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第六話 またまたおっぱい筋トレ!?

「うっ!」


 目が覚めると体中が痛んだ。昨日の筋トレのせいか身体が全く動かない。動かそうとすると筋肉が全力で反発して痛みを返してくる。


「おはよう。死んじゃったかと思ったわ」

 メルミンさんは微笑んでいる。どうやら冗談らしい。

 メルミンさんはハムエッグをテーブルに運んでいる。


「あの、全然動けなくて」


 メルミンさんはおれの前にハムエッグのお皿を置いてくれた。そしてハムエッグに箸をのばす。おれに食べさせてくれるらしい。

 メルミンさんが聖母に見えた。

 

 筋トレばかりしてなにもしていないから、お腹だけはものすごく減っているのだ。

 

 ぐうう~!

 

 おれのお腹が正直に反応する。

 その音にメルミンさんは上品に笑った。


「食べる?」

「はい!」


 いい香りがおれの鼻腔をくすぐる。朝の定番のハムエッグ。定番なだけあって、朝にかぐハムエッグの香りは食欲をさらに刺激する。


 ぐうう~!


 早くも二度目のお腹の音にすこし恥ずかしくなる。


「あ~ん、してあげる」

「あ~ん」

 おれは大きく口を開いた。


 口の中に温かなハムエッグが運ばれた。

 玉子は半熟で、焼いたハムが香ばしい。


「美味しいです」

「そうなのね、よかったわ」


 メルミンさんが上品な笑みを浮かべる。

 傷だらけで動けないおれに朝ごはんを食べさせてくれる美人がいるなんて。この世界に来てよかった。

 イリスさんのおっぱいで窒息死してよかった。


「まだまだ食べて」

 メルミンさんが今度はご飯を口に運んでくれる。炊きたてのお米のいい匂いだ。


「あ~ん」

 おれは大きく口を開いた。


「あ~ん」

 メルミンさんは優しく笑いながらおれの口にご飯を運んでくれる。

 はむ。


「めっちゃおいしいです! メルミンさん料理上手ですね! それにメルミンさんに『あ~ん』してもらうとすっごい幸せなんですよ!」

「うふふ、ありがとうカズヤくん」

メルミンさんに作ってもらい『あ~ん』してもらうのは幸せな朝だ。


「カズヤー、なんかむかつくー!」

 ミニミがやってきておれの頭をぽかぽかと叩いた。

「いてて!」

「むーかーつーくー」

 ぽかぽかぽかぽか。


「いてててて、どうしたんだよ?」

 ミニミは頬を膨らませて答えた。おっぱいがぷるるん! と揺れている。

「りょうり、わたしもできるもん……」


「え?」

「なんでもない! ばかあ!」

 ミニミは大きなおっぱいをぷるんぷるんと揺らしながらあっかんべーをした。朝に凝視するミニミのおっぱいもいいものだ。陽の光がおっぱいにあたって瑞々しい。


「カズヤくん、ミニミったら焼いてるのよ。うふふ」

 メルミンさんがおれにそっと耳打ちした。


 メルミンさんのおっぱいがおれの二の腕に当たった。おっぱいは薄い絹ごしにむぎゅううっ、と柔らかくおれの二の腕を包み込んだ。やはりメルミンさんのおっぱいはスライムのようにやらかい。

もちろんこれも素晴らしいおっぱいだ。

 

 おっぱいの朝! 万歳!


「って、え?」

 おれは妄想を立ち切り、メルミンさんの言葉の意味を考えた。


「焼いてる?」

「そうよ。だってはじめての男の子だもの……」

「は!? まさかそんなことが!?」


 おれの頭の処理がおいつかない。

 おれが嫉妬されている? それはなぜだ? メルミンさんがかいがいしくおれに料理を運んで、それでおれが喜んでいたから?


 え? じゃあおれはミニミにとってそういう対象なのか? そういうとは、恋人とかカップルとか……。

 つまりおれは男としてミニミに好かれている――?


「ほんとですか?」

 おれは驚いていた。


 前の世界では三十五年間、カップルになる男女に嫉妬していた。可愛い声優やグラビアアイドルや女優と付き合い結婚する男に嫉妬していただけのおれだ。

ずっと嫉妬しっぱなしであり、だれかに嫉妬されることなんてなかったのだ。ニートで童貞のおれみたいになりたい人間なんていなかっただろう。


「わたしだって、はじめての男の人よ?」

 メルミンさんはミニミに聞こえないように小さくささやいた。


「え? メルミンさん?」

「うふふ」

 メルミンさんは照れくさそうに髪をいじりながら、おれから離れていった。


 そのおおきなやらかいスライムおっぱいは、名残おしそうにおれの二の腕から離れていく。

 タオル一枚で寝かされ、二の腕が外気にさらされていてこれほどよかったと思ったことはない。Tシャツごしなどではなく、おっぱいを直接感じられる。おれは目を閉じ、スライムおっぱいを五感を駆使しして受け取った。


 ありがとうございますメルミンさん! すっごくいいおっぱいでした!


