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第五話 お尻背筋トレーニング

 

 町中で裸のまま眠りにおちたおれをミニミとそのお母さんのメルミンさんが運んでくれたらしい。

 その運び方はタオルでおれのくびをひっかけ、道をずるずると運んだそうだ。おかげで肩や背中やお尻が傷だらけだ。


こんなに傷だらけになっても目が覚めない自分は死んでいたんじゃないかとさえ思う。


 おれはうつぶせになっており、背中に薬をメルミンさんが塗ってくれている。


「いたいです!」

「だいじょうぶだいじょうぶ! どんどんいくわよ」

「いった!」


 メルミンさんはミニミとよく似た顔で邪気の全くない人だ。

 童顔で三十歳と言われても十七歳と言われても信じてしまいそうなくらいに年齢不詳だ。とても美人で肌の白さやキメの細かさが素晴らしい。つまりはミニミも大きなくればこんな美人になるのだろう。

 その成長過程は是非とも見届けたい!


 少女から女性への変化を見届けなければ。

 おっぱいの変化を見届けなければ!


 おれは使命感に燃えている。


「メルミンさん! おれ、がんばりますから!」


 おれはメルミンさんに見えるように親指を立てて見せた。


「そうねがんばって」

 メルミンさんが薬を塗る。


「いった!」

「だいじょうぶだいじょうぶ!」

「いった!」

「だいじょうぶだいじょうぶ!」


「おっぱい腹筋しよー?」


 いつの間にやってきたのかミニミがおれの顔を上からのぞきこむ。


「今日はパス。傷が痛いんだ」

「お母さん。カズヤがサボる。よくないよね?」


 ミニミが頬をふくらませメルミンさんに告げ口をしている。だがまあ、これだけの傷を負っているんだからメルミンさんも筋トレしろなんて言わないだろう。

むしろやりだそうとしたほうが怒られるはずだ。


 ミニミは怒られてどんな反応を見せるのだろうか? ミニミが悲しむとミニミのおっぱいも悲しむのだろうか? おっぱいが悲しむとはどんな感じなのだろうか?

 おれは妄想の世界へダイブしていった。


「あらあら、サボるのはよくないわね。カズヤくん? ちゃんとお薬塗ったんだからがんばりなさい!」


 ドンッ!


 頭部をはたかれ、おれは現実へ引き戻された。


 ミニミは笑顔でにっこり楽しそうであり、おっぱいは悲しんでいない。

 ああでもやっぱり笑っているほうがおっぱいは魅力的だ。特にミニミのおっぱいには笑顔が似合う。


「ほらほら手を腰にやって身体をおこしなさい!」


 メルミンさんはおれに背筋をやれと言っているらしい。この人は鬼畜なのか? それとも天然か? この世界はなんなんだよ!


 おれは、あることを思いつく。


「メルミンさん、おれのあたまが上がるぎりぎりの場所にメルミンさんのお尻をセットしておいてもらえますか?」

「お尻? なんでまた?」


「おれのやり方なんです。男ってのはそうやって背筋してきた生き物なんです。それが一番効果があるんです、男には! これはお尻で背筋トレーニングです!」


「お尻で背筋トレーニング? 面白そう。いいわ!」


 メルミンさんのボディについて記述しておくと、はっきりいって完璧だ。ミニミとはちがい豊満かつ優しく包んでくれそうな雰囲気はおっぱいはもちろんのこと――二の腕やふとももまでむっちりとしている。


 だが決して太ってはいない。お肌はもちもちで、ふれればしっとりと受け止めてくれそうな素晴らしさを見てとれる。

 そしてメルミンさんのお尻は、その中でも最も素晴らしい。


 大きなお尻は垂れさがることなく、その重さにも負けずにしっかりと上を向いている。張りも弾力も失われず、その輝きはスカートをはいていてもしっかりとわかる。


 メルミンさんのお尻があれば――。

 おれは傷ついた身体を鞭打ってでも、背筋ができるはずだ!


「いきますよ!」

「いいわ」


 おれは背筋を使って身体を浮かす。


「うっ……」

 腹筋が痛む、体中が痛む。

 痛みで涙が出てきそうだ。だが、ここで負けていいのかおれ?


 おれのためにお尻を提供してくれているメルミンさんのためにも、その素晴らしいお尻を冒涜しないためにも、おれは背筋でお尻に頭を届けなければいけないはずだ!


 おれはおっぱいが好きだ! そしてメルミンさんのようなお尻も大好きなのだ!


