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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【祭りの始まり】面倒事対処 その06【無数の戦付き】

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131/131

スレ131 ダンジョンに悲鳴を響かせるのは間違っているだろう

皆さん、大変お待たせしました!



「よく来てくれたな、聖女様」


「は、はい」


「そう固くならないでほしい。隣に居るアサマサ君のように、『おっはー』と言ってくれても構わないのだぞ?」


「そんなこと言った覚えはありませんし、そもそも今は昼ですよ」


 そうだったな、と語るのは学園の長であるアールサウム・グランディン。

 英傑の風格を纏う彼に緊張するアヤさんだが、その話術に緊張も解れていった。


「聖女様……いや、アヤ君。君には迷宮(ダンジョン)の最深部へ行ってもらいたいのだ」


「えっ? ……ア、アサマサ君、迷宮ってごれくらいの深さなのかな?」


「深度百層、最難関の迷宮だ」


「む、無理無理無理無理! わ、私、まだ五十層ぐらいまでしか経験ありません!」


 ずいぶんと無理を連呼しているようだが、経験した階層の倍だしな……俺も無理難題をアイツらに突きつけられた時は、必死に抗おうとしたものだ──初期はな。


 五十でも充分に潜っていると言いたいが、残念なことに深ければ深いほど難易度も高くなるので、五十は熟練冒険者なら朝飯前だ。


 もっと分かりやすい例を挙げるなら……この学園で、俺に挑んできた奴らが徒党を組めば短期間で攻略できるレベルである。


 そういった感じで、誰も彼もがより高度な技術を披露してきて、俺は後戻りができなくなっていたんだよな……(遠い目)。


「安心したまえ、君の護衛としてアサマサ君が付くことになる。彼はすでに百層まで到達した経験があるからな」


「え゛っ……?」


「なんせ彼は学園序列十位、この学園の中で十指に入る実力の持ち主なんだぞ」


「────」


 もう口からは何も発さず、ただ目だけが彼女の心情を物語っていた。

 ……何やっているの、と必死に訴えかけてきている。


「いろいろあったんだよ。さっき言っていた情報も、力を得る過程で知ったモノだ」


「な、なるほど……」


「それより。学園長、まさか正攻法で百層を進んでくれ……なんて言いませんよね?」


「もちろんだ。序列者の権利は剥奪されないから、君は同行者を連れてそれを使うだけでいい……かもしれないな」


 物凄くフラグっぽいことを言われ、少々憂鬱になるが……そもそも迷宮自体には先ほど入っているので、問題ないだろうと自分を誤魔化して部屋を出るのだった。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 学園の迷宮を移動するには、レイルのように空間魔法が使えなければならない。

 魔道具で補うこともできるかもしれないのだが……その魔道具は双方向で用いる物。


 つまり、一度は自らの足で向かうか誰かに運んでもらう必要があったのだ。


「レイルめ……はっきり断りやがった」


「…………」


「ああ、というわけで迷宮はしっかりと全階層を踏破しなければいけなく──」


「いやぁあああああ!!」


 急に発狂しだしたアヤさん。

 すでに学園迷宮祭用に生徒たちに貸し与えられた層よりも下、四十一層に辿り着いていたから良かったものの……それが原因か?


「なんで、普通に行こうとしているの!? というか私、何も準備してないんだよ!?」


「迷宮って……準備するモノだっけ?」


「するモノ、だよ! 最悪死ぬんだよ、準備するに決まってるじゃん!」


「……遺書を?」


 いやぁあああ! と再び叫ぶ。

 軽いジョークのつもりだったのだが、時と場合を選ぶ必要があったようだ。


 これまでの階層では出てこなかった魔物、その反応をアヤさんが気づく前に魔法で処理しながら話を続ける。


「これでも、経験者だからな。ちゃんとお荷も……アヤさんが共に居ても、迷宮の最深部まで案内するさ」


「いや、そういう問題じゃないけど……」


「まあ、あんまり強くない迷宮だから安心してほしい。ちょうど良かったじゃん、ここでレベルアップしておけば聖魔法とかも使いやすくなるんじゃないか?」


「そうだけど、そうだけどぉ……」


 レベルを上げれば魔力や器用さが向上するので、自ずと魔法の扱いも上手くなる……普通の奴は。


 俺は能力値がいっさい変動していないし、そもそも成長できないから関係ないのだ。

 種族のレベルはともかく、スキルなんてレベルの存在すら出てこない状態だぞ。


「ほら、もう階段だぞ。そこまで危険な場所が無いからこそ、学園の迷宮なんだよ」


「そ、そうかなぁ? な、なら、ワンチャンあるの……かなぁ?」


「あるある、ワンチャンあるって。そもそもこの世界って、いっしょに居るだけで経験値が入るんだ。寄生とかパワーレベリングとか言われようと、強くなること優先で行こう」


「『いのちだいじに』、だね!」


 握り拳を作るぐらいには、アヤさんのやる気も回復したみたいだ。

 実際、異世界人って種族自体はレベルや能力値の向上しやすい種族のようだし。


 俺がまったく恩恵を受けていない職業に関しても、同じくその補正が掛かる。

 なので【聖女】のレベルもガンガン上がって、聖属性も補正で上手く使えるはずだ。


「けど、全然魔物が出てこないね……もし出てきたら、私が【聖女】としての力を見せつけてやるのに!」


「──そうか? じゃあ……ほい」


「えっ? ……いやぁああああ!」


 ちょうど出てきたミノタウロスを、あえて殺さずこの場まで持たせたのだが……どうやらまだ、戦うまでの勇気は無かったらしい。


 頭を抱えてしゃがみ込み、丸くなったアヤさんに……そんなことを思う俺だった。



それでは、また一月後に!


最後まで読んでいただきありがとうございます。


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