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第四話 男はおれだけ!?

 おれはミニミに町を案内してもらっていた。

 ちなみにおれはタオル一枚だけ腰に巻いた格好で外を歩いている。


 これがこの世界の男の服装なのだろうとおれは納得していた。


「あっちが食料品で、その先に病院があるし反対方向にはフルーツが売ってるよ」


 この平行世界はアンバランスな世界だった。

 ミニミや町の人の服装は可憐で美しく食料品もある。


 が、大きく二点ほどおれの知っている世界とはちがった。

 まず一つ目、機械の類が一切ない。

 テレビもラジオも車もない。電球なんてないし、LEDなんてあるわけがないだろう。排気ガスがないおかげで空気が綺麗なのはいいことかもしれない。


 そして二つ目、これがとても大切だ。

 男がいない。

 全然いない。

 おれはもしかして女体化してこの世界にきていたのかと思ったが、そうではない。おれの股間にはジョニーという相棒が相変わらずいて立ちションだってできる。


 だがおれ以外には男がいないのだ。


 町の人々は例外なく素敵なおっきなおっぱいをおしげもなく露出させて闊歩(かっぽ)している。けれど男はいない。この世界はどうやって子供が生まれるのだろう。

 コウノトリさんが運びにでもやってくるのだろうか? 女の子だけを選んで?


「なあミニミ、どうしてここには男がいないんだ?」


 そしてどうしておれだけ腰にタオル一枚なんだ?


「うー? みんなずっと前に死んだらしいよ? 佐藤っておとこなの?」

「ああ、おれは男だ! ほおら股間を見てみろ!」


 おれはタオルをめくってジョニーをさらした。

 白昼堂々、大勢の人がいる前でさらすのは存外に気分が良かった。


「すごーい!」

「すごいのか?」


 おれはジョニーを確認しながら聞いた。

 ジョニーが『すごーい』ものなのか、おれにはわからないのだ。童貞だから。


「お母さんに報告しなくちゃ!」


 ミニミは町の案内もそこそこにおれを引っ張る。

 おれのタオルははがれたままであり、ジョニーを物珍しそうにご婦人方が眺めている。


 ここには男がいたことがないからリアクションのとり方もおれの知っている反応ではない。一体何なんだろうと言う好奇の視線が大方だ。

 しかしなかには見てはいけないものを見てしまったかのように、頬を赤らめるご婦人もいた。


「か・い・か・ん……」


 おれはいけないことに目覚めてしまった。露出。

 ダメだ。おれのなかの心がささやく。


 いくら平行世界だからといって、むやみやたらにジョニーをさらすべきじゃない!


 むやみやたらにおっぱいが丸裸で町中でさらされていたらその価値はいずれ減っていってしまうはずだ!

 どんなに露出がはげしくとも、その少しは隠しておこうという言いわけめいた奥ゆかしさが大切なのだ!


 きっと世の中には自分の自慢のおっぱいを町中でさらけだしたい女性だっていたはずだ。だがみんな我慢しているのだ。

 おれにいわせればそれはきっと『おっぱいの価値を保つため』だ! おっぱいがずっとおっぱいとして孤高で崇高な地位を確保するために、女性はみんなで町中でおっぱいを露出しないのだ。


 そのロジックはこの世界でも変わらない。

 ならばおれも泣く泣くジョニーを隠さなくては。


 だがまだまだ露出の悪魔がささやく……。

 ならば――。


「ミニミ! おっぱい腹筋トレーニングだ!」

「ここで?」

「今すぐだほら早く!」


 おれは道端で仰向けになる。このままではジョニーがさらされたままなので、ミニミに早く覆いかぶさってもらわなければと手招く。

 ミニミは少し戸惑っていたようだが笑っておれのお腹の上にのっかった。


「うお」


 てっきり覆いかぶさってくるとばかり思っていたおれは、ミニミのお尻のふくよかな感触に衝撃をうけた。

 なんともいえぬふくよかな感触。ミニミのスカートは短くおれのお腹には直接ミニミの肌が密着している。


 まずい。


「ん? なんかお尻にあたってる?」

「見るな! 今はトレーニング中だぞ!」

「え? でもなんかどんどんおっきくなってる気がするしー」


 ミニミが後ろを向こうとする。

 このままではおれのジョニーがジョニーしていることがバレてしまう!


「ふんっ!」

「きゃあん!?」

 パパパパパパパン!


 おれは裸でミニミの胸へ向かって腹筋をした。


 前回とちがいミニミはお腹の上に座っているので、距離が長い。

 そのぶん勢い強くおっぱいにあたる。けれどミニミのおっぱいはその勢いにも負けずにはじき返す。

 すばらしい張りと弾力!


「ふんっ!」

「きゃあん!」

 パパパパパパパパァン!


 前回よりも腹筋の勢いがつよい。そのためか、ミニミの上半身が後ろへそれそうになった。

 これはおっぱいの弾力が負けたのではなく、単純に体重の問題だ。ミニミは華奢で、実際お腹の上にのっていてもとても軽い。


 そしてバランスを取ろうとしたミニミの手がおれの、ジョニーへふれた。


「おおおおおお!」


 人生で一番の危機がおれをおそう。

 おれはこんな危機に負けるわけにはいかない!


「ふんっ!」

「きゃあん!」

 パパパパパパン!


 ミニミがおれのジョニーへふれたり、ふれなかったりする。


 ついついジョニーへ意識がいってしまう!


 だめだ、まけてはいけない! おれは町中でハレンチ男になんてならない! そんなことを童貞でしてしまったらおかしくなっちまうにちがいない!


「ふんっ!」

「きゃあん!」

 パパパパパパン!


 ミニミのおっぱいへおれは突撃し続け、ミニミの手はその度におれのジョニーへ優しく、時には強くふれた。


 おれは欲望をふりはらおうと必死で腹筋を続けた。


 動けなくなるまで……。


「ふんっ!」

「きゃあん!」

 パパパパパン!



「ふんっ!」

「きゃあん!」

 パパパパパパパン!


 ……………………。

 …………。

 ……。


 おれは腹筋でエネルギーを使い果たした。

 ハレンチ男にはならずにすんだはずだ。


 町中で裸なんて関係ない、この世界の男はおれだけなのだから。男の規範はおれなのだ。


 ……腹筋のしすぎでエネルギーが全くない。

 おれの意志が勝ったのだ。


 むぎゅぎゅう。

 むぎゅ。


 ミニミがおっぱいをおれの顔に押し当てている。

 とても気持ちいい。

 そのやわらかさとともに、おれは眠りへ誘われていく。

 もう、寝よう。


 おっぱいのやわらかさは、幸せへの扉を開く。


「カズヤー? 寝るの?」


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