 ここでもし痛みに負けておれが背筋をできないことになれば、おれはおれの生きる道を失うだろう。


 以前の世界のおれはずっとおっぱいを求めていた。素敵なおしりだって求めていた。そのために日夜ネットの海を巡回した。外にはこわくて出られず、すばらしいおっぱいやお尻はテレビやそのキャプチャーや高校生の頃までの記憶から引っ張ってくるしかなかった。


 それが今や、おれの目の前に現実としておっぱいもお尻も存在するのだ!

 おれがネットの海を十五年以上かけて見つけたお宝を上回る現物。それがあるのだ。


 負けるな!

 おれは負けない!


 素晴らしきおっぱいとお尻、そしてそれを筋トレのために提供してくれるメルミンさんのためにも!


「うあああああああああ!」


 身体を浮かすと激痛が走る。

 だがもう負けない!


「うおおおおおお」

「うひゃん!」


 ぽふううん。


「すごい、頭が幸せです!」


 メルミンさんのお尻へ頭がぶつかるとメルミンさんのお尻は優しく丁寧におれの頭部をうけとめた。

 スカート越しでもお尻の形が後頭部に伝わってくる。丸くて大きく張りのあるお尻だ。


 おれはなんて幸せものなんだろう。メルミンさんのお尻で背筋ができるなんて。


「メルミンさんのお尻で背筋ができておれは幸せです! また動けなくなるまでやってやります!」

「幸せって、今までもそうやってたんでしょ?」

「実は、お尻背筋トレーニングをしたのはメルミンさんが初めてなんです」

「え? わたしがはじめて……?」


「はい」


 メルミンさんは少し笑ってから――。


「うれしいわ」

 と言った。その声には弱冠の照れを感じたが、おれはうつぶせになっていたので表情まではわからない。


「ミニミもするー!」

 と、ミニミがおれの頭をぽかぽか叩いてきた。


「いやミニミのお尻はトレーニングにはまだ早いだろう」

「できるもん!」


 ミニミはおっぱいだけは爆乳で大人顔負けだが、身体はまだまだ子供っぽい。

 肌の白さやキメは抜群でメルミンさんゆずりだ。しかし、そのお尻はまだ発達途中でおれの頭部を包み込むほどには成長していない。


「ミニミー! わがまま言わないの!」

 メルミンさんがミニミをたしなめる。

「うー! できるできるできるー!」


 ミニミはもぐら叩きでもするようにおれの頭部をぽかぽかぽかぽか叩きまくる。このままではお尻背筋トレーニングも続けられない。

 それにミニミがかわいそうだ。


「ミニミにはお尻でなくておっぱいでトレーニングに参加してもらおう。ミニミは仰向けになっておれの顔におっぱいがくるように横になってくれ」

「こう?」

 ミニミがおれの顔のあたりにおっぱいがくるように寝転がった。


 おれとミニミは上から見れば十字架のように顔と胸の部分で交差している。

 そして、おれはミニミのおっぱいへダイブした。


「ふひゃ!?」

「こえあおっはいひゃうんどあ!(これがおっぱいバウンドだ!)」


 おれの顔面と頭部はミニミの谷間へすっぽりハマりこんだ。しかしある一点を超えて奥へは決して辿りつかせないその弾力。


 想像以上の弾力だ。さすがミニミ。これならもっともっとおれは背筋ができる!


「うああああ」

 身体を起こす。激痛なんてものはおっぱいとお尻があれば無視できる!


「うひゃあん!」

 ぽふううん。


 頭部がお尻に包まれ、幸せでドーパミンが放出される。幸せだ。

 今度はミニミのおっぱいへ向かって一直線。


「きゃあん!」

 ぱああん!


まぶたを開くとそこにはミニミのおっぱいがゼロ距離で受け止めてくれている。


「うああああ」

「うひゃあん!」

 ぽふふううん。


 今度はおっぱいへ向かって一直線に落下。


「きゃあん!」

 ぱああん!


 ゼロ距離おっぱいがほのかに汗をかいている。その香りがおれをさらに奮い立たせる。

 もっともっとやれる!


「うああああ!」


「うひゃあん!」

 ぽふふううん。


「きゃあん!」

 ぱああん!


 おれはいくらでも続けた。


 メルミンさんのお尻とミニミのおっぱいが汗でぬれてもやめなかった。

 おれたちの筋トレによる叫び声もやむことなく続いた。

 おれは人生で一番に身体を酷使し、人生で一番の幸せな時間を得た。


 この幸せをこれから続け、身体を鍛えよう。

 鍛えることは快感だ。


 それはもちろんミニミとメルミンさんが協力してくれるおかげなのだが、ニート時代に眠くなるまでただ起きていたおれには新鮮そのものだった。


 身体が疲れて休めと信号を送ってくるこの感覚。

 いつ以来だろうか?


 おれはいつの間にか身体が動かなくなり、夢へしずんでいった。


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