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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【募集中】面倒事対処 その03【仲間】

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スレ34 異世界特有の忠誠儀式



 互いに剣を鞘に仕舞おうとする──


「ゴフッ……!」


 が、俺はそこで吐血をし、体の力が一気に抜けて倒れ込んでしまう。

 どうにか剣を支えとして倒れるのだけは耐えるが、それでも刻一刻と脱力していく。


(……見たくはないが、見るしかないよな)


 首を動かし、燃えるように熱く感じる腹部の辺りを確認してみると。


 覗いて見えた腹には……綺麗な線が一本、横の線として引かれていた。

 そこからは赤い液体がドバドバと流れ出ており、さながら滝のようにも思える。


(……うん、ヤバいな。神経は麻痺させてるから今はどうにかなるけど、このまま放置してたら……死ぬ)


 自分の中で現状を把握すると、治癒を速やかに行う。

 その術を、俺はアイツらからきつく叩き込まれているのだ。


 大きく息を吸って気を練り上げると、細胞内に気が染み渡る様子をイメージして活性化させる。


 同時に魔力による身体能力の向上も行っていき、再生力の向上を図っていく。


「ふぅ……。これでとりあえずは大丈夫か」


 体はある程度、自由に動くようになった。

 すぐ“虚無庫(ストレージ)”から最上級のポーションを取りだして、一気に口に含む。


 すると、必死に治癒していたのがバカらしく感じるほどに、一瞬で体の傷が巻き戻るように治っていく。


「さて、鎧騎士の方はっと……おいおい、まだ戦えるのかよ」


 鎧騎士の方を見てみると、ガタガタと鎧を鳴らしながらも立ち上がろうとしていた。


 俺としては鎧を真っ二つにする予定だったのだが、鎧騎士の方で斬撃を流すように動いたのだろう。


 鎧に残る傷も、自己修復機能か何かが付いているのか直り始めている。

 鎧騎士は再び剣を握っており、少しずつ、少しずつこちらへ近づこうとしていた。


「ヤバいな、いつまで経っても勝てる気がしない。壊すだけだったらたぶんどうにかなるだろうけど……迷宮もいっしょにだしな」


 いわゆる『魔ダンテ』をイメージしてくれると、説明が早くて済む。

 それを武器を使って行うことで、一種の爆弾として使えるぞ。


 ……ただ、爆弾は爆弾でも核とか水の爆弾だけどな。


 鎧騎士は立ち上がり、ガシャンガシャンと音を鳴らして向かってくる。


「鎧の騎士。お前がまだ来るなら、こっちも奥の手を……って、あれ?」


 本当に魔ダンテを使おうかと思っていた矢先、不思議なことが起きて戸惑ってしまう。

 それは、鎧騎士の行動にあった。


『…………』


「えっ? いや、なんでそのポーズ?」


 鎧騎士は地面に膝を突いて身を屈めた──いわゆる跪いた状態になっている。

 剣は俺と鎧騎士の間に突き刺され、すぐに鎧騎士を殺せるような状態だ。


 俺の油断を誘って、新しく武器を創って殺す算段かとも思ったが、俺がずっと鎧騎士を観察しても何もしなかったことから……おそらく本当に、そのポーズが意味する通りのことをしたいのだろう。


「えっと、そのポーズは忠誠を誓うっていうポーズだよな?」


『……(コクコク)』


 ガチャガチャと揺れる冑を振り、肯定の意思を示してくる。

 それを見た俺は、とある物を“虚無庫”から取りだして握り締めておく。


 疑うようなことはなく、自然とこの選択を選んだ。

 突き刺さった剣を抜き、鎧騎士の肩に当てて告げる──


「俺の騎士になる者よ。汝、たとえその身が朽ち果てようとも、自身の願いし誓いを果たそうと努めるか?」


『……?』


 首を傾げる鎧騎士。

 まあ、俺のオリジナルだしな。


「俺は細かいことは分からないし、騎士道も少ししか学んでいない。俺はお前に、自由になってもらいたい。俺からお前に願うのは唯一つ──新たな生を謳歌しろ。……汝、そのことを誓うか?」


『……(コクコク)』


 頷く鎧騎士の姿を確認すると、当てていた剣を鎧騎士の前に突きだす。

 鎧騎士はそれを見ると、その刃に口づけをする……甲冑越しだけど。


 こちらの世界では魔力が明確に存在しているので、剣に魔力を籠めた状態で騎士に突き出し、それに口づけをすることで誓いが成立するらしい。


 籠められた魔力の量は、騎士への期待度にも反映されるのだとか。

 なので、お偉い様方は最高級の鉱石で剣を作り、自分の魔力以上の魔力を魔石を使って注いでいるぞ。


 俺の場合は……とりあえず、この剣が受け止められる最大量を籠めてみた。

 結構籠めたが、なかなか満タンにならないので正直焦ったぞ。


 ──そして、ここからはオリジナルだ。


「『我に忠誠を誓いし誇り高き騎士(ナイト)よ、汝のその忠誠は神より祝福されし行いだ。故に祝福を授けよう。全ての戒めを解き放ち、我に相応しき騎士へとなることを願わん』」


『……!』


 祝詞(のりと)を述べて剣と同時に魔力を籠めていた物──指輪を鎧騎士の掌に載せる。


 この指輪はデュラハンを倒した際にドロップした物で、この場で使うべきアイテムだ。


 名前は『忠誠の指輪』──騎士のみが装備可能な指輪らしい。

 効果は忠誠の深さによって、肉体を最盛期にするというもの。


 そう、アンデッドであれば元の体に戻るという超激レアアイテムだ。

 もちろん、こんな代物は世に出回ることは少なく、チャットでこの指輪を鑑定してたらみんなから質問の嵐であった。


 本当は使うこともなさそうだし、どこかで売るか誰かにあげようとかと思っていたが、最後の最後で騎士のアンデッドが忠誠を誓ってくれるなら……とその指輪を渡してみた。


「告白じゃないから安心してくれ。いつか、お前を元の姿に戻すための魔道具だ。サイズ調整の効果もあるから、邪魔にならない場所にでも嵌めてくれ」


『…………』


「えっ、俺がやれ? ……まあ、主が剣を当てるんだしそれもそうか」


 首を何度も横に振る鎧騎士に負け、大人しく指輪を嵌めようとする。


「じゃあ、左手の親指……それは駄目。なら右手の……それもか!?」


 いろいろな場所に嵌めようとするのだが、全部横に振られてしまう。

 ──そして、残ったのは一ヶ所。


「……意味分かってんのか?」


『……(コクコク)』


「……まあ、こっちだと違う意味になるのかもしれないか。あとで誰かに確認しよう」


 仕方なく残った最後の場所──左手の薬指に指輪を嵌めようとすると、手甲によって一回り太い指に合わせて指輪が大きくなった。


「よし、これでバッチリ……って今度はいったいなんだよ!」


 指輪を嵌めたその瞬間、鎧騎士が眩く輝きだす。


「目が、目がぁ~!」


 その閃光に目をやられ、一時視界を遮られてしまう。


 そして視界が戻った時、目の前には──



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