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俺と異世界とチャットアプリ  作者: 山田 武
【始まる】面倒事対処 その01【準備】

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スレ11 かなりウザい勇者(リア充)



 創作物ではあれから◯日後、とか都合良く時間が経過するけど……現実はそう甘くはいかないよな。


 時間は平等に進んでいくし、誰もが逃れることができない。


 あっ、そういえば例外とも言えるようなヤツに会ってたな。

 結構気さくなヤツなんだけど……とりあえず今は良いか。


 というわけで、逃れることのできない時間の流れという壁に阻まれて、俺は再び訓練場の隅で魔法の練習を行っている。


 これってたぶん、今日も含めて最短でも五日はやるんじゃないか?

 リア充君の属性適性は全部なんだから、一日に一属性ずつ習っていけば……ほら、あと五日である。


 ちなみにだが、とりあえず王城に居る属性魔法士は──火・水・風・土・光・闇・回復の七人だぞ。


 回復だけは呼び方が違うらしいが……使えない俺には関係無いだろう。


(──“虚無剣(ホロウソード)”)

「……よし、できた」


 俺の右手には、透明な魔力が剣の形をして存在している。


 切れ味は“虚無鎌”と同等のものでありながら、手の先から出現するからどのような状況でも使用できるように改良した。


 ただし、完全な剣では無いからなのか、普通に剣として使っていた時よりも、耐久度が低く感じられる……不意に襲われたことがあるって、誰の言葉だっけか?


「念じるだけで発動ってのもできたか……これは才能云々じゃなくて、やろうと思えばできるシステムだからこそってことか」


 言葉でイメージを固めることで威力を高める者にとっては、無言で発動するのは威力が落ちるだけの愚策に思えるかもしれない。


 だが魔力が尽きても気にならなくなった今の俺ならば、過剰に注げば威力は増す。

 スキルとして省略詠唱や思考詠唱があるらしいが、俺はそれらを使うことができない。


 詠唱という手段そのものが最初から使えないのだから、無詠唱でどこまでできるかを試しておくしかないだろう。


「次はそれを薄く伸ばして──神◯鑓!」


 脳裏のイメージに沿って、魔力でできた剣は鋭く長くなっていった。

 ……うん、俺の浮かべていたイメージ通りの結果だ。


 死神とか、剣ではなく棒ではあるが猿でもできることなので試してみたが……魔力の消費さえ耐えられれば、普通に成功する。

 やはり魔力とは、相応の対価を払えば何でもやらせてくれるらしい。


 なんだか“虚無剣”のようにパッとイメージの固定ができないのだが、それでも時間を掛ければ発動は可能だ。


 死神の方を再現するなら毒も必要だが……まあ、無魔法で毒のイメージは難しい。


「さて、それじゃあ次は──」


「アサマサ君」


「……どうしたんだ? えっと、リア……ユウト君」


 魔法の練習をしていると、顔馴染みになるぐらいに遭遇する【勇者】がやってくる。

 どうやら今日の分の属性魔法も理解し、巧みに扱えるようになったのだろう。


「君はいったい……属性魔法の練習もしないで、どうしてボーっとしていられるんだ? そんな風に休んでいる暇があるなら、少しでも強くなろうと属性魔法の一つぐらい、習得してみたらどうなんだい?」


「属性魔法の習得は、絶対にできるわけでも一日でできるわけでもないだろう」


「それは君が頑張ろうと、努力をしていないからだ。努力は人を裏切らない……少なくとも何もしていない人間を、努力しているとは言わないだろう」


 うん、実に面倒……同じ勇者でもアキとは大違いである。


 だがまあ、それも仕方ないかもしれない。

 俺がやっている練習のすべては、通常の方法では知覚することができないのだから。


 俺の魔力はすべてが不可視の存在になるようイメージを施しており、事象を及ぼしてもすぐに“原点回帰(リセット)”が発動するようなイメージにしてあるため、傍から見ればパントマイムをやっている変人にしか見えない。