「ありがとうございます」

 おれに朝ごはんを『あ~ん』してくれたこと、おれにおっぱいを密着させてくれたこと、そしてミニミがおれに嫉妬していると教えてくれたこと。


 もしかしたらメルミンさんもおれを男として見ているかもしれないことを教えてくれたこと。

 全ておれにとっては望外の嬉しさだ! ありがとうメルミンさん!


「どういたしまして」

 メルミンさんはそのおっぱいのように柔らかく笑ってくれた。

「ミニミこっちこいよ」


 おれは少し離れて体育座りをしていたミニミを手招きした。

 短いスカートなので中身がチラチラしている、白だ。純白。


「なにー?」

 ミニミはまだ嫉妬がおさまらないのか、こっちにきても不服そうにして視線を合わせない。

 その姿がいじらくて愛おしくて、おれはミニミの頭をなでた。


「お前には白が似合うな」

「んー?」


 ミニミは何を言われたのかわからないようで首を傾げた。


「ってちがうちがう。おれがいいたのはさ、ミニミの料理もたべたいなってことだよ。そんでミニミにも『あ~ん』してもらいたいなって。そしたらすごく美味しいと思う」

 おれはその光景を想像した。

 それは幸せな風景だ。


「わたしのりょうり食べたいの?」

「もちろんだ!」

「わかった! がんばる! る!」


 ミニミはぴょんぴょん飛び跳ねて喜んだ。

 その振動がおれの身体に伝わってきてけっこう痛い。


「すまんミニミ、身体が痛いから跳ねまわらないでくれ」

「ごめん!」

 ミニミは飛び跳ねるのをやめ、おれのお腹の上にのっかった。

 これでも筋肉が痛むが、飛び跳ねられるよりはマシだ。


「なんでお腹の上にのっかるんだよ?」

「うー? ご飯食べた?」

「メルミンさんに食べさせてもらったからな、ミニミも見てたろ?」

「うん! お母さん、カズヤの朝ごはん終わり?」

「そうね、ちゃんと食べたわよ」

「やったー! ちゃんと食べたねカズヤ! おっぱい腹筋しよ!」

 ミニミがおれのお腹の上で跳ねた。


「いてっ!」

「こらミニミ! カズヤくんが痛がってるわ!」

「ごめんね」

 ミニミが申し訳なさそうにしている。


「い、いや。わかってくれればいいよ。それじゃあちょっとどいてくれ」

 おれはさりげなくミニミをどけようと上体を起こした。


 するとミニミは背筋を伸ばし、胸を張った。

 おれの眼前に突如大きなおっぱいが出現し、おれの顔面はおっぱいの弾力に見事に跳ね返された。


 ばあいいいん!

 ゴッ!

 床に頭を打ち付けた。

 頭から身体全体へその振動が伝わり、傷も筋肉痛も痛い。


「いたたたたた!」

「カズヤくんがんばって!」

 メルミンさんは楽しそうに応援している。


 この人は天然なのだろうか。そういえば気絶していたおれの首にタオルをひっかけて運んだような人なのだ。絶対天然だ。

 傷が痛い。背中は傷だらけでかさぶたがたくさんある。

 それでもおれは――。


「おっぱいがあればできる! ミニミの張りのあるおっぱいは素晴らしいな!」


 おれはやれる! なぜってミニミのおっぱいを顔で受け止めて、とても幸せだった。すんごくいい感触だった!


「いくぜえええ!」

「おお! カズヤがやる気だしたー!」

 ミニミは嬉しそうにし、さらに胸を張っておっぱいを突きだす。どんなに突き出されても垂れることのないおっぱいだ。


「すごいおっぱいだぜ!」

 おれは上体を起こす。


 もはや傷の痛みも、筋肉痛も忘れていた。


 ニートで童貞で三十五年間過ごした者にしか得られない心頭滅却方法だ!

 おっぱい心頭滅却!

 おれはミニミのおっぱいへ到達した!


「きゃあん!」

 ぱあああん!


 おれの顔面はおっぱいに圧倒された。すごい張りだ。それなのにただ弾くだけでなく、痛くないように受け止めてくれるおっぱい。

 それがミニミのおっぱいだ。


 今度は頭部がおっぱいから一旦はなれ床へ落下する。床に頭を打つ痛みに耐え抜こうとミニミのおっぱいを凝視して心頭滅却する。

 そしておれの頭は床に――つかない!?


