表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【迷宮は】面倒事対処 その02【宝庫】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/132

スレ26 魔法ではなく石



 壊れてしまったセリさんを宥め、とりあえず(うずくま)るのだけは止めてもらう。


 そしてしばらくすると、セリさんが独白を始めた。


「──もともと、一族でもあまり優れた者ではなかったのだ私は」


「……はあ」


「努力をして、どうにかとある地域で魔王を冠することはできた……が、それでも真の魔王にはなることができなかった」


「なるほど」


 最初に会った魔王は、覚醒済みの真の魔王だったからな。

 もうその差についてもすでに勉強済みだ。


 けど、あんまり違いは無かったんだがな。


「覚醒しやすい家系……そう言えば分かるだろうか。しかし、それでも私は覚醒することはできなかった。だからこそ、一族の宝珠を用いて覚醒を計ろうとしたんだ」


「できたじゃないですか。おめでとうございます、セリさん」


「アサマサに、アサマサに負けてるじゃないか! 魔王に特化した勇者でもなく、属性を持たないアサマサに!」


「な、なんかすみません!」


 セリさんのその裂帛に染みた叫び声に、ついこちらも大声で謝ってしまった。

 たしかにな、俺みたいな凡人に負けたら魔王としていろいろとあるんだろう。


 俺には無魔法しか無いんだし、セリさんが魔力を吸収しようとするだけで、純粋な魔力の塊を放出する俺の魔法なんて……きっとすぐに対策できるんだけど。


 俺も俺で死にたくはないから、それなりに対応策を潰していってはいるけどね。


「それで、セリさんはこれからどうするつもりですか? 真の魔王としてはまだ未熟な状態ですけど、それもいつかは完全に定着してセリさんの力になりますしね」


「……アサマサは何でも知っているな」


「俺は何にも知りませんよ。知っているのは別の人ですよ。俺はこの後、一人で旅をする予定ですので……あっ、これをどうぞ」


 そう言い、“虚無庫(ストレージ)”から掌サイズの箱を差し出す。

 ……まあ、タブレットだな。


「いろいろと便利な魔道具ですので、特別にセリさんへプレゼントします。ああ、使い方はですね――」


「ちょ、ちょっとアサマサ……」


「いっぱいあるから配っているんですよ。ここで遇ったのも何かの縁。ぜひセリさんに受け取って欲しいんですよ」


 昔読んだ小説に、自作のパソコンを配るというモノがあった。

 なので、俺も異世界人との交流を……と相談したら、複数の端末を送ってくれたのだ。


 一部制限もあるが、ハルカが作ったアプリの使用には困らないから問題は無い。


「──とまあ、だいたいこんな感じです」


「なるほど……つまり、対話鏡や伝念紙のような魔道具の複合型か。しかし、遥かにそれらの性能を超えている代物だぞ。これを売ればアサマサには、おそらく巨万の富が手に入るはずだが……」


「あっ、これは知り合いにしか渡さないって決めてるんですよ。それに、そこまで在庫があるわけじゃないですし……知らない人に渡して悪用されたら困りますしね」


 説明されなければ言語設定も困るだろうから、まあありえないとは思うが──それなりに便利過ぎる機能も登載されている。


 あと、知り合い以外が持っているのは、ハルカも嫌だろうし……俺の知り合いは自分の知り合いと言っていたから、俺が渡す分は構わないと思う。


  ◆   □  解 散  □   ◆


 セリさんは展開していた空間を解除した後に、この場を去った。

 魔王の宝珠以外の物に、手を付けることは無かったな。


「さて、俺も探し物をするか」


 もともとここに来たのには俺自身の目的が有るためであり、決してセリさんのためだけに来たわけではない。


 ──そう、『面倒事対処シリーズ』に記されたアイテムを回収しに来たのだ。


「……えっと、どこらへんにあるのかな~」


 奪われたので鑑定スキルは使えないのが、とっくに見るだけで魔具を見分ける方法を教わっているので目的の物は分かる。


 ゲームで言えば超激レア認定されるアイテムばかりが散らかっているが、殆どの物には使うのに条件がいるので俺には使うことができない。


「……まあ、それでも頼まれたから持っていくけどよ」

(──“虚無庫”)


 今まで遠回しな説明で誤魔化していた気もするが、このダンジョンはアキが攻略した場所である。


 なので宝物庫の鍵となるハンコも持っていたし、魔王の宝珠に関しても知っていた。


 ──そんなアキから、宝物庫の中身を全部持ってきてほしいと言われている。

 宝珠に関してはあとで謝罪するが、それでも他の物は全部持って帰るつもりだぞ。


「無限に水が出てくる水筒に、空を歩けるようになる靴。それに……ああ、これが転移用の魔道具か?」


 俺が手にしているのは、掌サイズの翡翠色の結晶である。


 ……ゲーマーには分かる人もいるかも知れないが、アキがこの世界で作った知り合いと共に作り上げたかなり貴重な魔道具らしい。


 イメージするならメガの方だな。

 ただ、一度行った場所にしかいけないらしく、俺自身が世界を巡る必要はあるが。


「あとは、ここから脱出するだけだ。確か、最下層に転送陣が出るんだよな」


 セリさんは便利な魔王スキルで空間に穴を開けて脱出していった。

 ……本当に、便利な力だな。


 だが、ただの無魔法にそんなことができるわけもなく、俺はちゃんと正規の方法で脱出せねばならない。


「……よし、じゃあ出るか」


 あっ、宝物庫を探している時にすでに転送陣が出る条件である、ダンジョンの守護者は討伐済みだぞ。


 ほら、この場所ってダンジョンの一番下にあるからさ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