 もちろん、対策はある……というか、それができなければすぐに死んでしまう。


 目に魔力を籠めて視ようと思うことで、知覚能力が相手の隠蔽する力を超えればそれを見ることができる──完全に『凝』視だな。



 閑話休題(ねんじるのだ)



 そんな風に魔法を隠しながら俺は、手を少しだけ前に出した状態で立っている。


 今の魔力で視ることのできない彼が、そんな俺を見れば……ああ、たしかにサボっているように見えるわけだ。


 だが、実際にはいろいろとやっていた。

 手からはビーム状のサーベル、体を覆うのは堅固な鎧、そして多重の結界。


 さらに周囲には霧のような魔力の粒が放出されており、その中すべてを俺は近くすることができる。


 ──『いのちをだいじに』作戦で生き抜こうと決めているため、常時の警戒は必須であろう……と習っていたからだ。


 最初は一つずつしかできなかったが、今では複数の用途で行使できるようになった。


 原因は不明だが成長できないのだし、使い方を工夫していかなければ、俺は王道勇者リア充に負けてしまいそうだし。


「い、いや、俺は無魔法の練習をちゃんと続けていて──」


「鑑定スキルで確かめさせてもらったけど、君の魔力(MP)は減っていないよ。もし回復を待って休んでいたとしても……長時間サボっていたことに、変わりはないだろう?」


「……ご、ごめんな──」


「ごめんなさいと言うってことは、やっぱり君はサボっていたってことだね。……まったく、努力というのはやり抜かなければ付いてこないものだと前にも言ったはずだよね?」


 こういう選ばれたリア充という存在は、おそらく知らないのだろう。


 どれだけ頑張ろうとその努力が実らず、どれだけ時間を費やそうともその結果が付いてこない……そんなヤツもいるってことを。


「だいたい、君はもっと動こうという意思を表面に出すべきで……」


 ──にしてもウザい、非常にウザい。

 どうしてわざわざ俺の所まで来て、そんなことを言ってるのだろうか。


 ……ああ、俺って優しいヤツアピールか。


 誰に魅せたいのか知らないけど、あとで愚鈍な奴を更生させたとか、そういうネタを織り交ぜた口説き方をするのか?


 他の奴を使ってまで好い奴アピールをしておいて、いったい何になるんだか。

 ──というか、今なお魔力は消費されているんだけどな。


 最近は回復速度が速過ぎる結果、0がハイスピードカメラじゃないと捉えられないぐらいの速度になっている。


 ──なのに、どうしてスキルとして何か習得していないんだろう?


「ほら、君もこっちで属性魔法の練習をしようじゃないかい」


「わ、分かったから……手を放してくれ」


「いいや、そうしたら君はこっちに来ないだろう? だから、連れていってあげよう」


 コイツ、目で脅してたんだけど!

 笑ってないけど、目が嗤ってやがる!


 そんなリア充君に連れられて、俺は今日の魔法練習を行えなかった……ちなみにだが当然、属性魔法の習得には至らなかった。


 そのとき、「君の努力が足りないんだよ」と告げたリア充君であった……本当に、久しぶりに心の底からイラッとしたな。




===============================


参加者:アサマサ以外


 ・

 ・

 ・


アキ:俺、本当に神剣召喚しよっかな?

いや、ここは魔神剣の方が良いんじゃ……


フユツグ:おいおいアキ、止めとけって

俺がちゃんと時空ごと斬り裂いとくからさ


ナツキ:何生温いこと言ってんのよ

加護も勇者としての力も全部剥奪してから、天罰を喰らわせるべきよ


リホ:誰かあそこに送って

大丈夫、すぐに終わるから


ミランダ:我が同胞を傷付けるとは……あの者は滅するべきだ


ハルカ:はいはい、皆さん落ち着きましょう

それは朝政さんが決めることですよ

今の朝政さんならすでに俺Tueee状態ですし、復讐するなら一瞬でできます


あっ、それとこれとは別にして、私は儀式魔法の準備がありますので、これで失礼します


ユキ:殿、ついに剣を……

剣術は無理でも、某が教えて剣技を用いてアヤツを……


===============================


 朝政の知らないところでは、勇者暗殺計画が企てられていたという。



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