スレ103 学園長は凄い人
皆さん、お待たせしました!
名は──アールサウム・グランディン。
かつての英雄であり、学術都市の長でもある彼は異世界人の血を引いていた。
真っ黒な髪と瞳を持つのは、先祖の力を色濃く引き継いだからだとされる。
……なんてところまでは調べてあるが、実際に言葉を交わしたことなど無い。
なぜなら俺は模範生にはほど遠いXクラスの生徒で、学園長と話すことができる機会など皆無だったからだ。
「……失礼します」
そんな俺でも、序列者という権限を振りかざせば会うことはできた。
ゆっくりと扉を開いた先──そこには、独特の力を放つ猛者が座っている。
「君がアサマサ君だね? 話はキンギル君からよく聞いているよ」
「はあ。俺の……いえ、私のことを知っておられたのですか」
「堅い敬語など要らん。堅苦しい上辺だけの言葉は、貴族たちだけでもう充分だ。それよりもありのままの君を知りたい、序列者である君にはその権利がある」
「……女性に好かれそうですね、学園長」
無論さ、と答える男の口はよく回った。
話術に長けたヤツ──こっちは女だが──も知り合いにいるが、その一つひとつにふと吸い込まれるような感覚を覚える。
魔力やスキルを使っているのではなく、ただ本人の魅力──カリスマが他の者たちを自然と惹き付けているのだろう。
「えっと、俺が来たのは他でもない、依頼されていたドラゴンについてです」
「ふむ、鉱山に住み着いていたドラゴンのことだね。それがどうかしたのかな?」
「契約を交わし、人化しました。なので生徒として認めうたうえ、俺の従魔としてXクラスに入れてください」
「──分かった。では、すぐに許可証を発行するから、手続きを済ませるように」
簡潔に説明した俺に、それ以上あっさりと返事をして何かを書きだす学園長。
話の流れからして、おそらく入学を許可してくれるための証なのだろう。
なぜここまでスピーディーに……と思っていると、手を動かしながら口も動かしだす学園長──
「もしかしたら君は、どうしてこんなに簡単にと不思議に思っているかもしれない。だがそれだけのことが許されるだけの成果を、君はこの学園にもたらしている」
「……成果?」
「あの森の掃除は本来、参加する序列者全員で行う者だ。故に複数人を投入しているし、そうでない年はこちらで依頼を出して間引いているほどに難易度が高い……それを単独で行う実力が、君にはあるのだろう?」
「それだけですか?」
「まさか。ここだけの話、君がこの都市に居るだけでそれなりに便宜を図るだけの理由が生まれた。これは序列者であろうとなかろうと関係なく、君が君という力の持ち主だということが起因するね」
何かを伝えたい様子の学園長……というか当てられるかどうかを探っているようだ。
まあ、ある程度予想は付いている──その確認をしておくのもいいかもしれない。
「学園長。この学園の下には迷宮が広がっていますね?」
「ああ、君も知っての通りだろう」
「迷宮ではほんの微量ではあるが、ただそこに居るだけでエネルギーを徴収し、それを迷宮の運用に回している……人の枠では想像も付かないナニカを行使するために」
たとえば魔物の召喚、迷宮によって魔力供給が行われることで食欲から解放された魔物は、召喚の際に刻まれた記録からその契約を知り、飢えを防ぐため迷宮に忠誠を誓う。
たとえば宝箱の設置、さまざまな武具が取り揃えられている学園には、迷宮産の武具もいくつか収められている。
強さはそこまでではないが聖剣、呪いは強くはないが呪具……なんてのもあるらしい。
「ただ、エネルギーは迷宮に入ってくれる者だけでは維持することができない。しかし、この迷宮は未だに活動し続けている……学園長、どこまでが学園迷宮なのですか?」
「──無論、この都市すべてが迷宮を前提に築かれた街なのだよ」
「……ずいぶんとあっさり答えてくれましたね。てっきりお茶を濁されるかと」
「お茶を濁すか……この世界で言うところの『エリクサーを劣す』と同じ意味の言葉だったね。それも考えたが、結局真実に辿り着いた者には正直に話した方が後腐れはないと思わないかい?」
書き終わったのか手を止め、紙を封に入れてこちらを渡してくる。
それを受け取ろうとした時、学園長の口からボソリと──
「異世界人、私とて先祖のことぐらい調べている。チキュウという世界からこちらへ召喚され、比類なき力を振るう者たち。それがたとえ元の世界で平凡な者だろうと、この世界では一騎当千の英雄になる……そうだね?」
「そうですね。ただその話に間違いがあるとすれば……非凡な者の中には、その非凡さ故に何も変われない平凡な者も居ますがね」
「それは興味深い。それ故に、君の力も……おっと、あまり詮索するのはここまでにしておこう。私とて、引き際は心得ている──受け取ってくれ」
「ありがとうございます」
話が逸れたようだが、すでに迷宮云々の話はどうでもよかった。
俺にとってそれは既存の情報だし、学園長が確認しておきたかったのもあくまで異世界人云々の部分である。
「とはいえ、すでに裏は取っていたんだけれどね。あのアインの『黄金姫』も、予想外のことには弱かったらしい。そう促した結果ではあるが、確認も取れた」
「『黄金姫』?」
「今の君には必要のないことさ。さあ、今日中に入学手続きを済ませたいのであれば、速く向かった方がいいと思うぞ」
「……そうですね、では失礼しました」
こうして従魔登録という前提を満たしたうえで、生徒としての権利を得られたハイト。
その主である俺は、未だに従者としての入学だが……まあ、こっちの方が都合がいいから構わないさ。
それでは、また一月後に!
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