スレ130 聖女の聖は秀でるという意味
皆さん、大変お待たせしました!
「──帰れるのは、独り……だけ? じょ、冗談……だよね?」
「いや、事実だ」
「そんな!? そんなのって……!」
俺が告げたのは、魔王討伐をした場合の召喚者たちの未来だ。
言った通り、帰れるのは独り……これにはちゃんと理由がある。
「来るのも帰るのもただじゃない。そして、魔王が殺されることで手に入るエネルギーは独りを返すので限界なんだ。まあ、考えてみてほしい……魔王を倒すようなヤツを、この世界に残したいと思うか?」
「だから、独りは……ユウト君は帰れる?」
「普通ならな。で、使える血統を持っている異世界人は交配に使う。特に、聖女なんて呼ばれているヤツは──」
「やめて! ……もう、お願い」
「──そういうことになるのが嫌だから、俺は別の道を探している。残念なことに、それ以外のことはまだ分かっていないがな」
酷な話だと思うが、叶わない希望をいつまでも抱き続けるのも可哀想だと思った。
だから、末路に関しては隠すことなくすべてを話したつもりだ。
もちろん他にも帰る方法はあるし、犠牲者前提なら誰でも帰れる。
──魔王が必要なら、魔王を創ればいいだけの話なんだし。
「……帰れないのかな、私たち」
「少なくとも俺は、帰る気でいる。そもそも最初から諦めていたら、帰れるものも帰れないような気がするしな」
「そう、だね。けど……」
「まあ俺が言いたいのは、あの国は少なくとも全員を帰す気が無いってこと。あらゆる奴らを疑えとは言わないが、せめて王族は全員疑った方がいい……殺されかけたわけだし、俺はそうする」
どうやらリア充君は取り込まれたみたいだが、こればかりはどうしようもないな。
このままいけばどうせ彼は帰れるのだし、放置しておいても構わないだろう。
「魔王が人々を困らせているのは事実。どうにかするために、勇者が必要だっていうのも本当のことだ。あくまで、それ以外の手段を用いるのが面倒臭いだけであって、もっとも効率よく魔王を倒せる方法を選んだんだよ」
「それが……私たち?」
「優秀な職業を持つ俺……じゃなくてお前たちが、魔王を倒せばいい。自分たちは少し育てるだけでいいし、最後は送り返すなり婚姻が報酬というだけでもいい。邪魔な奴は処分すれば良いわけだし」
「うっ、うぅ……」
泣いてしまったが、こればかりはな……。
もっと最悪のケースとして、魔王を倒した瞬間に人族同士の戦争なんてパターンもあったので、まだマシな状況なのだ。
今回だって、わざとアヤさんをここに連れて来て何かを企んでいる例の国。
撒いてはいるが、そのうちプランBとか称して何かしら仕掛けてくるだろう。
◆ □ ◆ □ ◆
「──というわけで、ここが俺のクラスの見世物な闘技場だ。勝てば景品が貰えるが……やってみるか?」
「む、無理だよ。私、支援専門だから戦いには全然向いてないんだからね」
「そっか? おかしいな……」
俺の記憶だと、聖女ってのは何でもできる万能職の一つだったんだけどな。
「たしか、自動で回復できるような魔法があるだろう? 生命力も魔力も」
「うん……あるよ」
「それを自分に施して、走ればいい。身体強化で逃げ回って、隙を見せたら攻撃だ。チクチクと蚊が刺すような攻撃になるかもしれないけど、それでも効果は出る。防御力が高いヤツには全力の光属性の魔法をだな──」
知り得る限りの情報を教えておく。
できるかどうかは分からないが、聖女という職業で同じことができるのであれば、力になるだろうし。
「──聖魔法とかいう、便利な魔法があるんだろう? それをさっき言った通りに試してみてほしい」
「凄いね……私だって分からないことをそんなに知ってるなんて。ねぇ、それももしかして調べたら分かるの?」
「……この学園にはいろんな知識があるからな。過去の聖人が使ったとされる聖属性に関する情報も載っていたぞ」
「なら、それを読んだらもっと私も……」
残念ながら、先ほど教えた知識に関しては大半が実体験をそのまま話しただけなので、学園の図書館にも置かれていない。
聖属性、そして神聖属性とやらを彼女は扱うことができる。
それは通常の光属性よりも、はるかに高性能な光の力を扱うというもの。
だからこそ、それを最初から扱える勇者や聖女といった存在──聖人たちは重宝され、宗教的にも崇め奉られるのだ。
「あとは、普通に回復魔法とかが使えるんだし、それを日常的に維持し続けられるようにしておくことだな。状態異常の回復も維持しておけば、嵌められることもないだろうよ」
「……えっと。それ、かなりキツいんだよ」
「だからこそ、だよ。最悪の場合、宗教的に邪魔だとか言って始末されるんだぞ。恒常的な回復ができれば、そういう心配ともおさらばだ。神聖魔法には、一度だけ攻撃を無効化する魔法もあるらしいからな」
前に使っていた記憶があるので、この世界の本には載っていなかったが間違いなく存在するだろう。
それを習得できれば、一撃必殺みたいな技は完全に通用しなくなる。
……俺もいづれは、自分の魔法で再現できるようにと工夫しているぞ。
それでは、また一月後に!
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