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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【異世界学園の】面倒事対処 その04【劣等従者】

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スレ41 先生から殺意の視線



 地球での学生生活において、特に面白いことがあったというわけでもない。

 普通に登校し、普通に授業を受け、普通に帰宅する。


 勉強も運動もある程度ならばできるので、モブDぐらいにはなれていただろう。


 アキたちと会ってからは……ほんの少しだけ、変化が起こる。

 だけど、それは俺という人間の物語にであり、学生生活への変化は無かった。


「──つまり、俺は学生としてやっていけると思っていたんだ」


[空気]


「いいよな、そっちは盛り上がって」


 初日が終了して、学生寮にいる。

 御付きの人は主と同じ部屋も可能なので、サーシャの部屋で同居となった。


 サーシャはあれからフェルナスと仲良くなり、それからブラス何某改めブラストと話すようになったらしい。


 やはり予想通りなのだが、ブラストは火属性、フェルナスは風属性を得意としていた。


 フェルナスは水魔法も使えるようだが、何やら隠していることがあったそうだ……俺、完全にハブられていたから知らない。 


[絡めばいい]


「やだよ、おんぶにだっこじゃ示しがつかないじゃないか。それより、クラスメイトとは仲良くやれているか?」


[みんな、イイ人]


 その後教師が現れ、授業が始まった。


 教師の名は『キンギル』、髪色は焦げ茶色で属性適性が高いわけではないらしいが……魔力量が半端では無かったので、たぶん強力なスキルでも持っていると思われる。


 温厚そうな中年の教師だが、どうしても弱いと言うイメージが湧かなかった……理由はその後判明した。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 それは、戦闘訓練の最中のことである。

 自己紹介を終えても空気な俺は、独り寂しく訓練場の隅でボーっとしていた。


 サーシャは構ってくれそうだったが、フェルナスとの交友を深めろと言う俺の指示でこの場所には居ない。


「ハァ……空は青いな」


 異世界だろうと世界は美しく、澄んだ青空が上空には広がっている。

 独りでできる訓練を行い、時間を潰しているとキンギル先生が俺の下にやってきた。


「アサマサ君、どうしたんだい?」


「あっ、いえ……私って空気だなって思いまして。私より、サーシャ様の方が人気ですしね。何より……従者ですから」


「それはそうですよ、気配を薄めるスキルを使っていればそうなります」


「やっぱり、そうですよね…………えっ? 気配を薄めるスキル?」


「おや、自分では気づいていなかったのですか? 君からは、それを使っている気配がしたのですが」


 ステータスを確認しても、そのようなスキルは見つからない。

 しかし、魔道具を使って俺の気配を調べてみると……本当に、気配が薄かった。


「先生!」


「ど、どうしたんですか?」


「お、俺──友達が欲しいです!」


 先生相手だと言うことで一人称を変えていたのだが、それも忘れて懇願していた。

 スルーは嫌なのだ、せめて存在に気付いてもらえるようになりたいのだ!


「アサマサ君、諦めたらそこで戦闘終了ですよ……?」


「先生……っ!」


 どこかで聞いたことのあるような台詞(セリフ)、その異世界バージョンを聞いたがそこは気にしない。

 それから少し、先生に指導してもらった。


「──要するに、気配を別のモノで補えばいいんですよ。魔力でも気力でも、それ以外のモノでも。サーシャさんといっしょに居る間は、分かってもらえたんですよね?」


「はい、でも……いなくなると全然気づいてもらえなくて……」


 旅の途中でも、そういったことはよくあったのだが、その頃はこの世界に馴染むので精一杯だったので気にしていなかった。


 だが、地球と同じ学生と言う立場に就いたというのに、こうもハッキリと違う点を感じるのは嫌だったのだ。


 ……ただ、先生の話を聞いていて一つの仮説が浮かぶ。

 俺の気配、サーシャに持ってかれたんじゃないのか?


 今までは「あっ、いたんだ!」ぐらいだったのに、「……えっ、誰?」という段階にまで進行している。


「まあ、とにかくやってみましょう。まずは魔力を周囲に放ってみましょうか」


「は、はい」


「ただし、隠そうとせずにね」


 返事の代わりに魔力を解放する。

 俺の魔力は100程度しかないので、隠すのも練習すればすぐにできた。






 それを解き放った──その瞬間。


「……えっ?」


「サーシャ君、どいてくれませんか?」


[何をする気だった]


 突然、どこからか取り出した黒塗りのナイフを振り翳した先生から、サーシャが俺の前に出て庇ってくれる。


 登校時に使った盾ではなく、アーサー王の伝説にも出たプリドウュエンを使っているあたり、かなり危険だったのだろう。


「この量はいけない、封印せねばならない」


[早く、早く魔力を閉まって]


「……あ、ああ」


 言われるがままに魔力を再び隠し、周囲を見渡すと……全員倒れていた。

 俺、覇王の(オーラ)とかあったかな?


「サーシャ、いったい何が起きたんだ」


[強すぎる魔力に、全員気絶した]


「いや、おかしいだろ。俺の魔力は100しかないんだぞ?」


 100という魔力量に、ここまでの事件を引き起こす危険性は無い。


 それならあのリア充君は、俺の10倍のことができることになる……うん、なら負けてるはずだ。


「……アサマサ君、魔水晶に触れたことはありますか?」


「はい、それで100と分かったんです」


「それが君のスキル、というのは無いか。先ほどのアレは、間違いなく100の魔力でできることじゃありませんよ」


「……そうなんですか」


 よく分からないが、ステータスの情報は間違っていたのだろうか。

 慌ててステータスをもう一度見てみると、表記に変化が──


(えっ、魔力無限(MP:∞)……どういうこっちゃ?)


 こんなことが起きたのが、学園生活初日のことである。



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