スレ13 闘うのは幻想の敵
最近、不思議なことが起こった。
訓練場でいつもの練習を行い終えてから、改めてそれについて確認を行う。
「──ステータスオープン」
それはステータスのことだ。
最近は魔力を消費する鑑定スキルはいっさい使わず、いっさいの消費なく全情報を開示できる[ステータス]の方が便利なのだ。
---------------------------------------------------------
ステータス
名前:アサマサ・ワタリ(男)
種族:【異世界人Lv4】
職業:【■■使いLv1】
HP:100/100
MP:100/100
ATK:10
DEF:10
AGI:10
DEX:10
MIN:10
LUC:0
通常スキル
(言語理解)(鑑定)(無魔法)(体力回復)
(魔力回復)(気力回復)(想像補正)
固有
【■■使い】
祝福
(地球神の加護)
---------------------------------------------------------
「……本当、なんでだろうな」
あるとき、スキルが増えないなーと悩みを全体に向けて呟いたのだが……その瞬間、急にスキルが追加されたのだ。
称号の数などはまったく変わっていないのに、スキルだけが増えたのである。
「ただ、まんまなんだよな……説明文も、あまりこだわってないみたいだし」
名は体を表すっていうか……うん、最低限の情報だけを開示してるって感じか。
唯一、気力回復だけは首を傾げたが、アイツらに訊ねたところ、ステータスには載らない気力ポイント的なモノを回復するらしい。
「まあ、回復系は便利だからいいんだけど」
想像補正……つまり妄そ──ゴホンッ! はともかく、瞬時に回復する魔力のお蔭で魔法を使いやすくなった。
まだ回復魔法を習得していないので、そちらの開発も上手くいくかもしれない。
「それでも武器に関するスキルだけは、未だに取れないんだよな……うん、呟いてもどうにもならないか」
みんなに教わった技術はある程度使えているが、それでもスキルには手に入らない。
スキルは免許、その者がそのスキルに関わる技術を世界に認定して貰えた証である。
「つまり、俺の技はみんなと違って不完全だから、スキルは習得できないってことか。成長できないのはともかく、スキルも習得できないのは辛いなマジで」
別の異世界で騎士をやっていた奴に教わった構えをして、槍と盾を振るう。
地球では、全身鎧が出現した時点で盾は使われなくなったらしいんだが……アイツの世界ではスキル的なこともあって、盾を使うことになったらしい。
──ああ、盾と槍は虚無魔法スキルで創った物を使っているぞ。
槍を振るい、時に想像の敵の攻撃を盾で流し、弾いて隙を突く。
イメージするのは師である騎士だ。
……始めはなんとか往なすことができるんだが、アイツの槍が放つ連続突きへの対応が難しくて結局いつも負ける。
「……ふぅ。次は棍にするかな?」
地球での経験から、俺のイメージの相手はたくさんいる……そこだけ聞くと虚しいな。
今度は手に無色の棍を生成し、再び架空の敵を相手に戦闘を挑む。
◆ □ イメトレ中 □ ◆
全然疲れない。
それが、何度かの架空戦闘を終わらせた後の感想だ。
心臓は激しく脈打っており、体中から発汗が見られるのだが……それでも疲れているとは感じさせない。
すぐに[ステータス]を調べると、生命力がほとんど減少していなかった。
……だが普段より疲れが取れやすいのは、ちょうどスキルとして取った気力回復のお蔭なのかもしれない。
「けど、気力って減りすぎると生命力が代わりに減るんだよな……ってことは、まさに過労死ってのが存在するのかよ。黒い会社にお勤めの人は気を付けないとダメだな」
あの人たちは、生命力をマイナスにまでして社会と戦っているんだ。
この世界に来た瞬間、死ぬかアンデッド的な存在になってしまうだろう。
おっと、今は練習に集中だな。
「──シッ!」
腰に携えていた刀を抜き、再び仕舞う。
魔力によって創られた刀は、そのまま俺の魔力を斬撃として前へと飛ばす……のだが、変化は何も起きない。
予め用意しておいた“虚無防壁”により、目の前の景色は変わらないのだ。
……壁を斬れないって知られたら、きっと師に怒られるんだろうな。
俺に刀を教えてくれたアイツは、どんなものでも居合切りだけで斬れそうだった。
……持ってるの、修学旅行で買えそうな普通の木刀だったのに。
「刀技──『閃煌』」
教わった刀術の型を言い、習った通りの動きを行う。
丹田から練り上げた気力を、体中へと循環させていく。
上半身に伸びた気力は刀へと伸ばし、下半身に伸びた気力は足へと伸ばす。
ズドンッ! と強化された足で地面を強く踏みつけたエネルギーは、俺の中へと何倍にも膨れ上がって戻って来る。
そのエネルギーを体を動かし、刀へと流動させて──斬撃として振るう。
「それスパッとな」
放たれた斬撃は、俺の薄っぺらい壁一枚を破壊してしまう。
その後に何重にも構えていた壁のお蔭で周囲には何の影響もないが、壁を破壊できたことは俺にとって喜びを与えてくれる。
「気もこっちならある程度回復が早くなってるし、今まで使えなかった型も使えるようになるかもな」
向こうでは、教わったのに俺の力不足──長時間使えなかったものを含む──で使えない認定されたものも多かった。
だけどこの世界ならば、今までより少し多めに教わったことが使えそうな気がするよ。
「よし、最初は歩行術からだな」
足はだいたいのことの基本なので、しっかり鍛えておかないと。
そしてこの後──最初に試した『縮地』ですでに躓いてしまった。
===============================
参加者:アサマサ以外
アキ:気の使い方なんて誰が教えた!
∞の気力を足に籠めりゃあ爆発するだろう!
ユキ:某が教えたのは刀剣に関わることのみ
リホ:同じく、隠身と歩行術だけ
フユツグ:俺も練り方は教えたな
アキ:そんなもん、俺だった教えたわ!
……ハァ、早くコントロールを磨いてくれよ
===============================
気に関する情報を知っている者は、当然朝政にそれらをすべて教えていた。
そのため、朝政の氣の操作力はかなりのものである。
だが、朝政自身が現在の自分に∞の気力があることを知らないので、過剰に力を籠めてしまう。
──先ほどの『閃煌』もまた、実は虚無で創られた壁を壊していた。
朝政がコントロールを気にし始めるのは、チャットを行ってからの話である。




