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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【異世界学園の】面倒事対処 その04【劣等従者】

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スレ39 噂の大半は事実



『──若人たちよ、今この瞬間を謳歌するがよい! この学園で何を望むか、それは君たち一人一人異なるだろう。だが、この学園はどんな者であろうと受け入れる。普人であろうと亜人であろうと魔物であろうと……この学園に居る限り、全員が同じ学生だ』


『──遊べ、学べ、強くなれ! 勉学で強くなるのも良いし、武力で強くなるのもよし、方向性などどうでもいい、生きるだけの力をここで手に入れろ! この学園は強さ至上主義、強くなり自由を手に入れるのだ!!』


 この言葉は、学園長が入学式で放った言葉であるらしい。

 らしい……というのは、スマホで録画しておいただけで熟睡していたからだ。


 話が長いというのは異世界共通だった。

 タラタラと念仏を聞かされていては、寝てしまうのは仕方ないだろう。


 起きる必要があればサーシャが起こしてくれると言ってくれたので、安心して寝ることができた。


「……ん? もう終わったのか」


[頑張れ、新人]


「へー、それならそれだけ言えばいいのに」


 内容を簡潔に纏めてくれるので、本当に訊かずに済んだ……何を頑張るんだろう。


[偉い人は、それらしい長い言葉を作らないとダメ]


「大変なんだな」


[大変だった]


 種族がロードになるぐらいなので、もともとは偉い地位に就いていたのだろう。

 サーシャの過去は置いておくとして、入学式が行われた学堂から離れる。


「たしか教室は……Xクラスだっけ?」


[そう]


「Sじゃないのは残念だけど、問題児がいっぱいいるらしいな。サーシャ、いったい試験で何したんだ?」


[別に、特に何も]


 視線を逸らされての発言を、俺は信じていいのだろうか。


 試験中に絡んで来た貴族の坊ちゃんをイジメたとか、試験官を相手に無双しまくったとか……まあ、王道だとこんな感じかな?


 本当はもう一つ、魔法が使えないという理由を挙げられたのだが……魔物に変質し、俺と契約して変わったらしく、それじゃないとのことだ。


 まあ、武具創造などというチートスキルの持ち主には、魔法使用不可能ぐらいのハンデがあった方が良いと神様も思うよな。


 それが今では制限解除……鎧騎士はチートの塊だそうです。


「クラスメイト、誰か会ったことあるか?」


[誰が同じか、分からない]


「それもそっか。じゃあ、会ってからのお楽しみってことか」


[貴方は従者として、だけれど]


「うぐっ。と、とにかく行くぞ!」


[り]


 今さらだが、どうして誰も俺たちに話しかけてこないと思う?

 答えは簡単、サーシャは全身甲冑の上からブレザーを着た変人だからだ。


 頑なに武装解除を拒むので、俺も大人しく放置を選択した。


 俺たち……というよりサーシャを見た生徒たちは、黙って道を開けてくれる。

 ヒソヒソと何か言っている気がするので、暇潰しで聴覚強化をして聴いてみると──



「おい、見ろよあの甲冑。あれが噂になってる奴じゃね?」「噂って、試験官を叩きのめしたってヤツか?」「いや、王族からの話をガン無視して攻撃したってヤツ」「あ、それ聞いた聞いた。Sクラスに入ったハウンド国の王子様のことだろ?」「新入生に知り合いが居るんだけど、ちょうどそれを目撃したらしいんだ。詰め寄ってるその王子様の話を聞かないでいるあの甲冑に、魔法を撃とうとしたら逆に王子様が吹き飛ばされたらしいぞ」



「……おい、本当に何もしてないのか?」


[信じるも信じないも、貴方次第]


 そんな風に誤魔化すが──



「そういやお前も、試験官がどうこうって今言ってたよな?」「ああ、俺の聞いた噂だとさ、あのヴァンク先生が一瞬で倒されたらしいんだ」「マジで!? あの人って、実は元Aランクの冒険者だったんだろ?」「だからアイツはそれ以上の強い奴なんだよ」



「…………本当に、何もしてないのか?」


[信じるも信じないも、貴方次第]


「使い回してんじゃねぇよ」


 うわさは多分、真実だろう。

 新入生がサーシャを見て、怖がっていた理由もこれで納得だ。


 まったく、初っ端からいったい試験で何をしているん──



「それじゃあ、あの隣の奴は誰だよ?」「いや、知らないな」「そもそもアイツ、地味すぎないか?」「ああ、平凡って言葉が擬人化したような奴だよな」「……ん? あ、思いだした! アイツ、属性魔法がまったく使えないし、戦闘スキルもまったく持ってないからって試験に落ちた奴だ!」「それってまさか、テストも全然いい成績が取れなかったっていう受験することすら烏滸がましいほどバカな奴が居たって噂か?」「アイツ、あの甲冑の奴に金でも渡して、従者として潜りこんだのか?」「うわっ! 自分が入れなかったからって、ドラゴンの皮を被るゴブリンみたいなことをする奴って本当にいるのかよ……ああいう奴には、絶対になりたくないよな」



[大丈夫、金じゃ動かないから]


「…………そう、だよな。サーシャは金じゃ無くて、忠誠を誓ってくれた騎士だもんな。金なんかで動くような奴じゃないもんな」


 それで動かせるなら、迷宮でもいちいち苦労する必要が無かっただろう。


[貴方がたとえこの学園でどう言われても、絶対に守り抜くから……だから泣かないで]


「な、泣いてなんかないんだから……って、いやいや、なんで武器出してんだよ」


 滲んだ視界が捉えたのは、ハンカチ……代わりの布でできた武器と、禍々しい魔剣を生みだしたサーシャの姿だった。


[とりあえず、貴方のことをバカにしたら痛い目に合うってウワサを流す]


「待って! それはウワサじゃなくて真実になっちゃうから!」


 必死にサーシャを説得して、どうにか噂を流そうとするのは抑えてもらった。

 ただ、サーシャの優しさは、地球に居る奴らに似ていて……ちょっと嬉しかったな。



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