「え?」

「うふふ」

 メルミンさんがおれの頭部に太ももをセットしてくれている。

 これは、膝枕!


「メ、メメメメルミンさん! なにを!?」

「やる気出るでしょー?」

「は、はははい!」


 メルミンさんの太ももはむっちりと柔らかく、弾力に富んでいる。それはおれの頭部を丁寧に支えてくれている。


「カズヤー? はやくこっち!」

 ミニミが不満そうにして苛立っている。

「もちろんだ!」


 ミニミは嫉妬してくれているのだろう。

 こんなに可愛い女の子がおれに嫉妬してくれるなんて。

「うおおおおお!」

 ミニミのおっぱいがおれをうけとめる。

「きゃあん!」

 ぱあああん!


 おっぱいに弾かれたおれの頭部は勢いよく落下する。

 その勢いを――メルミンさんの太ももが柔らかく支えてくれる。

 ぽむっ。


「メルミンさんミニミ! おれはいくらでもやれる! これはおっぱい&太もも腹筋トレーニングだ! 効果は通常のおっぱいトレーニングの三倍だ! おれはまた限界を突破する!」

「がんばれカズヤくん」

 メルミンさんが応援してくれる。


「こーい! カズヤー!」

 ミニミは楽しそうに胸を張っておっぱいをおれのために使わせてくれる。

「うおおおお!」

「きゃあん!」

 ぱあああん!


 しばし、落下。

 ぽふっ!

 

 また上体を起こす。


 もはやおっぱいで心頭滅却を会得したおれは、痛みなど感じなかった。

 感じるのはおっぱいと太ももの弾力と柔らかさ。その感触を味わうためにおれは何度でも上体を起こして腹筋をする!


「うおおおおお!」

「きゃあん!」

 ぱあああん!

 落下。


 ぽふっ。

 

 また上体を起こす。

「うおおおお!」

「きゃあん!」

 ぱあああん!

 落下。


 ぽふっ。

 ……………………。

 ……………。

 ……。


 またもや身体が動かなくなるまでおれは腹筋を続けた。

 汗びっしょりになったおれの頭はメルミンさんの太ももがつつんでいる。

 メルミンさんの優しい香りがする。


「もう、動けません……」

「おつかれさま」

 メルミンさんは汗で濡れた髪をなでてくれる。


「カズヤおつかれー」

 ミニミはおっぱいをおれの顔におしつけてくる。

 どうやらミニミなりの労いのようだ。

 おれがおっぱい大好きなことをわかっているのだろう。


「すげえ。最高のおっぱいだよミニミ」

「お母さんより?」

「ん? ああメルミンさんのも最高なおっぱいだ」

「むー」

 おれの顔面に強くおっぱいが押しつけられた。

「むぐぐぐ」

 息が苦しい。


「こらこらミニミ。かわいそうでしょう」

「うー」

「だいじょうぶよ、カズヤくんはどっちのおっぱいもすごくいい、って言ったんだから。どっちもすごくいいおっぱいだってことなのよ。くらべるものじゃないの」

「くらべないの?」


「当たり前だ。いいものはいい。どっちもすんごく素晴らしく素敵なおっぱいさ」


 おれの本心だった。

 くらべることはできない。だってイリスさんのおっぱいも、メルミンさんのおっぱいも、ミニミのおっぱいも、全てそれぞれ素晴らしいのだ。

 どれが一番なんてことはない。

 あえていうならば――。


「おれにとっては、この世界のおっぱいはどれもが一番なんだ」


「ふーん、バカっぽいかも」

 ミニミが言う。


「うふふ。おっぱい&太もも腹筋トレーニングできっと疲れてるのよ。おやすみなさいカズヤくん」

「あ、はい」

 メルミンさんの指がおれの瞼を閉じさせた。

 暗闇。


 脳裏に浮かび上がるのはミニミの素晴らしいおっぱいとその張り。

 そして今もおれの頭部を包み込んでいるメルミンさんの太もも。

 至福だ。


 おれはこれまでに経験したことのない心地いい疲労感の元、眠りに落ちていく。

 だが意識を完全に失う直前に、おれは思った。

 おれはずっと筋トレばかりしている。今度起きたらもっとこの世界について知らなくては。


 本当に男がいないのか? そしてどんな世界なのだろう?

 起きたらそれからだ。

 そうでないとまた動けなくなるまで筋トレさせられてしまうだろう。


「うふふ、かわいい寝顔ね」

「そうかな~? アホっぽいよ?」


 メルミンさんとミニミは楽しそうだ。

 もう、だめだ。

 完全に意識を失った。


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