スレ107 餃子=爆発(確信)
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自爆システムがおそらく搭載されているであろう、人工知能搭載の最強ゴーレム。
相手の戦闘を読み取り、勝てないと分かれば自爆すると思われる最悪の相手だ。
「さすがにAIへの対処法は、そこまで詳しく教わってないからな。せめてゴーレムの倒し方ぐらいだ」
ゴーレムとは錬金術の産物とされるが、魔法で創ることもできる。
まあ、今回はさまざまな魔物の部位を使っているところから、錬金術版だと分かるが。
「とりあえず、聖剣で刻むか」
ただ特殊な素材で発光させただけの魔剣ではあるが、聖なる武具には共通して魔核を持つ相手にダメージを多く与えることができるという機能が搭載されている。
そして、相手はそんな魔核を持っていた魔物の素材がたっぷりと使われている……普通聖なる武具なんて、持っているヤツそうそういないからな。
「剣技──『斬鎧』」
鎧をも断つ鋭い斬撃。
先ほど同様、『縮地』で近づいた後に放たれたソレは──ガキィンという甲高い音を立てるだけの結果となった。
「やっぱりダメか……俺もまだまだだな」
刀剣の使い手たちによると、どんな物質だろうとこれがあれば斬れるとのこと。
だが現実は違っている……つまり、俺が劣化させてしまったということだろう。
幸い、聖剣に影響はない。
そもそも頑丈だし、刻んだ回路によって時間が経てば勝手に修復される。
目の前のゴーレムはオリハルコンを素地としたうえで、魔物の素材を組み込んでいた。
そのため能力を一部使用可能となる──今回の場合、肉体を頑丈にするというものだ。
「“身体強化”、『活性功』」
体の内側で、魔力と気による強化を同時に行っていく──足りないならば、補うのみ。
少々邪道で申し訳ない気持ちでいっぱいにはなるものの、虚無魔法で乗り切るのであればおそらくこの程度はしなければならない。
「これでこの状態でも使える──『潜蛇』」
蛇のような動きで迫る。
相手はAIなので、何度も同じ動きをしていては解析され尽くしてしまう。
なので今回は移動手段を少々変更する。
実際、真っ直ぐの動きを予想していたのかゴーレムはすぐには付いてこない。
剣を鞘の中で構え、気を練り上げる。
歩行術と組み合わせるのに苦労するが、それでもどうにか地面を踏みしめ、その衝撃を体でいなして斬撃と化す。
「刀技──『閃煌』」
どの武器で使うかを教わったものの、そこに拘らずとも再現することは可能だ。
今回の場合は、刀のしなやかさを聖剣に魔力を流すことでソレを扱えるようにした。
納刀ならぬ納剣をすると同時に、ガクリと膝を着くゴーレム。
その原因は簡単、片足の膝より下が失われているからだ。
足はすぐに“無倉穴”へと仕舞った。
制限のある無魔法の収納空間だったので苦労はしたが、どうにか気づかれる前に実行することに成功する。
「さて、これで身動きは……まだ素早いか」
何も歩行術を使わないで近づいたところ、超高速で腕を振るってくる始末。
身体強化は変わらず行っているのでよかったが、当たった壁は砕けてしまっている。
「それはお土産として持って帰るとして……どうしたものかねぇ」
『────動』
「ん? なんだなんだ……」
『これより三十秒後、内部の炉を誘爆させ自爆を行います。プログラム『餃子』、開始』
「ギョウザって……おいおい、まさか」
頭の中で小さな超能力者が浮かぶが、その死に方はもっと鮮明に浮かぶ。
たしか、自爆だったね……うん、ちょうどこの状況とピッタリだ。
「足、動かないよな? ははっ、まさかそんなわけ──」
『ブースター起動、対象を捕縛します』
「マジかよ!」
いったい過去の同朋は、何がしたくてこのゴーレムを作製したのだろうか。
疑問と苦情と謎と苦情と苦情が残るけれども、まずは逃げることを選択する。
体捌き用に戦闘技術を一割と少し分残し、あとは全部脳のスペックを歩行術用に切り替えておく。
ある意味先ほどとは逆となったが、それぐらいしておかないと不味いという直感が頭の中で警鐘を鳴らしているのだ。
「ヒー、ヘルプミー──『絶渡』!」
擬似的な瞬間移動と呼べる超高速の移動によって、距離は少しずつ離れていく。
だが油断してはならないことを、俺はよくその身を以って学んでいる。
多用はできない『絶渡』を控え、代わりに『縮地』と『天駆』を起動して逃走を図っている中──後ろからはブースターが点火して空気を焦がす音がよーく聞こえるきた。
『自爆まで残り……五、四、三、二──』
「“魔力壁”×張れるだけ張ったら―!」
『一──自爆します』
迷宮はその機構状、別の階層には影響が及ぶことは無いだろう。
この階層に俺以外の存在が居ないことも確認している……だが、俺が不憫ではないか。
無限の魔力チートを使って張り巡らせた防壁は、次々と破壊され熱量を俺に届けようとしている。
必死に抗いさらなる防壁を張ってはいるものの、少しずつ皮膚が温められていく。
「──『縮地、蠢動、無拍手、潜蛇、天駆、絶渡』!」
もう一度『絶渡』を。
そして九割の内、五割分を注いだ歩行術を以ってさらなる移動手段と速度を得る。
それでも危険になったそのとき、ようやくゴールである十九階層へ向かう階段を見つけることができた。
「──『亜走』!」
最後の力を振り絞り、これまで使っていた歩行術の半分を中断して発動させた超高難易度な技──極限の集中状態にある今ならば、使えると確信して。
ついに俺を呑み込もうとする爆発だが──それは俺に触れられず、包めず、呑み込めないまま迷宮の空間のみを焼いていく。
そして俺は目的地である階段を通過。
恨みがましいように近づいてくる熱は、階段に入ろうとした瞬間隔てられる。
「い、生き残ったぁ……」
亜空間へ移動することで、一時的に干渉したいもの以外に触れられずに動くことができる奥義のようなもの。
脳スペックの五割を使う難易度なので、あまり使わずにいたが……今回ばかりは使わざるを得なかったな。
──こうしてフラグを折った俺は、ズタボロになりながら迷宮から脱出するのだった。
それでは、また一月後に!
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