただ、特に濃くもなく薄くもなく、家系の遺伝に沿った染色体が定めた色になるだけだぞ。
「基本属性の火・水・風・土の四つに、光・闇の二つ。さらに無属性を合わせて、七大属性と呼ぶ。君たちで言うなら、ブラスト君が火、フェルナス君が風、グリアルム君とファウルム君が光になるね。アサマサ君は闇なのかな? サーシャ君は……分からないなぁ」
初めて聞いた金髪二人の名前。
七大属性云々は知っていたので構わないけど、クラスメイトの名前が教師の口から出てようやく知れるってどうなのかな?
いや、よくあった話だけれども。
「七大属性に良し悪しはあまり無い、籠められた魔力の量や発動者の強さで魔法同士のぶつかり合いの結果は出る。使う魔法によっては、若干の相性もあるみたいだけど……それも、工夫次第だ。逆に魔物を狙って当てる場合は、火は水で消される……といったことがあるよ」
「魔物は魔力を持った生き物だ。魔物が使った魔法ならさっき言ったようにぶつかり合いになるけれど、魔物自体に当てようとするなら、どうなるかを考えてから使おうか」
魔法を対象とした魔法による攻撃は、キンギル先生が言った通り本人がどれだけ優れているかで勝敗が決まる。
どちらも魔力を基に生成されているため、自然現象とは異なる相克や相殺が生まれるらしい。
だが魔物、魔に染められた生物にはそうもいかないらしく、相手がいちおうでも生身を持つのならば、自然現象が魔法に作用するとのことだ。
つまり、魔法同士の勝負ならばパワー・イズ・オールとなり、魔物との戦いはテクニック・イズ・オールとなるのだ。
あくまで、魔法のみで戦う時だけだがな。
「それじゃあ先生よぉ、無属性と魔力そのままを使うってのは何か違いがあんのか?」
「いいえ、ありませんよ」
ブラストのそんな質問に、あっさり答えるキンギル先生。
……え゛っ、無いの?
「無属性はその他、と言った捉え方ができます。他の六属性と異なり、魔力さえあれば誰でも使えますからね。使えない人は魔力を持たない、もしくは放出できない人だけ。それ以外の人は全員が可能です」
まあ、だからこそ俺でも無属性魔法が使えているんだけどさ。
「“身体強化”や“魔力弾”、“魔力壁”なのが有名ですね。これらは六大魔法にも類似した魔法がありますが、もっとも純粋な形で魔力を籠められるので、属性適性に関係なくある程度の威力が出せます」
「つまり、適正が他の属性にある人には意味がないということですか?」
「そういうことでもありませんよ。どのような相手でも、通用するということですから。相手が自分の属性に耐性を持っている時、無属性魔法なら自分の属性魔法よりもダメージが与えられるかもしれません」
かもしれない……微妙なんだな。
持っている魔道具では、最低限の魔法しか打てないから考えておかないと。
俺の使える魔法は、未熟な状態のリア充君ならどうにか倒せる程度のものでしかない。
これではアキたちから聞いたような強い魔物や人間に遭ったとき──殺される。
サーシャも守ってはくれるが、それでも彼女は一人しかいない。
俺自身が生き残るための力を手に入れる必要が、今あるんだ。
魔力だけでもなく、武術だけでもなく──すべてに対応できる圧倒的なナニカが。




