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今回の件は無かったことにしよう

作者: 頭山怛朗
掲載日:2015/09/15

ヤフーブログに再投稿予定です。

「1:35」 おれがトイレを済ませたからデッドに入ってからわずか一時間ぐらいしかたっていなかった……。


「2:55」何だ! 先から一時間半も過ぎていないではないか?


「3:47」一時間も眠っていない……。


「4:53」もう、このまま起きてしまおう。クーガーも起きた事だし……。ただ、眠りたい! ただ、ひたすらぐっすり死んだように眠りたい。


 近頃、トイレが近くなった。まだ、日中はそれほどではないが夜中は一時間ごとにトイレに行きたくなって眼が覚める。その上、朝五時には飼い猫が“ご飯、ご飯!”と喚く。その反動で日中は寝不足でぼうっとしている。昼寝をするがすっきりしない。

 眠りたい! ただ、ひたすらぐっすり死んだように眠りたい。

 子ども二人はそれぞれ独立した。孫も三人いる。多少の問題はあるものの“夫婦二人に猫一匹”の“毎日が日曜日”を楽しんでいるが、夜中にトイレに何度も起きなくてはならないのが辛い……。


「だんな! これを飲むとよく眠られますよ。もう、夜中、トイレに行かなくてすむよ」と、白衣男が言った。医者か? あるいは研究員?

「覚せい剤か? 」と、おれは言った。自宅近くの公園だった。「警察に通報するぞ! 」

「いえ、いえ、そんな怪しげなものではありません。ただトイレに行かなくてすむ、もうひたすら眠れられます。私が開発したものです。あなたにモニターになってもらいたいのです? 」

「幾らだ? 」

「……。特別、無料にさせてもらいます。ただ明日、この時間、ここでお待ちしていますのでその結果を教えてください」



 おれの自宅の寝室。

「ただ、ご主人はひたすら眠り続けています」と、医者が言った。医者は腕時計を覗き込んだ。「三日と三時間眠り続けています。どうやら夢も見ないで、排尿・排便もせず、食事も水も取らずに眠り続けています。それでも体に異常はありません。医学上あり得ない事です」

「夫はどこか病気なのですか? 」と、妻が言った。

「血液検査の結果はどこも異常がありません。毒物も発見されていません。……。旦那さんのお年ですと何処か問題があっても不思議ではないのですが、全くの健康体です。ただ、眠りから覚めない……。刺激を、針を刺しても手を引っ込めるけれど眠りから覚めない…… 」

 医者は“全く未知の物が…”と言いかけたが余計な事は言わないほうがいいと、言葉を飲み込んだ。患者は死ぬことはなさそうだ。ただ、面倒な患者だけだ。関わり合いにはならないほうがいい。

「夫はトイレが近くなって、よく、眠れないと言っていたのですが……」

「今はぐっすり眠って居られます。ただ、自分で眠っているという意識を持っておられるかどうかは疑問です? あまりにもぐっすり眠って居られます」

「入院させたほうが? 」

「入院? 」と医者は言った。「とんでもありません。旦那さんは全くの健康体です。ただ、眠っているだけです……。第一、入院費はどうします? 」

「……」妻は無言で肩をすくめた。


「どうやら、効きすぎたようだ」と、男はあの公園からおれの家を窺いつぶやいた。「それでは、今回の件は無かったことにしよう」

 男は車に乗って立ち去った……。

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